先週、現地から驚きの情報が入ってきました。その情報とは、国立公園を管理している国の組織(キリマンジャロ国立公園公社。以後公社と表記)から、「住民が生活を維持できるよう、国立公園に取り込まれた森の一部を住民が使えるようにする」というものです。

 

これは本当に驚きの情報で、これまでの働きかけによってついに国が森の返還に向けて動き始めたのであれば、大きな前進ということができます。しかし残念ながら事実は異なります。なぜなら、彼らは「森の一部」に付け加えてこう言ったのです。「ただしそれは村の境界から10.5mだけ。そこからさらに10.5m幅は刈り払い(森林を伐採)し、そこから先への侵入は認めない」。

 

前回ご報告しましたように、もともと山に暮らす村人たちが利用していた生活の森(Half Mile Forest Strip)の幅は平均してハーフマイル、つまり約800mありました。それが10.5mでも生活を維持できるとした根拠は一体何なのでしょうか?

 

Newmark, William D., et al. (1991) The Conservation of Mount Kilimanjaro. IUCN, Tropical ForestProgramme; WWFをもとにタンザニア・ポレポレクラブが加工作成

 

 

さらに国立公園の領域を規定している国立公園法を改定(国会の決議が必要)することもなく、その一部を割譲する権限を、公園を管理する一組織がなぜ持っているのでしょうか?

 

そして境界を明確にするためにさらに10.5m幅を刈り払うとしていますが、何人の侵入も認めず、まして自然改変行為であるとして住民による自然資源の利用や環境保全活動を禁じた国立公園の中で、延長数十キロメートルにもわたって森を刈り払うことがなぜ許されるのでしょうか?しかもキリマンジャロ山は世界遺産です。

 

(写真1)今から20年以上前の1996年、村人たちがキリマンジャロ山の裸地化した斜面に森を
蘇らせようと、植林に取り組んでいる時の写真。同じ場所のその後の様子が写真2

 

(写真2)写真1の現在の様子。ここは村の境界に接しており、公社が10.5m幅での刈り
  払いを行うとした対象地。ここに写っている木の多くが切り払われることになり、
いくつかの村ではすでに伐採が開始されています。しかもここは国立公園の中。

 

当然この通達に村人たちは怒りを露わにしています。国の組織が平然と法律を踏みにじり、国立公園の拡大と同様、その決定をまたしても一方的に自分たちに押しつけてきたからです。

 

キリマンジャロ山でいま起きている問題には、それを引き起こした様々な要因があります。その一つに、住民が長く利用してきたエリアをトップダウンで一方的に取り上げたことがあります。こうした場合、普通は公聴会を開催し、地域住民に事前に十分な説明を行い、彼らの意見を聞き、理解と合意を得ることが必須です。しかしキリマンジャロ山の住民は、その十分な説明を受けないうちに森を取り上げられました。大問題となるのは必然だったといえます。

 

こうした住民無視のトップダウンのやり方がキリマンジャロ山での問題を引き起こしてきたという認識が、問題発生からすでに10年以上経つ現在にいたっても、国立公園を管理する公社には欠如しています。そして現場で起きている問題が正しく中央政府や国際機関に伝わるか/伝えられているかを検証する仕組みが存在しません。このような管轄組織の能力欠如と制度欠陥が、事態の改善を10年以上も阻んできています。

 

世界でもっとも名の知れた山の一つでこのようなことが起きているとは、私たちにはなかなか信じられないことです。しかしこうした事実が知られなければ、問題の解決が図られることはありません。わたしたちはこれまでタンザニア政府、政党、国会議員、国際機関、民間団体などあらゆるレベルに対してこの問題を訴えてきました。先の公社による森の一部返還への動きは、それは間違ったやり方ではありますが、公社がもはやこの問題を無視できなくなってきていることの証左だと言えます。

 

このクラウドファンディング・プロジェクトは、さらにこの問題の存在を地域住民たち自身が発信し続けていけるようにするためのチャレンジです。

 

引き続きみなさまの応援をいただけますよう、よろしくお願い致します。また、プロジェクトのシェア、拡散にぜひご協力いただけますよう、お願い申し上げます!

 

毎年雨季になると、村人たちは森を蘇らせようと総出で植林に取り組んできました。

 

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