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ぴぃちゃんの保護から4週間が経ち、私はリリースを決断しました。

 

ぴぃちゃんを保護猫として迎え入れる選択肢も考えましたが、夜鳴きが酷く外に戻りたがるぴぃちゃんを、最後まで家でお世話する自信が私には無かったのです。

 

ただ、リリースする選択肢を採れば、ぴぃちゃんとは2度と会えなくなるリスクがあります。

 

私はそのリスクを呑んだうえで、ぴぃちゃんのリリースを決めたのです。

 

 

こうして迎えたぴぃちゃんのリリース当日、私はいつもより美味しいご飯をぴぃちゃんにたっぷりと食べさせました。

 

そして、いつものピザ屋さんの裏手で、ぴぃちゃんをリリースしました。

 

キャリーケースから飛び出したぴぃちゃんは、ピザ屋さんの裏手へと消えていきました。

 

無事にぴぃちゃんのリリースを終えて、静かになった家へ戻った時、私は涙がこぼれてきました。

 

リリースの選択肢が本当に正しかったのか、自分自身を責める気持ちが強くなってしまったからです。

 

その後も、1か月ぶりに外に出たぴぃちゃんがパニックになって道路に出て車に轢かれていたら、寝床や餌場を忘れていてどこか遠くに流れてしまったら、など良くないことばかりが頭に浮かんできました。

 

私はいろいろと考え続ける一方で、自分の浅はかさを呪う気持ちにすらなっていたのです。

 

こうして気持ちの整理が付かないまま、リリースの翌日を迎えました。

 

もしぴぃちゃんがご飯を食べに来なかったら、それは全て私の責任です。

 

そしてぴぃちゃんのことは、今後の人生で私が一生背負うべき十字架となるでしょう。

 

私は祈るような気持ちで、いつもの時間にピザ屋さんへ向かいました。

 

ピザ屋さんに到着して緊張しながらお店の裏手を覗くと、1か月前と何ら変わらない様子で、ご飯を待っているぴぃちゃんがそこにいました。

 

 

私は言葉にならない感情が湧き出るのを抑えられませんでした。

 

リリースした私のことを恨むことなく、ぴぃちゃんはご飯を食べに来てくれたのです。

 

私はぴぃちゃんに謝りながら、大好きなウェットフードをあげました。

 

それから1か月ほどは、ぴぃちゃんのことを常に気に掛ける生活が続きました。

 

保護猫ではなく外猫にする選択肢の辛さを、この時ほど実感したことはありません。

 

 

そして、ぴぃちゃんが外猫として無事に暮らしていることを確信しはじめた、リリースから2か月が経ったある日のことです。

 

私はぴぃちゃんが暮らすピザ屋さんで、小さなサビ猫ちゃんを保護することになります。

 

⇒小さなサビ猫を保護した話

 

サビ猫ちゃんはいろいろな経緯があり、結果として我が家の保護猫となりました。

 

後にリノちゃんと名付けられたサビ猫ちゃんは、ぴぃちゃんがいたケージで暮らすことになったのですが、もしぴぃちゃんをリリースしていなければ、リノちゃんの保護は不可能でした。

 

 

言い換えれば、リノちゃんを保護することができたのは、ぴぃちゃんをリリースしていたことが起点とも言えます。

 

こう考えると、ぴぃちゃんのリリースによってリノちゃんを保護できたのは、何か巡り合わせというか因果のようなものを感じます。

 

そしてこの後は、リノちゃんを皮切りにして毎年のように、私の家の保護猫が増えていくことになるのです。

 

その一方でぴぃちゃんは私の不安を物ともせずに外猫生活を続け、あっという間に月日は流れていきました。

 

こうして迎えた2021年の夏のことです。

 

ぴぃちゃんの体調に新たな異変が現れました。

 

（つづく）