小さなサビ猫を保護した話（その1）

今でこそ4匹の保護猫と暮らしていますが、3年ほど前まで家には1匹の保護猫しかいませんでした。

私は仕事をしながらTNR活動をしていたので、家で何匹もの保護猫のお世話をこなす自信が無かったからです。

そのため、野良猫のお世話を毎日のようにしてはいましたが、家に保護猫を迎えることには消極的でした。

 

そんなある日、TNR活動をしている地域に初めて見るサビ猫がやってきました。

サビ猫は毛色の分類上では三毛にあたるため、99％がメス猫です。

私たちはメス猫を優先してTNRしているため、超高確率でメスと思われるサビ猫は逃がすわけにはいきません。

 

サビ猫を見つけた私は急いで捕獲機の用意をして、近くにそっと設置しました。

メス猫は警戒心が強いため捕獲機に入るか不安でしたが、お腹が空いていたのか予想よりもあっさりと捕獲することができました。

 

捕獲が終わった私は家へ帰ろうとしてサビ猫が入った捕獲機を持ちあげたところ、何とも言えない違和感を覚えました。

その違和感の正体は、捕獲機が異様なほど軽かったことです。

 

私は成猫を捕獲することが多いのですが、一般的な成猫だと体重は3～5キロ程度あります。

そのため、猫が入った捕獲機を持つと比較的ずっしりとした手応えを感じます。

しかし、サビ猫が入った捕獲機は異様に軽く、本当に猫が入っているのか疑わしく思えるほどでした。

 

不思議に感じた私は捕獲機の中を覗き込んでみると、想像したよりも小さなサビ猫が捕獲機の隅で丸まっていました。

私はサビの毛色を見て反射的に捕獲機を仕掛けてしまい、猫本体の大きさを確認するのを忘れていたのです。

その結果、あまりにも小さなサビ猫が入ってしまったのですが、捕獲した以上は家へ連れて帰ることにしました。

 

家で駆虫を済ませてから体重を量ってみたところ、たった1.6キロしかありませんでした。

身体が痩せていたせいもありますが、この程度の体重だと子猫と言っても差し支えないほどのサイズ感です。

TNR目的で捕獲したサビ猫ですが、これほど小さいとすぐに不妊手術を受けるのは難しいと思いました。

 

一般的にTNRの対象となるのは成猫であり、月齢にして5か月以上が目安になります。

体重も3キロを超えていないと去勢・不妊手術は難しく、あまりにも若い猫や未発達な猫を手術してしまうと、その後の成長や健康に悪影響を及ぼすリスクが高まってしまいます。

 

捕獲したサビ猫は見るからに小さく体重が軽すぎるため不妊手術を受けるのは難しそうでしたが、ひとまず病院で診察してもらうことにしました。

 

捕獲した次の日に病院で診察してもらったところ、先生の見立てでは月齢3～4ヵ月ほどとのことでした。

診察の際に先生から口の中を見せてもらったのですが、まだ乳歯が生えている状態で大人の歯に生え変わっていませんでした。

 

不妊手術についても相談したところ、せめて体重が2.5キロを超えるまで手術は見合わせた方が良いとアドバイスされたのです。

 

基本的にTNRは捕獲した次の日に手術を済ませ、それから1週間以内にリリースすることになります。

あまりにも長い期間を家で過ごさせてしまうと、リリースした後の猫が自分の縄張りや寝床を見失ってしまうおそれがあるためです。

 

捕獲したサビ猫も1週間以内には手術とリリースを済ませるつもりだったので、体重が2.5キロを超えるまで手術を受けられないのは、私にとって大きな誤算でした。

しかし、サビ猫の大きさを確認せずに捕獲したのは私のミスです。

私は家でサビ猫が不妊手術を受けられる大きさに育つまで、家でお世話をすることを決意しました。

 

家でお世話をするとなると、いつまでも名無しのサビ猫ちゃんでは可哀想です。
そこで私はサビ猫に「リノ」という名前を付けました。

名前の由来は捕獲した場所がピザ屋さんの近くだったためで、「ピザ→イタリア→トリノ→リノ」という流れからです。

 

こうして私はリノちゃんが不妊手術を受けられるまで、家で保護することになったのでした。
（続く）