熱帯林コミュニティの慣習地保護活動をするNGOへ、四駆車を!

熱帯林コミュニティの慣習地保護活動をするNGOへ、四駆車を!

支援総額

1,622,000

目標金額 1,500,000円

支援者
40人
募集終了日
2023年12月22日

    https://readyfor.jp/projects/132272?sns_share_token=
    専用URLを使うと、あなたのシェアによってこのプロジェクトに何人訪れているかを確認できます
  • Facebook
  • X
  • LINE
  • note
2023年12月10日 23:45

農耕をはじめた遊動型狩猟採集民

前々回に続いてサラワクに狩猟採集の民、プナン人について報告させてもらいます。彼らの半定住集落は州東部バラム河上流域に点在しています。そこはサラワク州では州都のクチンに次ぐ二番目に大きな都市、ミリから四輪駆動車で78時間を要するほどの山間部に位置しています。これまで訪問した中でもっとも印象に残っている二つのコミュニティについてお話しします。

 

伐採企業による森林開発を道路封鎖で防いだプナン人コミュニティ

 

Long Sait70年ほど前に定住を選んだプナン人たちで、移動型の焼畑耕作と狩猟や漁労などを生業としています。滞在二日目、朝の6時にたたき起こされて、村から徒歩で一時間ほどかけてセランゴー河の対岸にある狩猟場に向かいました。同行のハンターのうち、一人は村長の長男、もう一人はプナン人狩猟家たちにとってグル(師匠)と呼ばれているケニャ人。彼らにとっては日課の朝の散歩といったところでしょうが、すでに高齢者の領域に入った自分にとっては必死の行軍ともいえる辛さです。狩猟場の森に入って二時間ほど経った頃でしょうか、一頭の狩猟犬が突然、数十メートル先で吠え声を挙げます。途端に二名の狩人が脱兎のごとく、急峻な獣道を疾走しはじめます。犬に追い立てられた獲物は迷走しているのでしょうか、二人も四方八方に駆けずり回っているようです。森を駈ける足音、荒い息遣いが奥から聞こえてきます。20分ほどしてからケニャ人が、なすすべもなく呆然と立ち尽くすままの自分たちの元に戻ってきました。彼に導かれて尾根にあたる場所にたどり着く。背部にマシェット(山刀)の一撃を食らった、幼獣ともいってよいヒゲイノシシが横たわっています。打ち込み傷から見える肉のピンク色が鮮やかです。犬たちの追走に疲弊したところを一回で仕留めたといいます。体重は3035キロほどでしょうか。その日の遅い昼食から翌日の朝食まで多彩なイノシシ料理のご馳走に預かったのは言うまでもありません。

 

ヒゲイノシシを仕留めたプナン人の青年(右)と彼の狩猟の師ケニャ人

 

 

Long Saitではいまから20年ほど前に州政府発効の伐採権を手にした大手伐採企業がブルドーザーや警察とともにやってきました。そうした伐採による開発には皮肉にも《持続可能な森林管理》を謳う森林認証というお墨付きまで与えられていました。隣接するプナン人コミュニティは組織して伐採道路の全面封鎖という快挙に打って出ます。また、人権派弁護士やNGOのサポートを受けて法廷闘争も起こした。結果的にプナン人たちは伐採から自分たちの森を守ることができました。ただ、その犠牲は少なくありませんでした。抗議運動のリーダー格の一人、K村の村長は、200710月、通い慣れた森に仕掛けた罠を見るために出かけたまま姿を消します。村の近くの川でほとんど原型をとどめない遺骨が見つかったのはその2ヶ月後。遺族は裁判に持ち込むが結局、犯罪性を認定させることはできませんでした。村長のもとには、伐採企業のS社の社員が村のインフラ援助の話を持って足しげく通っていたといいます。

 

 

 

サラワクのプナン人はイギリスによる植民地支配、イスラム教、マレーシア国家、他のエスニック集団といった軋轢や収奪から生存をかけてひたすら森の奥地へと逃げてきた人たちです。かれらが選び取った生存戦略とは、自然に痕跡を残さない狩猟採集という誘導型のライフスタイルです。一部のメンバーに権力を集中させず、争いや支配とは無縁な平等な社会を築き上げていきました。そうした自然を基盤とした社会は資源が豊富な熱帯林という環境があってはじめて可能なのです。《生物多様性の宝庫》、《地球の肺》といったお仕着せの言い方がかれらの前ではなんと空しく響くことか。ただ、こうした熱帯林もここサラワクでは、物凄い勢いでファルカタやアカシアなどの産業造林やアブラヤシ農園に取って代わっています。プナン人に襲い掛かっている脅威や圧力を自分のような外部者が肌で感じることは生易しいことではありません。

 

パルプ材を造るための産業植林

 

 

農耕をはじめた狩猟採集民

 

Ba Puakは、トゥートー河上流の派流にあたるプアック川の沿いのコミュニティでです。彼らが半定住という苦渋の選択を余儀なくされたのは20年ちかく前です。当時、バラム河流域の森の中で遊動生活を送る数十名のプナン人グループは困窮しきっていたといいます。野生のサゴが収穫できる森も魚が住む清流も減っている、もうこれ以上、遊動の生活を続けるのはとても難しいと、非木材林産物の採集による森林資源の管理を広めるNPOのメンバーは23年かけて説得を重ねたといいます。

 

Ba Puakが焼畑農耕を始めたのは最近のことです。技法や種などは近くのケラビット人から提供を受けたようです。強い日差しを遮るものはなく、焼却灰に足をとられながらの作業はきつい労働です。棒で突いて開けた穴の中にプナンの子供たちが十数粒の種を撒いていく。素人目ながらも粗放な農法です。撒き方も雑で多くが穴の外に飛び出しています。プナン人にとって伝統的な炭水化物源は森の中に生育するサゴから採れる澱粉です。Ba Puakの人たちはいまでも白い米飯よりもサゴ澱粉の方をはるかに好みます。ただ、サゴはもう収穫が難しい。町に行けばビニール袋で売られているサゴ澱粉を手に入れられますが、彼らにとって高嶺の花です。代わりにいくらか値段が手ごろのキャッサバ澱粉をよく食べています。

 

Ba Puakの人たちによる焼畑播種

 

 

森での狩猟採集の生活から定住を伴う農耕スタイルへの遷移はプナン人にとって、決して《近代化》を意味しません。むしろ生存するための苦肉の策と言ってもいいでしょう。森はただ生活の場所だけを意味しているのでありません。信仰や文化は森というミクロコスモスと分かちがたく存在しています。Ba Puakの場合、周辺はすでに伐採企業二社の伐採施業区域となっています。幹線道路まで出れば、メランティなどの木材や合板を満載したトラックがひっきりなしに往来しています。実は彼らが農作をはじめた山も伐採会社の事業地の中なのです。いまのところ第三者の仲介で軋轢は生じていませんが、将来は強制退去されてもおかしくない状況です。

 

山に狩猟に出かける

 

 

※上記の記事は、NPO法人緑のダム北相模ニューズレター2016430-431号/432-433号に掲載された「農耕をはじめた狩猟採集民 ― サラワク州のプナン人コミュニティ訪問記 ―」に加筆・修正したものです。

 

 

リターン

3,000+システム利用料


お気持ちコース

お気持ちコース

・感謝のメール
・SADIA Mukah活動報告

感謝のメールを送等せていただくとともに、SADIA Mukahのフィールドワークのアップデートをお伝えしたいと思います。

支援者
12人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2024年2月

10,000+システム利用料


SADIA Mukah特製のシャツもしくはキャップ

SADIA Mukah特製のシャツもしくはキャップ

・SADIA Mukah特製のシャツもしくはキャップ

・感謝のメール
・SADIA Mukah活動報告

支援者
5人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2024年2月

10,000+システム利用料


JATAN・SADIA Mukah応援コース

JATAN・SADIA Mukah応援コース

・JATANのホームページ上に支援者様としてお名前を掲載(希望者のみ)

・感謝のメール
・SADIA Mukah活動報告

感謝のメールを送ります。SADIA Mukahの活動報告を送ります。

支援者
11人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2024年2月

30,000+システム利用料


JATAN・SADIA Mukah全力応援コースA

JATAN・SADIA Mukah全力応援コースA

・JATANのホームページ上に支援者様としてお名前を掲載(希望者のみ)

・感謝のメール
・SADIA Mukah活動報告

感謝のメールを送ります。SADIA Mukahの活動報告を送ります。

支援者
4人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2024年2月

50,000+システム利用料


JATAN・SADIA Mukah全力応援コースB

JATAN・SADIA Mukah全力応援コースB

・JATANのホームページ上に支援者様としてお名前を掲載(希望者のみ)

・感謝のメール
・SADIA Mukah活動報告

感謝のメールを送ります。SADIA Mukahの活動報告を送ります。

支援者
5人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2024年2月

350,000+システム利用料


サラワクの先住民コミュニティを訪問・滞在 現地ツアーコース

サラワクの先住民コミュニティを訪問・滞在 現地ツアーコース

●熱帯林行動ネットワーク(JATAN)の現地調査に同行していただきます。

サラワク州の州都クチンを起点として、河川上流域の先住民コミュニティを数か所訪問、滞在します。ロングハウスで住民たちと一緒に滞在し、彼らと膝を交えて語り合います。また、民族舞踏、食事や狩猟活動など彼らの伝統的文化や生活を体験する機会もあります。JATANの現地カウンターパートのSADIA Mukahをはじめ先住民支援をする地元のNGOの活動家、弁護士とも交流する予定です。

訪問・滞在予定地:州西部ラジャン河上流域のイバン人の伝統的集落、州東部バラム河上流域のプナン人、ケラビット人の伝統的集落、ほか

※実施予定日:2024年3月~4月。日程等は別途、調整させていただきます。
※現地集合・現地解散です。現地への渡航費・ホテル宿泊費等、必要経費は別途ご負担をお願いします。
※詳細は、クラウドファンディング成立後、2024年2月中にご連絡します。

●感謝のメール
●SADIA Mukah活動報告

支援者
3人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2024年4月

記事をシェアして応援する

    https://readyfor.jp/projects/132272/announcements/300027?sns_share_token=
    専用URLを使うと、あなたのシェアによってこのプロジェクトに何人訪れているかを確認できます
  • Facebook
  • X
  • LINE
  • note

あなたにおすすめのプロジェクト

注目のプロジェクト

もっと見る

新着のプロジェクト

もっと見る