【労働がなくなる!?ベーシックインカム世界の流れ】

 

ベーシックインカムという考え方をご存知だろうか。人々が、最低限の生活できるだけの収入を得るという考えだ。1970年代から提案されていた思想だが、2016年6月ににスイスで”ベーシックインカム”国民投票が起きてから、”湧き水が溢れるように、フィンランド、ドイツ、カナダ、アメリカ、インド、台湾、韓国と次々と小規模での実施や、ベーシックインカムを主張する政治勢力が勢いを増している。日本でも、世界20カ国語に翻訳され、文藝春秋から発売されたルトガー・ブレグマン氏の著書「隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働」が、労働部門ベストセラー一位になるなど、社会現象が生まれている。一体何が起こっているのか。

 

【背景には人工知能による仕事消滅】

 

 「10年後、今ある仕事の5割が消滅する」こんな衝撃的な証言を発表したのは、イギリスのオックスフォード大学で人工知能研究をしているマイケル・A・オズボーン准教授。自動運転などあらゆる業界で機械が導入され、銀行のブローカー、スポーツの審判、電話オペレーター、クレジットカードの審査員などあらゆる仕事が機械に変わるという。オズボーン准教授は、米国労働省のデータに基づいて、702の職種が今後どれだけコンピューター技術によって自動化されるかを分析。その結果、今後10~20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高いという結論に至ったのだ。

 そうなった場合、人間が生きるための新しい制度を作らなければ・・・。ベーシックインカム議論が白熱している背景には、止むにやまれぬ機械化の状況がある。

 

【働かなくなるのでは?】

 

「ベーシックインカム」の議論を行うとよく言われるのが、「人々が怠惰になり働かなくなるのでは」という意見だ。実際には、2006年のナビビアなど今までの社会実験の結果、アルコール依存症が軽減され、街でのアルコール消費量が減り、今まで学校に行けなかった家の子達が学校に行き、DVが減り、売春が減り、経済的理由で起業できなかった人がお店を出すなど起業を始め、むしろ街全体が学び働くという活気に満ちたという結果が出ている。

「隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働」の著者ルトガー・ブレグマン氏は、アメリカで行われた大規模講演会TEDにて、「貧困は人格の欠陥により起こるのではなく、現金の欠如によって、起こる」と発言した。「貧困層は不健康な食事をし、貯蓄が少なく、薬物をより頻繁に使用する傾向にある。なぜなら、基本的な欲求が満たされていないからだ。だから現金を給付すれば、これらの問題を解決できる」というルドガー・ブレグマン氏の発言は、約1000人の聴衆から喝采を浴びた。

 

 

【フィンランドでは2000人の失業者に月7万円を給付】

 

今年1月から、フィンランドでは、2000人の失業者を対象に月7万円の給付を行う、ベーシックインカムの部分的給付実験を開始した。4ヶ月経った現在、対象者のストレスが軽減するという効果が認められている。

 フィンランド政府の福祉を一手に担う日本の年金機構や、厚生労働省にあたる公的機関・社会保険機関ことKELAが担当している事業だ。筆者はこの導入にあたってのKELAの報告書を入手した。タンペーレー大学のラウラ・カリオマーラ・プーハ教授と、ヘルシンキ大学のアンナ・カイサ・トゥオビンネン教授が、今まで世界中で行われたベーシックインカム実験・その結果をもとに、ベーシックインカムの支給規模、金額を詳細に計算していた資料だ。二人の教授は、1968年~80年のニュージャージー州、1974年-79年のカナダ、2010年から2013年までのインドや、ケニア、ウガンダ、1995年のブラジル、1997年のメキシコ、ベルギーなどのベーシックインカム実験の前例を検証。その結果4つのパターンがあるとしている。

 

【フル・ベーシックインカム】国民全員にベーシックインカムを支給し、福祉を全て撤廃する。

 

2【部分的ベーシックインカム】基本的な社会保障のほとんどをベーシックインカムに置き換えるが、国民健康保険制度のような医療保険なそのまま残す。

 

【課税制度による負の所得税】所得制限を設け、一定の所得に満たない人にベーシックインカムを給付する

 

【ベーシックインカムの効果を上げる他の方法】一定の所得に満たない水準の人たちに、それを補う給付金を出す

実施はされなかったとはいえ、全国民に対しての給付を検討していたというのだから、衝撃だ。

 

.【韓国】

 韓国では大統領選挙にも出馬し、昨年末までベスト3というメイン候補の一人だった李在明前城南市長が、ベーシックインカム制度の普及を推進している。ソウル市の南隣に位置する城南市では、2016年から、韓国初の試みとして成功した城南市ベーシックインカム実験(青年配当)を行った。

これは城南(ソンナム)市が城南に居住する19~24歳の若者11,300人​に年間100万ウォン(10万円)の支援金を支給するもの。この政策のために、城南市はの1年の福祉予算5587億ウォン(2015年)の2%である113億ウォンの予算を使った。韓国の全人口の実質的失業率は10.1%(2015年)だが、若年層の実質的失業率は22.4%。若者の就業者の3分の2は非正規雇用で、韓国の大学生は世界で最も高い授業料を払っている。そのため、2013年現在、大学生10人中6人が1,500万ウォン(150万円)以上の借金を背負っている状況から行われたものだ。

 日本に転じて考えてみると、日本でも大学生の二人に一人が、平均150万円以上の奨学金の借金を抱えているが、これは韓国の約二倍の額。韓国の平均年収が580万円で、日本の平均は409万円。平均年収が低いのに若者が倍の借金を抱えてるとはどういうことなのか。

在学中は”無償”で、その後返済義務のある学費借金制度でお茶を濁されてはいけない。日本こそ、根本的な不平等を是正するための施策が必要なのでは。

 

【台湾では300人の村二つに2018年からベーシックインカム実施】

 

 台湾でも、来年から小規模BI実験がスタートする。300人の田舎の町が舞台で、住民すべてに月5万円を2年間にわたって支給する。一つの村は台湾政府の給付、そしてもう一つの村は世界的なベーシックインカム運動を行う財団が、支援者による寄付で、給付する。その中心人物であるピンシュウさんに話を聞いた。

 台湾での実験がスタートしたきっかけは2016年の5月にソウルで行われたベーシックインカ国際会議でピンシュウさんが発表したことだ。会議の半年後には、村の視察、その一年後より実験スタートというからとんでもないスピードである。ピンシュウさんはもともとアメリカに住んで白人男性と結婚して生活していたが、夫が病気になったことで、一家の収入は激減。保険制度の乏しいアメリカでは発病することは、ホームレスになることと同義語だった。別居、離婚をし、2年間複数のアルバイトをしながら、車上生活を送っていたピンシュウさんは、「離別や病気という誰の人生にも起こり得ることで、こんな目にあうのは理不尽だ」とベーシックインカム運動の提唱者となった。「すべての女性には、ベーシックインカムが必要」というピンシュウさんの言葉は重い。

 

 

【無条件のベーシックインカムが当たり前の日は近い?】

スイスの国民投票運動のリーダーであるエノ・シュミットさんは、今年5月に来日全国6箇所を回る講演ツアーを行った。。エノさんは商業芸術の世界で成功した元芸術家。スイスの国民投票運動では5000万円分のコインを連邦議会前にばらまく、世界で一番大きなポスターを作るなど、インパクトのある運動で、23パーセントの支持を得た。「一度ベーシックインカムが導入されたら、それ以前の社会には戻れなくなる。例えば、スマートフォンや、車がない社会を想像できないように。今の若い人がおばあちゃんになった頃、孫にこう言われるだろう。『お金のために働いていたなんて信じられない』と」とエノさんはいう。日本はすでに豊かな財政を持っており、ベーシックインカムを導入するベースはできている。例えば、島である沖縄などが最初の検討としては可能性が高いのではないか」とも言及した。

 

【日本でのBIは可能か】

 元農林水産大臣の山田正彦さんは、「日本でも増税せずベーシックインカムは可能」と断言する。「医療費を除く社会保障費は75兆円。これを今すぐ、全国民に給付したら一人月額5万円。そこに扶養者控除を現金化したら、一人8万円が支給できる。」という。「もちろん政治家チームで具体的な資産が必要だが」と前置きしながら、「エノさんにあう前は、絵空事と思っていたが、十分可能性はある」(山田正彦)

【日本最初のベーシックインカム映画を撮影】

実は今、私は日本初のベーシックインカムをテーマにした映画の制作を行っている。エノ・シュミットさんや、台湾や、カナダのBI第一人者、「ベーシックインカム入門」執筆者の山森亮同志社大学教授、「ベーシックインカムを実現する会」の白崎一裕氏も出演する。また世界で初めてベーシックインカムの実験が始まった街を舞台で「人々の人生がどう変わるか」をドラマで表現する。ドラマ部分の主演はカンヌ映画祭常連の河瀬直美監督の「朱花の月」の主演でカンヌ映画祭にも参加した女優の大島葉子さん。レディーフォーというクラウディングサイトで、制作費を募集していますので、ぜひ応援をお願いします。https://readyfor.jp/projects/moneybasicincome/

 

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