ハーバード大学教授の名講義『なぜ科学を信頼する?』を出版したい!

ハーバード大学教授の名講義『なぜ科学を信頼する?』を出版したい!

支援総額

2,040,000

目標金額 1,550,000円

支援者
191人
募集終了日
2023年10月19日

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2023年12月15日 10:25

『なぜ科学を信頼する?』を出版したい!プロジェクトをご支援いただいている皆様へ

ハーバード大学教授の名講義『なぜ科学を信頼する?』を出版したい!プロジェクトをご支援いただいている皆様へ

 

那須里山舎 代表 白崎一裕

 

(以下の内容はRedyfor 事務局さんにもご報告済みです)

 

『なぜ科学を信頼する?』ナオミ・オレスケス著の出版プロジェクトにご支援していただいているみなさまへ。

 

ご支援当初の計画では、この12月中に出版発売日前のリターン「先取り完成本入手」ということで進め、事業全体は新年1月までで出版プロジェクト事業終了の予定でした。しかし、このクラウドファンディングを通してご支援いただいたみなさんとのコミュニケーションのなかで、この出版事業をバージョンアップしたほうが良いと思われることとなり、その結果、事業計画を2か月ほど遅らせる必要性があると判断いたしました。その理由につきまして、私からご説明をさせていただきます。

 これまでのクラウドファンディングの「活動報告」のなかで、たびたび、ふれてきましたが、このナオミ・オレスケスさんの『なぜ科学を信頼する?』のひとつの特徴は、科学を集団的知の成果ととらえて、その集団知の質を上げていくという形で科学のアカデミズムの有効な地位を担保する論理構成と戦略になっています。

編集担当の白崎が特に注目したのは、オレスケスさんの文中に高い評価で出てくる、サンドラ・ハーディングやヘレン・ロンジーノなどのフェミニズム科学論の論理です。オレスケスさんによれば、このフェミニズム科学論は科学の集団知の質をあげていくために重要な問題提起をしているということなのです。その論理の内容は、科学を担ってきた主体は、主に【西欧の男性で・白人で・豊かな中産階級以上の「特別」な階層および階級の人々】に限られてきたという指摘です。オレスケスさんは、この論理を受けて、一部の階層・階級に独占されてきた科学の仕事をもっと多様な主体に解放しなければならないという主張をおこなっています。

このことは、現在の日本の科学界でもまったく同様で、たとえば「リケジョ」なる言葉で特別視されるように自然科学者における(人文・社会科学も同様と思われますが)ジェンダー格差の問題がすぐに思い起こされます。これは、まさに科学・技術体制にうめこまれた「ジェンダー・バイアス」といってよいでしょう。

本プロジェクトでは、版元代表の白崎と訳者の早川さんが男性という最大の問題はありますが、せめて、この翻訳プロジェクトの推薦者は、女性にしようという考えで、プロジェクトご推薦者のお三人は、女性の専門家・表現者の方々にお引き受けいただきました。また、ご支援者を募集する過程で、本書は、科学史・科学論・科学哲学の専門書でもあるので、その分野の専門家の方々にも、SNSなどでご協力をお願いいたしました。特に女性の科学史・科学論の専門家ということで、科学史家の隠岐さや香さん(東大)のお仕事に注目していた白崎は、隠岐さんにこのプロジェクトへのご支援をお願いした次第です。

隠岐さんには、快くご支援をお引き受けいただき、また、科学史・科学哲学の他の専門家の方々もご紹介していただきました。そして、その隠岐さんに、オレスケスさんということであれば、塚原東吾さん(神戸大)をご紹介しますということで、塚原さんをご紹介いただきました。白崎は、その塚原さんにオレスケスさんの本著書の推薦文をお願いし(科学史の専門家の方の推薦文もあったほうが良いと考え)、現在出来上がっている校正刷(ゲラ)を読んでいただいたところ、二つのご提案をいただきました。ひとつは、早川さんの翻訳のお仕事のさらなるバージョンアップのために、(日本での研究をふまえた)科学史・科学論・科学哲学の訳語・用語チェックをすること、そのために、科学史・科学論専門家のチームをつくること。もうひとつは、オレスケスさんの議論はアメリカの政治・社会状況を反映したもので、この議論を日本に紹介するための読者ガイド的解説文が必要なのではないかというご提案でした。また、ご提案のチームについては、クラファンプロジェクトに、すでに、ご支援いただいている専門家のみなさん、隠岐さや香さん、柿原泰さん(東京海洋大)、鶴田想人さん(東大・院生)そして塚原さんで取り組んでいただくということになるということでした。

白崎は、このご提案はとても良いものであり、まさに、このクラウドファンディングでご支援のみなさまの輪を広げた果実のひとつであると思いました。特に、この専門家のチームでの解説文のご執筆は本プロジェクトにとって最重要なものであると考えております。その白崎なりの理由を説明させていただきます。

このオレスケスさんの『なぜ科学を信頼する?』のご紹介を早川さんからしていただいたときに、白崎がこの企画(プロジェクト)を実行しようと思った問題意識があります。それは、白崎個人が、大学で「科学・技術論」を専攻していたということがあります。私の学生時代の問題意識は、1970年代から80年代前半にかけての日本の高度経済成長の反省が反映したものであり、科学技術においては、水俣病や四日市大気汚染などの公害問題や1979年におきたアメリカのスリーマイル島原発事故などによる反核・反原発問題、また地球環境問題や資源問題および様々な「疎外状況」ともいえる社会問題に対する「近代科学」の限界性を問う時代的精神に影響を受けたものであったといえます。これをまとめて「科学批判」の問題意識といってよいでしょう。

当時、私は、トマス・クーン(オレスケスさんの本でも解説されます)の「パラダイム論(『科学革命の構造』)」の翻訳紹介で著名だった科学史家の中山茂さんの影響をうけ、特に中山さんに教えられた科学史家のJ・R・ラベッツの著書『批判的科学』で提出されていた科学体制の分類カテゴリーである「アカデミズム科学」「産業化科学」「批判的科学」が思考の中軸となりました。 アカデミズム科学とは、科学の専門家が専門学会内で研究し、その結果を査定しあうもので、ちょうど、オレスケスさんの言っている、ピアレビューによる科学界の相互査定の在り方と同じようなことをいっています。そして、産業化科学というのは、科学の研究成果が企業・産業界によって利用評価されていくもので、いわゆる産業組織に科学が体制化されていくありかたを批判的に理念化しています。これは、オレスケスさんでいえば、アメリカの石油産業界が、地球温暖化の科学研究成果を否定するような策動などともからむことです。ラベッツは、古典的な政治的・社会的に孤高の中立的なアカデミズム科学は過去のもので、現代は、産業化科学が大きな影響をもち、ある場合において、社会や人間に対して「負の影響」をおよぼしていると考えました。そこで、ラベッツは、これに対抗するための、市民が自分たちで担い自分たちのための科学研究をすすめるということで「批判的科学」というものを提案しました。しかし、中山さんも指摘しているようにラベッツの批判的科学の内容は具体性に欠けるため、中山さんは、「市民が科学の内容を規定して査定する、そして市民の民主的自治に寄与する科学」ということで「サービス科学」という考え方を提案されます。この市民に対する「サービス科学」という考え方は、私の人生にも影響を与え、まさに、ラベッツや中山さんが志向する科学や学問の在り方を追求したいということで現在に至っています。

そんななか、このオレスケスさんの本に出会い、私の個人的な感想では、オレスケスさんは、産業化科学の歪んだありかたを、あらためて、アカデミズム科学のありかたを再構築するなかで克服しようとしているように思えました。だとすると、この日本の戦後高度成長期の行き詰まりに生じた「科学批判」の論理とどのようにつながるのか?そして、わたしたち普通の市民は、どのように関わっていけばよいのか?加えて、わたしたちはオレスケスさんの本を日本でどのように読んでいけばよいのか?という問題意識が私のなかに連続して生まれてきていました。これらの視点は、311福島原発事故やコロナパンデミックを経てきた現代日本だからこそ必要なものだともいえます。

その解答にあたることが、隠岐さんや塚原さんとのやりとりで、ある程度みえてきたところがあります。また、この課題に日本の専門家のみなさんが、どのように取り組んでこられたのかがおぼろげながらわかってきました。

私(白崎)は、以上の問題意識に応答する塚原さんたちの解説文が、このオレスケスさんの翻訳書には、ぜひとも必要だと思いました。また、本書を広く日本で広く普及するためにも、それは必須の仕事だと考えました。(ちょうど、日本の論壇では、先に述べた科学批判論調以後の科学論のうごきが見えにくかったということもあったように思います。それを克服するためにも必要な試みだと考えます)

 

しかし、冒頭にもどりますが、そのためにはこのプロジェクト完了期間をある程度延長することが必要になります。

ご支援いただいている皆様には、大変ご迷惑をおかけいたしますが、以上の趣旨をお汲み取りの上、本企画(プロジェクト)の延長の御許可を得たいと思います。重ねて申し上げますが、この延長によってさらにこのプロジェクトの趣旨が深められ・進化することをお約束いたします。

何卒、よろしくお願い申し上げます。

 

以上のことから、ご支援者の「リターン」のお約束のうち

 完成書籍先取りの発送が2023年12月中となっておりましたが、それを2024年3月10日までの発送に延期ということにさせていただき、また、本プロジェクトの完了を2024年1月10日ということでしたが、それを2024年3月31日までにさせていただきたいと思います。また、リターンのオンライン講演会の予定は、2024年1月中でしたが、その開催を2月中にそれぞれ延期ということにしたいと思います。

いずれも、期間があとにずれこみますが、このプロジェクトの高みをめざした完成のために伏してお願いする次第です。

 ●上記の要点です。

1,ご支援者のなかの科学史・科学論の専門家チームの方々に翻訳文の専門用語の監修をしていただく

2,同じ専門家の方々に、日本の読者へ向けての「解説文」を書いていただく

3,そのために、出版時期を一定期間延期させていただく

4,その時期は、以下のとおりです。

・完成書籍:2023年12月中⇒2024年3月10日までの発送に延期

・オンライン講演会の開催:2024年1月中⇒2月中に延期

・プロジェクトの完了:2024年1月10日⇒2024年3月31日に延期

 

〇 参考文献 

『批判的科学―産業化科学批判のために』J.R.ラベッツ著 中山茂訳 秀潤社    1977年

『科学と社会の現代史』中山茂著 岩波書店 1981年

『リーディングス戦後日本の思想水脈2 科学技術をめぐる抗争』金森修・塚原東吾編 岩波書店 2016年

『日本のSTSと科学批判 戦後科学論からポスト3・11へ』 塚原東吾著(「科学技術社会論研究 第15号、2018年」所収)

『よくわかる現代科学技術史・STS』塚原東吾、柿原泰ほか編著 ミネルヴァ書房 2022年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リターン

5,000+システム利用料


純粋応援コース

純粋応援コース

◇ 出版記念イベントへご招待
・オンライン講演会形式
・2024年1月に開催予定

支援者
53人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2024年1月

10,000+システム利用料


書籍先取りコース

書籍先取りコース

◇ 完成書籍を発売前にゲット
・2023年12月に発送予定
◇ 出版記念イベントへご招待
・オンライン講演会形式
・2024年1月に開催予定

支援者
124人
在庫数
75
発送完了予定月
2023年12月

30,000+システム利用料


科学への情熱コース

科学への情熱コース

◇ 書籍へお名前記載(ペンネームまたは匿名も可)
◇ 完成書籍を発売前にゲット
・2023年12月に発送予定
◇ 出版記念イベントへご招待
・オンライン講演会形式
・2024年1月に開催予定

支援者
14人
在庫数
86
発送完了予定月
2023年12月

100,000+システム利用料


会心の一押しコース

会心の一押しコース

◇ 訳者・出版社との編集会議へご招待
・ビデオ通話形式(音声のみも可)
・2023年11月以降に開催予定
◇ 書籍へお名前記載(ペンネームまたは匿名も可)
◇ 完成書籍を発売前にゲット
・2023年12月に発送予定
◇ 出版記念イベントへご招待
・オンライン講演会形式
・2024年1月に開催予定

支援者
1人
在庫数
19
発送完了予定月
2023年12月

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