READYFORご支援者へのリニア情報・その1
――リニア計画、もう一つの裁判――
私を支援していただいた皆様。
本報告は本来であれば7月中に伝えるべきでしたが、先約をこなすことに時間を取られたことと、8月に送信を試みるもなぜか送信できないというトラブルに見舞われ(READYFORに相談してもはっきりした原因はわからず)、結局、最初から打ち直し作業になったことで、ここまで遅れてしまったことにまずはお詫びいたします。近日中に、第2回目を、そして9月中には3回目の報告を差し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
以下、一度目の報告です。
品川駅(東京都)と名古屋駅(愛知県)の286kmをわずか40分で結ぶ計画の「リニア中央新幹線」。2027年開通予定だ。
私も、何気にそれを「夢の超特急」と思い描いていた幼い記憶がある。おそらく多くの日本人が、今も、漠然と、そう思っている。
だが1999年に何気に始めた取材で、「夢」とばかり言えない現実があることに気づいた。そのことは、READYFOR「新着情報」に書いたので繰り返さない。
リニア計画を巡って、現在、二つの裁判がある。
1 リニア計画の事業認定の取り消しを求めた行政訴訟。原告738人(第1次)。被告は国土交通省。2016年5月提訴。
2 リニアの工事差し止めを求めた民事訴訟。原告8人。被告はJR東海。提訴は2019年5月。
二つ目の裁判は始まったばかり。それを簡単にでも報告するのは今回で初めてです。
●概要
南アルプス市の市民団体「南アルプス市リニア対策協議会」の8人が、今年5月3日、「生活が破壊される」として、リニア工事の差し止めや慰謝料を求めてJR東海を甲府地裁に提訴した。
リニア計画が明らかになってから、地域の住民たちは、もしリニアが開通したら、「★騒音 ★日照障害 ★振動 ★景観阻害 ★地下水枯渇 等々」で生活が破壊されると認識した。
ただし住民は初めからリニア計画に反対したのではない。条件をつけていた。防音フードを設置せよ、もしくは、騒音のない場所への移転を補償せよ、と。
そこでJR東海とまずは話し合いを持ったが、まったく歩み寄りが見られない。防音フードをつける気はないし、補償対象となる家屋も路線から22mの幅だけ。
住民たちはこれに異議を唱え、甲府簡易裁判所に民事調停を申し立てたが、2回の調停は不調に終わった。最後の手段として、今回の提訴に及んだのだ。
7月30日の第一回口頭弁論では、8人の原告のうち3人が意見陳述にたった。
(裁判後の報告集会で。左端が梶山弁護士。隣が志村さん)
住民代表の志村一郎さん(77歳)は「JR東海は私たちの疑問に具体的に答えない。そして、住環境に必要なのは1 平穏、2日照、3景観、4風通し、5地価の安定等だが、リニア沿線でこのすべてが崩される住宅が相当数にのぼる。移転補償が必定だが、それも無理なら工事差し止めしかない」と陳述した。
トマト農家の葛西正弘さん(71歳)は、「リニア高架路線が農地を分断する。そして高架の日陰はトマト生育に影響する。この年で他の土地に移っての新施設への投資は無理。リニアに反対はしないが、正当な補償をしてほしい」と訴えた。
そして3番目の秋山美紀さんの陳述には傍聴席からため息が漏れた。
19年前に移住し、家族3人で平穏に暮らしてきた秋山さんの家屋はリニア路線からわずか北側に2m。土地の一部はリニア路線にかかる。
「最悪な生活環境になるにも関わらず、補償されるのはリニアの用地に係る土地だけで、該当する日陰補償が30年間分の厳しい保証だけで、私たちをこの地に住めと押し付ける強引な手法には、到底納得できません」
冬至になれば、秋山さんの自宅の日照時間は1時間未満となる。さらにわずか2メートルの距離では、6時から24時まで6分間隔でリニアの騒音に悩まされることになる。
(リニア山梨実験線のリニア高架の北側の家屋。撮影は10月。11月中旬から1月中旬の2か月間は、太陽が高架に沿って動くので、家が真っ暗になる)
住民の差し止め請求は南アルプス市内の5Kmが対象となるが、主任弁護士の梶山正三弁護士は「一カ所でも止めれば、リニアルート全体が止まる」と訴えた。
特筆すべきは、この口頭弁論において被告が一人も被告席にいなかったことだ。それは、原告にすれば、自分の思いの丈が被告に直接伝えられなかったことを意味する。弁護士の梶山正三弁護士は「次回は被告の前で原告の声を聴かせたい」と法廷で訴えた。
次回期日は11月19日10時半から。
もう少し詳しく知りたい人は、以下もお読みください。
●補足情報
2013年9月、JR東海は、リニア計画路線の地域での環境アセスを終え、具体的にどういう計画で事業を進めるかの住民説明会が各地で開催。
今回の原告8人が驚いたのが、自宅や所有する土地のすぐ近く、もしくは分断するようにリニアが通ることだった。
以後、住民は動いた。具体的な動きを大雑把に書けば以下の通りになる。
1.大雑把な動き
▲2014年10月17日 国土交通大臣が、リニア計画を事業認可。
▲JR東海は各地で住民説明会を開催。だが南アルプス市の説明会ではJR東海が具体的回答をしないために、「この説明会はなかったことにしてほしい」と今も事業説明を拒否する自治会もあるほどだ。
▲具体的に、住民が受け入れられない被害は例えば以下のものだ。
★騒音
リニア計画では、地上部の高架レールを防音フードで覆うのが原則だが、防音壁のみで天井が開いた走行区間がいくつかある。路線近くでは騒音被害を避けられない。騒音規制法では、大雑把には昼間は55デシベル、夜間が45デシベルが上限だが、リニアも含む新幹線計画においては、路線から片側400m(両側で800m)の範囲で70から75デシベルまでが認められている。
▲無補償
400mの範囲での騒音被害があるかもなのに、JR東海が示した移転補償の対象は幅22mだけ。そこより外の家屋は無補償となる。
▲日陰
高架の北側の家屋は日陰になる。それを補う電気代や暖房代の補償は30年間だけ。31年目からは自己負担だ。
2.住民の行動
▲申し入れ
住民はすぐに動いた。まずはJR東海との話し合いだ。だが、JR東海の姿勢に失望することになる。
たとえば、JR東海に「防音フード」の設置を何度も文書で申し入れた。だが、文書での質問に対して、JR東海がどう回答するかというと「口頭」で回答するのだ。しかも回答文書を読み上げながらだ。
「その文書をください」と言っても、JR東海は絶対に文書をくれない。そして、その口頭内容についても、「大丈夫です」「法を守ります」などの抽象答弁に終始し、逆に住民の不安を煽った。
秋山さん(前出)は、JR東海への不信感から、JR東海から求められた境界線を確定させる測量の立会いに応じず、その測量を認める印鑑も押していない。
▲調停と裁判
ついで、住民は甲府簡易裁判所に民事調停を申し立てたが、2回の調停は不調に終わった。原告団長の志村さんはこれを振り返り「結局、話し合いも調停でもJR東海は一片の誠意を見せてくれなかった。私は当初、防音フード設置や移転補償が実現すればよしと思っていたが、今ではもうリニアを止めるしかないと思うようになりました」と語る。
3.弁護士の思惑
この裁判を担当するのは、梶山正三弁護士。「ごみ問題なら梶山」というくらいに産廃裁判などでは名を知られた弁護士だ。梶山弁護士は裁判後の集会で私にこう語った。
「現在、東京で行われている行政訴訟は愚策です。というのは、国相手の行政訴訟は最高裁まで争って判決が確定するのに10年はかかるのに、その間にリニア工事はどんどん進んで完成に近づいてしまう。しかし、今回は長さ5Kmの区間を止めるだけの民事訴訟だが、一カ所を止ればリニア全体が止まる。そして、地裁レベルでは長くても3年で判決が出る。私は勝てる可能性があると確信している」
梶山弁護士は、原告8人が居住するリニア建設予定地を検証するよう裁判官に求めている。
「二日もあれば8カ所を回れます。そうすれば、この計画がいかに財産権と人格権を侵害するかが理解されるはず」
11月19日も私は傍聴する予定だ。
リターン
3,000円
リニア計画取材の活動報告
■お礼のメール
■リニア取材の活動報告
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5,000円
リニア計画取材の活動報告+2020年出版予定の著書
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■リニア取材の活動報告
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10,000円
【活動報告+著書】リニア計画取材をサポート
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■著書「リニア新幹線が不可能な7つの理由」(岩波ブックレット)
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※新たに出版する著書のみ2020年5月に送付予定です。
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30,000円
【活動報告+著書+藍染製品】リニア計画取材をサポート
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■リニア取材の活動報告
■著書「リニア新幹線が不可能な7つの理由」(岩波ブックレット)
■当プロジェクトの取材を元にした、出版予定の著書
■リニア実験線の近くに工房をもつ、佐藤文子さんの藍染製品
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30,000円
【リターン不要の方向け】樫田秀樹を全力サポート
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※このコースは、リターン費用がかからない分、いただいたご支援金はサービス手数料を除いたすべてを活動内容に充当させていただきます。(寄付控除の対象にはなりません。)
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- 2019年7月
50,000円
樫田秀樹による出張講演
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■リニア実験線の近くに工房をもつ、佐藤文子さんの藍染製品
■出張講演
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※新たに出版する著書のみ2020年5月に送付予定です。
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50,000円
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