被災した人たちへ、楽しい思い出を写真集にして配布したい

被災した人たちへ、楽しい思い出を写真集にして配布したい

支援総額

692,000

目標金額 610,000円

支援者
61人
募集終了日
2015年11月27日

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2015年11月08日 18:58

「泰の娘」新橋みどり

我々の活動は「歌と体操のサロン」という名称で定着し、各仮設に告知される際のちらしにもそう書かれています。参加者の殆どが70代以上の高齢者ですが、実施日が土曜日ということもあって、たまに子どもたちも覗きにきます。持ち込む楽器や小道具の中には、子どもたちの興味をひくようなものがたくさんありますからね。子どもたちと良好な関係を結べると最高に良いセッションができますが、そうじゃない場合も多々あります。避難所巡回時代、山田町で遭遇したバルーン破壊事件などもそうです。

 

 宮古市の北のはずれにある、まわりは森林という寂しい仮設がありました。世帯数はそれなりに多いのですが、買い物や用事などには不便なロケーションでした。初回の訪問は視察に来た音楽療法学会の人々と一緒だったこともあり単発イベントのような雰囲気でしたが、二回目以降は仕事も無く日中部屋に残っている高齢の方が数名と小学生数名が談話室に来ました。子どもたちは女の子が多かったのですが、口調が荒っぽく、部屋の中ではそれぞれが傍若無人にふるまっていました。

 

 活動を始めようと準備を進めている最中、車の中からアシスタントなすちゃんが出てこない事態が起こりました。気分でも悪いのか?と聞いたら

 

「ヒドイこと言われた」

 

 と、目をつぶったまま吐き捨てるように言いました。

 

「誰に?」

 

 私が聞くと、彼は

 

「女の子に、不審者あっち行け!って言われた」

 

 と言って、座席のシートを倒してそのまま横になりました。同じようなことは私も彼女たちから言われました、不審者とか泥棒か?とか。そういうコミュニケーションなのかな?と思って気にはしなかったのですが、ナイーブな彼には耐えられなかったようです。事情はわかりましたが、アシスタントがいないと非常に困るので、何とかなだめて部屋に連れて行き、活動を開始しました。

 

 積み上げた座布団に腹ばいになって、ゲーム機をいじる女の子。ホワイトボードに漫画のキャラクターを描く集団。私のキーボードを「貸して」とも言わず勝手に叩く年長の子。なすちゃんがまたダウンしないかとハラハラしながら、私はやんわりと彼女たちに

 

「音楽の活動をするから、参加するなら歓迎するよ。でも勝手に道具を触らないで、事前に聞いてね」

 

 と注意しました。無視されるかと思いましたが、全員が無表情で私を見て、何も言わずに外へ出て行きました。こたつに座っている高齢の方々は、いつものことで慣れているのか、我関せずでリクエストする曲を選んでいます。窓の外では今出て行った子たちが追いかけっこを始める声が響き、こちらはこちらで通常の活動を行いました。

 

 活動をすすめる中で、お一人の女性がほとんど耳の聞こえない状態だとわかりました。リクエストをうかがっても笑っているだけで、やりとりが出来ませんでした。私は宮古市にかよっている間に聞き取りをした現地の方言を絵にしたスケッチブックを開き、その女性にフウロウのページを見せたところ

 

「これ、オーホだ。夜になると森からダラスコデーホ、オーホと鳴くんだ」

 

 と嬉しそうに話し始めました。横に座っていた同郷の方から、実はこの女性は歌が大好きで、知っている歌なら歌詞を見ないで全部歌えるんだと聞き、リストを提示していくつかの演歌や懐メロを広げました。すると立ち上がって、私の伴奏を待たずに大声で歌ってくれました。彼女は他の人にはお構いなしに、何曲も何曲も歌い上げ、時間いっぱいまで音楽を堪能してくれました。

 

 三ヶ月後、その仮設に訪問したところ、また子どもの軍団が談話室を占拠していました。我々の顔をおぼえていてくれたようで、早くキーボード出せ!と言ってからんできました。なすちゃんは仏頂面で歌詞の用意をして、子どもたちは完全無視でした。年長の子が

 

「うちのばあやん、病院行っていて来ないよ」

 

 と言いました。

 

「どのおばあちゃんかな?」

 

「耳の遠いばあやん、こないだ沢山歌ったんでしょ?」

 

 その子の話では、あの女性は最近交通事故に遭遇して、病院で療養中とのことでした。命に別状は無かったから良かったものの、災難でしたね‥と私が言うと

 

「ばあやん、耳聞こえないし、とんちんかんなことしか言わないから、ここの人たちから馬鹿にされてんの。病院に入ってちょっとはホッとしたとこもあるんだ」

 

 と漏らしました。一通り乱暴な演奏を終えて気が済んだのか、彼女は他の子を連れてまた外へ飛び出していきました。

 

 半年ほど姿が見えなかったその女性ですが、何と見事に復活して自宅へ戻り、再び我々の活動に顔を出してくれました。多少やつれていましたが、人懐こい笑顔と歌声は健在で、我々は安堵しました。数日前から活動を楽しみにしていて、開始時間の一時間前から一人で談話室で待っていた、と女性の娘さん(年長の子のお母さん)からうかがって、本当に嬉しかったです。女性は何か新たなリクエストがあるらしく、同行した神戸の音楽療法士に題名を伝えました。「泰の娘」という曲名でした。残念ながら知らない曲だったので、その場でパソコンをネットにつなぎ、動画検索サイトで曲を再生しましたが、女性には聞こえず不発に終わりました。

 

「今度までに歌詞を大きく書いてきますからね」

 

 と約束を交わし、我々は次の活動場所へと移動しました。

 

 しかし諸事情により、この仮設は巡回スケジュールから外れてしまいました。自治会が音楽療法のイベントは不要だ、と社協に伝えてきたとのことでした。私は何か別の方法で、あの女性と会う場を設け「泰の娘」を一緒に歌う手段は無いものか、と思っていたのですが、数カ月後の地元新聞訃報欄に彼女の名前が掲載されているのを発見。約束を果たせないまま、彼女は天国へ旅立っていってしまったのです。

リターン

3,000


①お礼状(ポストカード)

支援者
31人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2016年2月

10,000


①お礼状(ポストカード)

②写真集1冊

③当法人ホームページへお名前の記載
(掲載を希望されない場合はご連絡下さい)

支援者
20人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2016年2月

30,000


①お礼状(ポストカード)

②写真集1冊

③「三陸ことば絵本」1冊

④オリジナルエコバッグ1枚

⑤当法人ホームページへお名前の記載
(掲載を希望されない場合はご連絡下さい)

⑥仮設住民がヘンプもしくは刺繍糸で編んだミサンガ、フクロウなどのマスコット、布製小物など5点セット
(色や模様、種類は在庫により変更がございます、あらかじめご了承ください。)

支援者
8人
在庫数
1
発送完了予定月
2016年2月

50,000


①お礼状(ポストカード)

②写真集1冊

③「三陸ことば絵本」1冊

④オリジナルエコバッグ1枚

⑤当法人ホームページへお名前の記載
(掲載を希望されない場合はご連絡下さい)

⑥仮設住民がヘンプもしくは刺繍糸で編んだミサンガ、フクロウなどのマスコット、布製小物など5点セット
(色や模様、種類は在庫により変更がございます、あらかじめご了承ください。)


⑦仮設住民と一緒に「歌と体操のサロン」体験にご招待
(2016年9月まで有効、現地までの交通費は自己負担となります)

支援者
3人
在庫数
完売
発送完了予定月
2016年2月

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