支援総額
目標金額 3,000,000円
- 支援者
- 139人
- 募集終了日
- 2021年12月10日
【よくいただくご質問と回答集】北朝鮮帰国事業裁判について
Q. 北朝鮮政府を被告とする裁判も初で、帰国事業についての裁判も初めてか?
A.
北朝鮮政府を被告とする裁判は、弁護団の知る限り日本では初めてです。帰国事業については、過去に朝鮮総聯を被告として争われた2件の訴訟がありますが、いずれも「時効」「除斥期間」を理由に敗訴という結果になっています。
Q. 外国政府は「主権免除」により外国裁判所の裁判権に服さないのが原則である。北朝鮮政府も「主権免除」されるのではないか?
A.
日本では、対外国民事裁判権法という法律で、主権免除を享受する主体は何かということなどが定められています。同法は、「外国等」に主権免除を認めています。しかし、「外国等」には未承認国家には含まれず、主権免除は及びません。これは、同法の立法担当者の見解でもあります。日本政府は北朝鮮政府を国家承認していませんので、弁護団は、北朝鮮政府は主権免除の対象ではないと考えています。
Q. 初めての裁判(=2021年10月14日の第1回口頭弁論期日)では何を行うのか?その後また裁判が開かれるのか?
A.
北朝鮮政府が応訴することは想定されていないため、1回で結審をすることが予定されています。つまり、次回の期日は裁判ではなく、判決ということになります。
10月14日の第1回口頭弁論期日では、弁護団から事件の概要と主張、提出している書証等について口頭で説明を行います。また、原告5名が証言を行うほか、日朝史に詳しい法政大学の髙栁俊男教授に専門家証人として証言していただく予定です。
Q. 損害賠償金の支払いを日本の裁判所が命じる勝訴判決が出た場合でも、北朝鮮政府が相手では、損害賠償金を回収できる見込みはないのでは?
A.
北朝鮮政府が支払いに自主的に応じる可能性は乏しいと考えています。そして賠償金の回収が極めて困難なのは事実です。しかし、賠償金回収が不可能というわけではありません。今回の裁判で確定判決が出た場合、日本国内であればそのまま効力を有するため、北朝鮮から漂流した財産等について差押を行うことは可能です。
海外では、北朝鮮船籍で登録されている船舶を差し押さえるなど、北朝鮮政府に対する債権回収の様々な試みがなされております。2018年にアメリカでは、当時大学生だったオットー・ワームビアさんが北朝鮮で拷問を受けて亡くなった事件で、約536億円の支払いを北朝鮮に命じる判決が下りました。
北朝鮮政府が重大な人権侵害を過去そして現在も犯している以上、北朝鮮政府に責任を取らせること(=アカウンタビリティの追及)自体、重要であると考えています。将来、外国の裁判所において、我々の勝訴判決の効力を認めてもらい、外国に存在する北朝鮮の財産を差し押さえられる可能性もあります。将来的には、北朝鮮の人権問題に関わる国際的な法律家のネットワークと連携しながら、海外での財産差押えも含めて検討していくことになると考えております。
Q.北朝鮮の帰国事業の最大の目的は何だったのか?
A.
3つの理由が有力であるとされています。第一に、資本主義よりも社会主義の方が優っているという政治的な優位を国内外に示すことが挙げられます。第二に、朝鮮戦争時に失った労働力を補填することです。第三に、帰国者を通じた、日本からの資産や技術の還流でした。
Q.日本政府を相手に訴訟を起こさないのはなぜか? 朝鮮総連含め責任を有する機関はほかにもあるのではないか?
A.
北朝鮮政府を被告とした理由は、第一に、北朝鮮政府こそがこの事業を計画・遂行した最も責任ある主体だからです。他の団体の関与は、あくまで北朝鮮政府が計画した事業を前提とする副次的なものです。
北朝鮮政府以外を被告にしなかった理由として、第二に、時効・除斥期間という法律上の問題があげられます。過去、帰国事業に関しては、朝鮮総連を被告として、2件の裁判が提起されましたが、いずれも時効ないし除斥期間により敗訴しています。
日本政府や朝鮮総連、赤十字諸機関など、北朝鮮政府以外の主体の不法行為は、いずれも1950年代末から1980年代にかけて行われた在日コリアンに対する虚偽に基づく勧誘への関与ですが、当時の日本の民法では、行為から20年経過すると不法行為に基づく請求権が消滅するとされていました。日本政府等を被告とすれば、時効・除斥期間の経過により敗訴が免れないという現実があります。
一方、北朝鮮政府の関与、すなわち原告を北朝鮮に渡航させ日本への帰還を許さなかったという行為は、各原告が脱北した時点まで続いており、20年という除斥期間にかからないと考えています。
今回は司法の場での「訴訟」という手段をとったために、以上の理由で、北朝鮮政府だけが被告となっています。しかし、原告らとして、北朝鮮政府以外には責任がないと考えているわけではありません。「帰国事業」に直接かかわった5者(日本政府、朝鮮総連、日本赤十字社、北朝鮮赤十字会、赤十字国際委員会)にも、程度の差はありますが、責任があると考えています。原告5人は2015年、北朝鮮政府を含めた6者の行為について、日本弁護士連合会に対し「人権救済申立」を行っており、この申し立ては今も調査中となっています。
Q. 提訴が2018年になった理由は何か? 何かタイミングはあるのか?
A.
大阪での2008年提訴の帰国事業裁判が訴訟で敗訴したことを受けて、帰国事業を裁判で問うことはできないのではないかと思い悩んでいました。
しかし、北朝鮮を旅行中に当局に拘束されて死亡した米国人大学生オット・ワームビアさんの事件に対して、ワシントン連邦地方裁判所が北朝鮮政府に約550億円の支払いを命じる判決を言い渡しました。このことから、北朝鮮政府を相手とすれは、日本の司法でも時効の壁を突破できるのではないかと希望を持ったことなどがきっかけで、提訴に向けた議論を開始しました。
Q.弁論期日に北朝鮮政府が出廷しない場合、反論がないということは原告の主張がそのまま認められるのか?
A.
原告の主張がそのまま認められるわけではありません。そこで、弁護団は、帰国事業に関する事実関係の証拠を多く提出することによって、原告主張通りの認定がなされるよう努力しています。弁護団は、2021年10月14日の口頭弁論で、多くの書証を提出し、また原告や専門家証人の証言によって、十分な立証活動を行います。
リターン
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