
支援総額
目標金額 4,000,000円
- 支援者
- 290人
- 募集終了日
- 2022年10月26日
株式会社松竹映像センターさんでの音修復作業見学
お早うございます。松竹大谷図書館の武藤です。
『鏡獅子』の4Kデジタル修復の作業もいよいよ完成に近づき、今週金曜日12月2日には第一回目の初号試写を開催致します。5万円をご支援下さった方で、2日をご希望の方には先週ご招待状を発送いたしましたので、もしお手元に届いていないようでしたらご連絡下さい。
■電話■
松竹大谷図書館 ℡03-5550-1694(月-金[平日] 受付:10時より17時)
株式会社松竹映像センターのあるお台場ガーデンシティビル
11月2日の新着情報でご報告したように、株式会社東京現像所さんでスキャンして頂き出来上がった音声のデジタルデータも株式会社松竹映像センターさんに納品され、音声データの修復が行われました。過日、東京お台場にある株式会社松竹映像センターさんにお邪魔して、音修復の作業を見学させて頂きましたので、ご報告致します。
今回の音修復の監修は、過去に『東京物語』などの小津安二郎監督作品ほか、数々の旧作のデジタル修復版を手がけ、またシネマ歌舞伎の5.1ch整音を立ち上げ当初から担当されている、松竹映像センターの清水和法氏にご担当頂きました。
松竹映像センターの清水和法氏
今回4Kデジタル修復を進めている『鏡獅子』は昭和10(1935)年に歌舞伎座で撮影されましたが、映像に映る長唄囃子連中の演奏がそのまま同時録音されたトーキー映画です。舞踊部分の幕開き、舞台正面の山台に長唄、三味線、笛、小鼓、大鼓、太鼓の長唄囃子連中が並んでいて、演奏が始まるのが印象的です。

当時のマイクはダイナミックマイクで、近くに音源がないと音が拾えないため、幕開きの長唄は少し音が遠く聞こえます。マイクが映ってしまうため近くに置けず、離れた場所に置いたためと考えられます。六代目尾上菊五郎の舞踊の撮影が始まると、映像には菊五郎だけが映るよう、長唄囃子連中は「キャメラへ入らぬ上手桟敷へ移って貰いました」と『小津安二郎全発言』(1987年、田中眞澄編集、泰流社)収録の「トーキー鏡獅子撮影余話(「都新聞」昭和十年七月二日)」にあります。今度はマイクを近くに置けたようで、幕開きに比べて音が近く聞こえます。こうした当時のマイクの特性も考慮して音の修正を考えます。
清水氏によると、これまで数多くの音修復を手掛けてこられたなかでも、このフィルムに記録されていた『鏡獅子』の音は、予想以上に良い音が残っていたという印象を受けたそうで、当時一流の技術で撮影(録音)されたことがわかります。

映画のクレジットにも、四世松永和風、初世柏伊三郎、三世望月朴清、九世望月太左衛門と、当時の一流の演奏家の名前が残されています。
清水氏によると、歌舞伎の舞台の音響は、現在の舞台を撮影して映画化するシネマ歌舞伎でも、大鼓と笛の音が目立って大きくなりがちだそうです。特に今回、長唄の詞章がきちんと聞き取れるように、唄の音を取り出そうとすると、大鼓と笛の音も大きくなってしまう点が難しかったという事でした。また三味線については、ひとつの音の中に撥音(胴を叩く音)と音色(弦を弾く音)が一緒に入っていて、大きく聞こえる撥音によって繊細な弦の音色がかき消されてしまいがちなので、それを調整するのはなかなか難しいのだそうです。また、撥音自体も三味線の演奏の大事な要素ですが、打楽器の音に紛れがちで、これだけ性質の違う楽器や唄が同時に鳴っているなかで、それぞれの音や唄が特色をもって独立して聞こえるように、そして全体としてもひとつの演奏として調和するように考慮して修復を行ったと語って下さいました。
さて、音声のデジタル修復の場合、手作業による細かい修復を行う前に、まず フィルターでノイズを取り除いて、効率的に作業をしやすくします。
【1】低音のフィルターをかける
低音をフィルターにより自動的にカットする事で、撮影機のモーターの振動音や電源のノイズなど、撮影時に入ってしまった音を抑えます。長唄の笛や大鼓など高域で歪んで聞こえる音も実は低音の要素を含んでいるので、低音のフィルターをかける事である程度抑える事が出来ます。
【2】当時の映画館の音響特性を考えたフィルターをかける
『鏡獅子』が撮影された当時のアンプやスピーカーなど、当時の映画館ではどのような再生環境で音を聞いていたのかを考慮して、その音に近づけるためのフィルターを掛けます。
フィルターをかけるまえは、全体にシャーという耳障りな音が入っており、長唄の音も埋もれて聞き取りにくい状態です。そこに、まず高域のフィルターをかけ、さらに低域のフィルターをかけます。この状態の音が、映写の時の聞こえる音だそうで、当時の映画館のスピーカーの特性を再現したフィルターだそうです。修正を加えていないオリジナルデータの状態のままだと全部聞こえてしまうので、フィルターを最初に入れないとまともな音にならないそうです。高域と低域で余分な音が出てくると、中の音をマスキングしてしまうので、そちらに耳がいってしまって大事な音が聞こえなくなってしまいます。そこでフィルターをかけて、中の音に集中出来るようにするのです。
このフィルターをかけないまま掃除をしていくと、ものすごい手作業量になってしまうそうです。(モノラルフィルム上映時は劇場でフィルターを入れて上映しますが、デジタル上映時にはフィルターは入らないので、プログラムにフィルターを入れておく必要があるという意味もあるそうです。)
【3】ノイズを除去する
映画が完成した後から入った音はノイズと判断して消していきます。カットのつなぎ目で発生する音は除去します。ネガフィルムをつなぐとどうしてもブツ音が発生します。
ノイズであるのか必要な音なのかは作業者が判断するそうです。何が原因で発生した音なのか、過去の知見により判断するそうです。制作当時の音は勝手には変えられません。ノイズを除きすぎて、演奏の勢いが失われないようにすることも重要だそうです。フィルムの走行音も完全に消してしまうと映画らしいフィルムの質感が伝わらなくなってしまいます。当時の雰囲気を大事にして、どこまでノイズを残すか、名人の腕の見せ所です。このあたりは画修復の作業でも同様で、キレイに修復し過ぎずに敢えて映像の少しざらざらとした粒子感を残してフィルムで撮影された映像の雰囲気を残す、というお話とよく似ていました。
清水氏は撮影現場でスタッフとして録音に携わっていた方なので、フィルム撮影で発生する音についても実際に現場で聞いておられます。その経験が今、フィルムの音声のデジタル修復に生かされているそうです。
【4】音のひずみを消す
フィルムは複製を重ねる度に、音声も劣化してひずんでいき、ノイズや音のひずみも積み重なってしまいます。ひずみを修正していく作業は、余分な音を取り除いていく作業です。必要な部分を消してしまっている可能性もありますが、どこまで消してバランスを取っていくかは作業する人が判断するしかないそうです。清水氏は、ノイズや音がひずんでいる部分を取り除く作業は、発掘作業のように必要な音を取り出していく作業である、とおっしゃっていました。また欠落してしまった部分は足りない部分に似た音を移植して修復するそうで、デジタル修復技術が進み、音を画像で目視して修復する方法が確立してきたことで、まさに画修復の歪み補正やキズ消しの作業と似ている所があります。こうした名人による職人技にかかると、音がどんどん明瞭になっていきます。
【5】シアター環境で全体調製をする
映画館と同じ環境で音を再生して、最終的な音の調整を行います。
修復が終わった音声で『鏡獅子』を最初から通して拝見しました。笛、小鼓、大鼓、太鼓の音がちゃんとそれぞれ聞こえてきて、DVDでも聞き取りにくかった長唄の詞章もはっきりと聞き取る事が出来ました。また、三味線の撥や糸の音を感じることも出来て、まるで劇場で聞いているような臨場感があり、音に立体感と奥行が感じられました。今まで漠然と伴奏のように聞こえていた音が、実は一流の奏者による名演奏であるとはっきり感じることができて、とても感動してしまいました。
菊五郎の舞踊が始まると、動きが出す音が明確に聞こえ、手獅子の出す「カクカク」という音が、映像に臨場感を与えていました。
清水氏も絶賛の、当時の名人達による演奏を、今回の4Kデジタル修復版でぜひ皆様にも楽しんで頂きたいと思います!
(左より)清水和法氏 武藤
9月8日の新着情報で、株式会社松竹映像センターさんの沿革と業務について、社員の方にご寄稿頂きご紹介しています。こちらもぜひご覧ください。
https://readyfor.jp/projects/ootanitoshokan11/announcements/231143
次はいよいよ画修復、そしてグレーディングの見学レポートを掲載しますので、どうぞお楽しみに!
リターン
3,000円+システム利用料
活動報告+サンクスメール+HPにお名前掲載
■サンクスメール
■松竹大谷図書館HPへのお名前掲載(ご希望の方のみ)
■報告書(2023年4月末に送信予定)
- 申込数
- 63
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2023年4月
5,000円+システム利用料

松竹大谷図書館オリジナル文庫本カバー『鏡獅子』完成台本表紙デザイン
3,000円のリターンコース内容に加え、
■松竹大谷図書館オリジナル文庫本カバー
当プロジェクト限定!
当館所蔵『鏡獅子』完成台本(昭和25年編集版)表紙デザイン
- 申込数
- 95
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2023年4月
3,000円+システム利用料
活動報告+サンクスメール+HPにお名前掲載
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松竹大谷図書館オリジナル文庫本カバー『鏡獅子』完成台本表紙デザイン
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