7つの冊子に記録された被爆体験を一冊の本にし、未来の世代に繋ぎたい

7つの冊子に記録された被爆体験を一冊の本にし、未来の世代に繋ぎたい

支援総額

1,519,000

目標金額 1,500,000円

支援者
114人
募集終了日
2021年12月24日

    https://readyfor.jp/projects/74466?sns_share_token=
    専用URLを使うと、あなたのシェアによってこのプロジェクトに何人訪れているかを確認できます
  • Facebook
  • X
  • LINE
  • note
2021年12月08日 07:07

「原爆、忘れまじ」第四集から 「お母さん、堪忍して」

S・Aさん

(当時21歳)

 今年の夏で44回目の忌わしい思い出の日を迎える。長い日々であったがすぎれば束の間である。
 あの日は、朝食の途中であった。思い出したくない死者に対して残ったものは、みんな負い目をもっていると思う。
 警報解除のあとであった。気がついたら下敷きになって、木っ端や壁土等で、ぐしゃぐしゃの中にいた。大きなはりでへだてられ、母らとは別になっていた。 横腹に、たる木がはりにおさえられ、脇のあたりで折れていた。
 母は怪我をしてないけれど、火が燃えてこないかと心配し、私は誰か助けにきてくれると思ったが、それまでに火がついたらと思い、目にゴミが入らぬように、木っ端を手で少しずつよけた。
 右眼のところで折れていた木っ端を少しずつゆすった。頭の方は、壁が潰ぶれて、一人まるくなって坐れるくらいの場所ができた。
 四角いコンクリートで固めた二階家の上部が、すっぽりかぶっている。中間は飛んでいったらしい。畳の上に、二階の上の方がかぶさったようになっている。体の通れるようなすき間が出来ている。そこを這っていった。大人一人出られるくらいの穴があいていた。シミーズと下ばきで出る時は、下ばきが脱てしまったが、それをとる余裕もなかった。
 外にやっと出た。中の声は全然聞こえない。遠くで火の手が上っている。手でそこいらを叩いてみたがびくともしない。大地を叩くくらいの感じでコンクリートがかぶさっている。広島中ペッチャンコで、見渡す限り人影もない。どうにもならない。素手では。
 お母さん、堪忍してと、両手を合わせ拝みながら、家の潰れた上を裸足しで、シミーズ一枚で逃げ出した。一丁くらい行くと大通りに出た。比治川の方へ向って行くと、向かいの平岩さんが倒れて、息子さんがそばにいた。母を助けてほしいと頼んだが、父がこの通りでと断わられた。仕方ない、誰もいない。歩いて比治山の方に行った。血のりでシミーズの紐が傷にさわり、痛いので紐を下した。そのうちに、この世の人とも思えぬ人らが、裸同然の格好で歩いてくる。腕の皮が紐みたいになって、垂れ下がっている。地獄絵とそっくりだ。
 比治川を越えたところから、狭い道で、両側の家が空っぽで、道がガラスの粉を敷きつめたようになっていた。痛かったけれど、裸足のままその道を逃げた。 陸軍部隊のいる所に着いた。そこで額の垂れ下がった皮の手当てを受けた。
 真っ黒に焼けて、髪の毛もなく目も唇もはれ上り、手もはれ上って、広げたままの人がいっぱいいた。水を欲しがるので、兵隊さんらがやかんで水を飲ましていた。この人たちも、今日、明日の命であろうから、誰もしゃべらない。
 トラックが来て、乗れる者はそれに乗り宇品の方へ連れて行かれた。私も乗った。途中、大方が死んだ兵舎があった。荒むしろが敷いてあった。建具は飛んでない。傷がいたくて困ったなと思っていると、歩ける人はこちらへと導びかれていった。
 そこは毛布が敷いてあった。何をする気力もなかった。枕もなく、そこへ鮭でも並べるように転ろがった。その部屋には30人か40人いただろうか、3分の1くらい助かったと思う。荒むしろの方は、全部駄目だと思う。2日に一度、うすめたヨーチンで傷の手当てをしてもらった。
 兵舎の外は、兵隊がそこらじゅうで死んでいた。ただれて腐った皮膚にハエがいっぱいたかっていたが、片づけるひまもない。兵舎の奥の方で死人を積んで焼いていた。時々、飛行機が飛んできた。
 広島の街は、2日間、天をも焦がす炎で焼けた。3日目くらいに毛布一枚もらって焼け跡に戻った。
 焼けた米びつに、母の頭と胸などの骨を拾って、焼け跡の防空壕で一夜を明かした。夏でも夜中は寒い。あちこちで燐が燃えていた。
 真っ黒になった馬の死骸がいっぱいあった。そのあとの一週間くらい、隣の人の骨を拾って可部へ行ったり、親類の家まで歩いて行ったはずだが、あまりおぼえていない。
 広島の市役所で、死人一人につき500円もらった。新聞が一枚ヤミで5円か10円した。一人でも生き残った人らは思いは残るが、一家全滅の家も沢山あるはずだが、どうなったのだろうか。
 体中、包帯で目と口しか出してなかった娘さん、両親をなくし、長崎から来た背中に傷のあった六歳の男の子、何度も何度も立ち上って死んだ人。みんな、喋べらなかった。黙って死んでいった。
 どうしようもないと思っても、この時のことは悔やしく、悲しく、被爆者の私の心から消えることはない。なむあみだ仏。
 

リターン

3,000


alt

3,000|応援コース

・感謝の気持ちを込めてお手紙を送らせていただきます。
・リターン費用がかからない分、いただいたご支援金はクラウドファンディング手数料やリターン費用を除き、「原爆、忘れまじ」の制作費用に充てることができます。

支援者
17人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2022年8月

5,000


5,000|「原爆、忘れまじ」セットコース

5,000|「原爆、忘れまじ」セットコース

・復刻したこの7冊に、あらたに作成する解説冊子を加えた8冊を箱入り書籍として制作します。
・5,000円を一口として、一口につき8冊箱入り書籍1セットをお送りいたします。二口のご支援であれば、箱入り書籍2セットとなります。
・ご支援いただいた全ての方に、解説冊子編集委員会から編集中定期報告(毎月予定)を送ります。亡くなった被爆者の方が残された資料や掲載されなかった証言などを、編集中の議論を紹介しながら報告します。
・編集委員会に寄せられた支援者のお便りもご了解を得て解説冊子に加えさせていただきたいと考えています。

支援者
42人
在庫数
955
発送完了予定月
2022年8月

10,000


alt

10,000|応援コース

・感謝の気持ちを込めてお手紙を送らせていただきます。
・リターン費用がかからない分、いただいたご支援金はクラウドファンディング手数料やリターン費用を除き、「原爆、忘れまじ」の制作費用に充てることができます。

支援者
41人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2022年8月

30,000


alt

30,000|プロジェクト参加コース

・あらたに作成する解説冊子にてご支援者様のお名前を掲載させていただきます。
・「原爆、忘れまじ」を通じて、被爆体験について語り継がれていくにあたり、本リターンをご支援いただいた方のお名前も記録され残される形となります。

※お名前の掲載に関しては希望制とさせていただきます。
※ご不要の方については、お手数ですが質問事項にて「不要」とご記載ください。

支援者
10人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2022年8月

100,000


alt

100,000|プロジェクト参加コース

・あらたに作成する解説冊子にてご支援者様のお名前を掲載させていただきます。
・「原爆、忘れまじ」を通じて、被爆体験について語り継がれていくにあたり、本リターンをご支援いただいた方のお名前も記録され残される形となります。

※お名前の掲載に関しては希望制とさせていただきます。
※ご不要の方については、お手数ですが質問事項にて「不要」とご記載ください。

支援者
5人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2022年8月

記事をシェアして応援する

    https://readyfor.jp/projects/74466/announcements/194834?sns_share_token=
    専用URLを使うと、あなたのシェアによってこのプロジェクトに何人訪れているかを確認できます
  • Facebook
  • X
  • LINE
  • note

あなたにおすすめのプロジェクト

注目のプロジェクト

もっと見る

新着のプロジェクト

もっと見る