支援総額
目標金額 1,500,000円
- 支援者
- 40人
- 募集終了日
- 2023年12月22日
農耕をはじめた遊動型狩猟採集民
前々回に続いてサラワクに狩猟採集の民、プナン人について報告させてもらいます。彼らの半定住集落は州東部バラム河上流域に点在しています。そこはサラワク州では州都のクチンに次ぐ二番目に大きな都市、ミリから四輪駆動車で7~8時間を要するほどの山間部に位置しています。これまで訪問した中でもっとも印象に残っている二つのコミュニティについてお話しします。
伐採企業による森林開発を道路封鎖で防いだプナン人コミュニティ
Long Saitは70年ほど前に定住を選んだプナン人たちで、移動型の焼畑耕作と狩猟や漁労などを生業としています。滞在二日目、朝の6時にたたき起こされて、村から徒歩で一時間ほどかけてセランゴー河の対岸にある狩猟場に向かいました。同行のハンターのうち、一人は村長の長男、もう一人はプナン人狩猟家たちにとってグル(師匠)と呼ばれているケニャ人。彼らにとっては日課の朝の散歩といったところでしょうが、すでに高齢者の領域に入った自分にとっては必死の行軍ともいえる辛さです。狩猟場の森に入って二時間ほど経った頃でしょうか、一頭の狩猟犬が突然、数十メートル先で吠え声を挙げます。途端に二名の狩人が脱兎のごとく、急峻な獣道を疾走しはじめます。犬に追い立てられた獲物は迷走しているのでしょうか、二人も四方八方に駆けずり回っているようです。森を駈ける足音、荒い息遣いが奥から聞こえてきます。20分ほどしてからケニャ人が、なすすべもなく呆然と立ち尽くすままの自分たちの元に戻ってきました。彼に導かれて尾根にあたる場所にたどり着く。背部にマシェット(山刀)の一撃を食らった、幼獣ともいってよいヒゲイノシシが横たわっています。打ち込み傷から見える肉のピンク色が鮮やかです。犬たちの追走に疲弊したところを一回で仕留めたといいます。体重は30~35キロほどでしょうか。その日の遅い昼食から翌日の朝食まで多彩なイノシシ料理のご馳走に預かったのは言うまでもありません。
Long Saitではいまから20年ほど前に州政府発効の伐採権を手にした大手伐採企業がブルドーザーや警察とともにやってきました。そうした伐採による開発には皮肉にも《持続可能な森林管理》を謳う森林認証というお墨付きまで与えられていました。隣接するプナン人コミュニティは組織して伐採道路の全面封鎖という快挙に打って出ます。また、人権派弁護士やNGOのサポートを受けて法廷闘争も起こした。結果的にプナン人たちは伐採から自分たちの森を守ることができました。ただ、その犠牲は少なくありませんでした。抗議運動のリーダー格の一人、K村の村長は、2007年10月、通い慣れた森に仕掛けた罠を見るために出かけたまま姿を消します。村の近くの川でほとんど原型をとどめない遺骨が見つかったのはその2ヶ月後。遺族は裁判に持ち込むが結局、犯罪性を認定させることはできませんでした。村長のもとには、伐採企業のS社の社員が村のインフラ援助の話を持って足しげく通っていたといいます。
サラワクのプナン人はイギリスによる植民地支配、イスラム教、マレーシア国家、他のエスニック集団といった軋轢や収奪から生存をかけてひたすら森の奥地へと逃げてきた人たちです。かれらが選び取った生存戦略とは、自然に痕跡を残さない狩猟採集という誘導型のライフスタイルです。一部のメンバーに権力を集中させず、争いや支配とは無縁な平等な社会を築き上げていきました。そうした自然を基盤とした社会は資源が豊富な熱帯林という環境があってはじめて可能なのです。《生物多様性の宝庫》、《地球の肺》といったお仕着せの言い方がかれらの前ではなんと空しく響くことか。ただ、こうした熱帯林もここサラワクでは、物凄い勢いでファルカタやアカシアなどの産業造林やアブラヤシ農園に取って代わっています。プナン人に襲い掛かっている脅威や圧力を自分のような外部者が肌で感じることは生易しいことではありません。
農耕をはじめた狩猟採集民
Ba Puakは、トゥートー河上流の派流にあたるプアック川の沿いのコミュニティでです。彼らが半定住という苦渋の選択を余儀なくされたのは20年ちかく前です。当時、バラム河流域の森の中で遊動生活を送る数十名のプナン人グループは困窮しきっていたといいます。野生のサゴが収穫できる森も魚が住む清流も減っている、もうこれ以上、遊動の生活を続けるのはとても難しいと、非木材林産物の採集による森林資源の管理を広めるNPOのメンバーは2~3年かけて説得を重ねたといいます。
Ba Puakが焼畑農耕を始めたのは最近のことです。技法や種などは近くのケラビット人から提供を受けたようです。強い日差しを遮るものはなく、焼却灰に足をとられながらの作業はきつい労働です。棒で突いて開けた穴の中にプナンの子供たちが十数粒の種を撒いていく。素人目ながらも粗放な農法です。撒き方も雑で多くが穴の外に飛び出しています。プナン人にとって伝統的な炭水化物源は森の中に生育するサゴから採れる澱粉です。Ba Puakの人たちはいまでも白い米飯よりもサゴ澱粉の方をはるかに好みます。ただ、サゴはもう収穫が難しい。町に行けばビニール袋で売られているサゴ澱粉を手に入れられますが、彼らにとって高嶺の花です。代わりにいくらか値段が手ごろのキャッサバ澱粉をよく食べています。
森での狩猟採集の生活から定住を伴う農耕スタイルへの遷移はプナン人にとって、決して《近代化》を意味しません。むしろ生存するための苦肉の策と言ってもいいでしょう。森はただ生活の場所だけを意味しているのでありません。信仰や文化は森というミクロコスモスと分かちがたく存在しています。Ba Puakの場合、周辺はすでに伐採企業二社の伐採施業区域となっています。幹線道路まで出れば、メランティなどの木材や合板を満載したトラックがひっきりなしに往来しています。実は彼らが農作をはじめた山も伐採会社の事業地の中なのです。いまのところ第三者の仲介で軋轢は生じていませんが、将来は強制退去されてもおかしくない状況です。
※上記の記事は、NPO法人緑のダム北相模ニューズレター2016年430-431号/432-433号に掲載された「農耕をはじめた狩猟採集民 ― サラワク州のプナン人コミュニティ訪問記 ―」に加筆・修正したものです。
リターン
3,000円+システム利用料
お気持ちコース
・感謝のメール
・SADIA Mukah活動報告
感謝のメールを送等せていただくとともに、SADIA Mukahのフィールドワークのアップデートをお伝えしたいと思います。
- 申込数
- 14
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2024年2月
10,000円+システム利用料
SADIA Mukah特製のシャツもしくはキャップ
・SADIA Mukah特製のシャツもしくはキャップ
・感謝のメール
・SADIA Mukah活動報告
- 申込数
- 5
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2024年2月
3,000円+システム利用料
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SADIA Mukah特製のシャツもしくはキャップ
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