人が人と共に生きる喜びを伝える福祉イベントを開催したい！

 

～あの日の背中～

 

 

 

『うちの娘なんです！』

 

毎回、娘さんが施設を訪れるたびに、嬉しそうにその一言を発してくださる利用者さんがいる

 

認知症が深く、普段はなかなか上手く言葉が出てこないその方は

表情も暗く、笑顔を引き出すのに時間がかかる方だ

 

 

エレベータから降りてきた娘さんを見つけて、昨日も彼女は笑顔で

 

『うちの娘なんです！』と笑顔で伝えてくれた…

 

 

 

何度開けても閉めてしまうカーテンがひかれたままのお部屋の中は、夕暮れ時にもなるとかなり暗く足元も危ないので、気が付いた時には明かりをつけることにしている。

 

カーテンがひきっぱなしのその部屋で、彼女は嬉しそうに微笑みながら娘さんの顔を覗き込み、娘さんの言葉にうなずいたり声を立てて笑い１時間程を一緒に過ごした。

 

 

その笑顔は、どんな介護士がどれだけ頑張っても引き出すことができない

『母親』の笑顔だ

 

 

 

『お母さん、そろそろ行くよ、また来るからね！』

 

娘さんが立ち上がると、おぼつかない足取りで慌てて彼女も立ち上がり

娘さんの後を追いかける…

 

 

『また来るからね、お母さん！今日は、暗くなる前にこれから庭の草取りなの…また来るからね！』

 

 

職員が付き添い、玄関口まで見送りに出ると

小走りに慌てて娘さんの後を追いかける…

 

 

娘さんが何度も、何度も振り返り、振り返り、足を止めてはお母さんに大きく手を振り、私に深々と頭を下げてくださるのが見えた。

 

 

 

『〇〇さん…　温かいお茶でも飲みましょう。』

 

肩を震わして涙を流している彼女の気持ちが、母親でもある自分の胸に流れ込み

、今朝見送ったばかりの自分の娘と息子の後ろ姿が想い出された。

 

 

どう声をかけるかを考える前に、思わず抱きしめた彼女の涙が

私の頬にも伝わり落ち、何とも言えない気持ちになった

 

なかなか彼女が居場所を感じることが出来ない今の『生活の場』へと、彼女の手を引き戻りながら思った…お年寄りは、認知症だからって子供に戻ったりはしないと…

 

 

彼女の娘さんを見送る姿も涙も、間違いなく『母親』だと感じた。

 

 

よちよち歩きの娘さん

ランドセルを背負った娘さん

中学の制服を着た娘さん

お嫁に行った時の娘さん

 

 

彼女は、長い長い間、心配や期待を胸に抱きながらも娘さんの幸せを祈り

その後ろ姿が見えなくなるまで、見送り続けてきたんだ…

 

 

 

お年寄りがなくなる時に、残された人達は見送る側だと今まで感じていた。

 

 

 

でも、本当は

 

 

いつも見送られているのは、こちらの方なのかもしれない…

 

 

 

 

介護の『介』を愉快の『快』に～

 

あなたは、誰かの背中を胸いっぱいの想いと一緒に

見送ったことがありますか？