口腔内ポリープの再発を繰り返す保護猫の治療費にご協力をお願いします

 

今から3年ほど前、ちょうどアリスくんとすずちゃんのリリースが終わったころの話です。

 

私と友人は、その現場に不妊手術をしていないメス猫が残っていないか、定期的に様子を見に行っていました。

 

猫が発情期を迎える前に、できるだけ多くのメス猫をTNRしたかったからです。

 

そんなある日の夕方、友人と見慣れない猫がいないか調べていると、友人が「猫を抱いている人がいる」と言って足早に歩き始めました。

 

この地域は野良猫が多いのですが、あまり人馴れしている子はいません。

 

むしろ警戒心が強い猫がほとんどで、定期的に通っている私と友人でも、それなりの距離感でご飯を食べてくれるのが精一杯です。

 

なかにはある程度人懐こい猫はいるものの、抱っこできるほど人懐こい猫はいないはずです。

 

私は友人の見間違いだと思いながらも、急いで友人の後を付いていきました。

 

そして私と友人が着いた先には、チャトラ柄の猫を抱いた制服姿の女子校生が居たのです。

 

さっそく女子校生に話を聞いてみると、通りがかったところに猫が居て、少し構ってあげたら膝の上に乗ってきたそうです。

 

しばらく抱きながら撫でてあげていたそうですが、帰宅途中なのに猫が全く動かなくて困っているようでした。

 

そんな状況の中、私と友人が通りがかったわけです。

 

友人は女子校生からチャトラ柄の猫を受け取り、猫の面倒を見てくれたお礼を言いました。

 

そして、猫を触った手だけではなく着ていた制服もきちんと洗うことを伝えました。

 

女子校生は友人の話に頷きながら、私と友人に「猫のことお願いします」と頭を下げてから自転車に乗って帰っていきました。

 

さて、女子校生が抱いていた猫ですが、初めて会った私たちにもかなり人懐こい子でした。

 

ひょっとしたら脱走した飼い猫かもしれないということで、友人が一旦保護して警察や保健所に問い合わせてみることになったのです。

 

その後、猫の身体を触っていた友人が驚きの表情を浮かべました。

 

「この子お腹が膨らんでる！もう妊娠中期は過ぎてそう。こんな時期なのに…」

 

チャトラ柄の猫は遺伝子的に75％がオスなので、私はこの子も当然のようにオス猫だとばかり思っていたのですが、どうやらチャトラ柄には珍しいメス猫だったようです。

 

私も驚きながらお腹を触ってみると、確かにふっくらとした感触がありました。

 

チャトラ柄でメス猫なうえに、3月のまだ寒い時期に妊娠中期なんて珍しいことばかり…

 

そう思いながら何気なく尻尾を持ちあげるようにしてお尻を見てみると、オス特有のタマが目に入りました。

 

私が友人にこのことを伝えると、友人もオスだということを確認してくれました。

 

オスなら妊娠はあり得ませんし、なぜお腹が膨らんでいるのか、その時の私と友人は理解に苦しみながらも、いったん保護することにしました。

 

友人の家に保護されたチャトラ柄の猫ですが、オスなのでチャコくんという名前を付け、様子を見ることになりました。

 

さっそく友人が家でチャコくんの全身を触ってみたところ、お腹の膨らみは腹水の疑いがあるとのことでした。

 

猫に腹水が溜まる原因としては、FIPや腫瘍の可能性が考えられます。

 

しかし、多くの猫を保護している友人でも、正確な診断ができるわけではありません。

 

そのため、チャコくんを保護した次の日に、病院へ行って診察してもらうことにしました。

 

先生にチャコくんの膨らんだお腹を触診してもらったのですが、どうやら腹水が溜まっているわけではないようです。

 

そこでエコー検査をしたところ、大きな影が映し出されました。

 

影の正体は腫瘍らしく、周囲の臓器には腫瘍に圧迫された腫れが見られるそうです。

 

実際に肝臓のエコーを見せてもらったのですが、正常な肝臓と比べると3倍ほどに膨れ上がっていました。

 

この腫瘍と臓器の腫れがチャコくんのお腹の膨らみの正体だったのです。

 

さらに血液検査の結果では腎臓と肝臓の数値が悪く、腫瘍を摘出する手術も難しいと言われてしまいました。

 

そのため、ひとまず強めの抗生物質を注射してもらい、様子を見ながら必要な薬を処方してもらうことになりました。

 

しかし、外科的アプローチが難しく腫瘍を摘出できない状態では、症状を完治させるのは容易ではありません。

 

とりあえずチャコくんは友人が保護することになり、ある程度まで体調が回復したら手術を検討することにしました。

 

そして、病院から友人の家に保護されてから10日ほど経ったある日、チャコくんは天国へと旅立ってしまいました。

 

友人の話では食欲はそれなりにあったそうですが、やはり様々な部分が弱っていたようで、亡くなる前の日から寝たきり状態になってしまったそうです。

 

最後は友人の腕の中で息を引き取ったそうで、しっかり看取ってあげられたことは良かったと言っていました。

 

チャコくんの家猫生活はわずか10日でしたが、最後はゆっくり寝られる暖かい部屋で、ご飯に困ることもなく過ごせたのは良かったと思います。

 

その一方で、外で暮らす猫の厳しさをあらためて思い知らされました。

 

チャコくんは末期状態ではありましたが、最後は保護して看取ってあげることができました。

 

しかし、他の外猫の多くは誰にも体調不良を気付いてもらうことなく、ひとりきりで死んでいってしまうのです。

 

これは外猫の宿命ではありますが、せめて私がお世話している猫たちだけでも、ひとり寂しく死んでいくような最後は迎えさせたくない、と決意を改めるようになりました。

 

天国へ旅立ったチャコくんは、私と友人の2人でお見送りすることにしました。

 

火葬場で10日ぶりに再会したチャコくんは少し小さくなってしまいましたが、安らかな表情をしていました。

 

私はあっという間に旅立ってしまったチャコくんを見つめながら、猫の最後を看取ることを考え直したのです。

 

幸いにも現在は看取りが近い外猫はいませんが、そう遠くない将来に看取りを視野に入れた保護が必要な時期がやってきます。

 

その時に、私は友人の様にきちんと猫と向き合えるかどうか、不安を感じる部分があります。

 

しかし、保護猫活動に携わっている以上、猫の最後を看取るということは欠かせない部分です。

 

私の保護猫活動についてはまだまだ未熟な部分もありますが、これからは先を見据えて真剣に取り組んでいきたいと考えています。