
支援総額
目標金額 2,500,000円
- 支援者
- 196人
- 募集終了日
- 2023年10月25日
早稲田大学教授・児玉竜一先生より『松竹座ニュース』の解説をいただきました
お早うございます。松竹大谷図書館の武藤です。
今回デジタル化を行う『松竹座ニュース』とは、そして『松竹座ニュース』が発行されていた時代とはどのような時代だったのでしょう。
大阪松竹座を取り巻く時代や文化について、早稲田大学教授で、演劇博物館館長でいらっしゃる児玉竜一先生にご解説をいただきました。
ぜひご覧ください!
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松竹座は、大正12年(1923年)に開場した。今年でちょうど100年を迎える。
大阪が誇る劇場街であった道頓堀には、五座の櫓とよばれる劇場があった。中座、角座、弁天座、朝日座、浪花座。松竹座は、いわば六番目の櫓をあげる形で開場した。「道頓堀の凱旋門」と呼ばれた、壮麗な正面ファサードをトレードマークとして、映画館として誕生したが、同時にレビューの舞台となった。江戸時代以来の劇場街に、新しい時代の風を送り込む存在になったのである。
大正12年というのは、大阪にとって重要な年になった。9月1日に起きた関東大震災によって、東京が事実上壊滅してしまったため、多くの人材が大阪に避難する形で移住したのである。東京復興とともに帰った面々もいれば、谷崎潤一郎のように関西に腰を据えてしまった面々もいる。この予期せぬ出来事によって、大正終盤から昭和初期は、大阪の人口と文化的なポテンシャルが、東京を上回って伸び続けた時期にあたる。いわゆる「大大阪」の時代である。
『松竹座ニュース』10-4号(1928年1月20日)より
『松竹座ニュース』10-6号(1928年2月3日)より
その社会的環境は、歌舞音曲や芸能の世界にも大きく影響する。「赤い灯青い灯」をうたう「道頓堀行進曲」に代表されるような、いわゆる「道頓堀ジャズ」が隆盛を迎えるのも、この時期である。谷崎潤一郎が、道頓堀弁天座で興行している文楽にのめりこんでいくのも、この時期である。小林秀雄が道頓堀を歩いている時に、いきなり頭の中にモーツァルトが鳴り響いたと、呑気なことをいっているのも、この時期の出来事である。
松竹座が道頓堀に根づいていったのは、まさに同じ時期にあたる。
松竹大谷図書館には、この松竹座に関わる資料が、大量に所蔵されている。これは、劇場を舞台とするデザイン史とでもいうべきものが構想されるとしたら、最重要資料のひとつに位置づけられるだろう。「構想されるとしたら」などと他人事のように記したが、ミュシャやロートレックをはじめとして、海外のポスターの歴史はすでにいくつもの蓄積がある。ところが日本の劇場ポスターや、パンフレットのデザインは、古書価はかなり上がってきているものの、なかなか考証や鑑賞の土俵にあがってこない。雑誌『苦楽』や『女性』で知られるプラトン社が手がける『松竹座ニュース』や、『松竹座グラヒック』の、豊かなビジュアルと、時代にさきがけたデザイン性は、これを見ずして1920年代を語るなかれというべきもので、これが松竹大谷図書館からデジタル画像で公開されることになれば、その文化的な貢献度は計り知れない。
映画館プログラムとしての「SHOCHIKUZA NEWS」も、大阪を語る視角があまりにも画一的な昨今、ぜひともそこに活を入れる資料となることを期待したい。
ちなみに、松竹座を本拠地としていたのが、大阪松竹歌劇団、略して「OSK」である。
春のおどり さくら音頭 プログラム 配役に三笠静子(笠置シヅ子)の名前が見られる
「OSK」から巣立った数知れぬ多くのスターの中で、今年2023年に脚光を浴びているのが笠置シヅ子(在籍当時の芸名は「三笠静子」)。10月から始まったNHK朝の連続テレビ小説「ブギウギ」は、笠置シヅ子をモデルとした主人公の一代記である。当然、歌劇団が登場するのだが、そこはNHK、「OSK」と実在する歌劇団にするわけにはいかないらしい。そこで、というわけか、梅丸少女歌劇団という名前になった主人公の歌劇団の略称は「ŪSK」という。梅丸なので、ちゃんと「ŪSK」とUの上に長音符号をつけると、遠目には「OSK」にみえます、という配慮があるらしい。大人の事情にも、だんだんとフレキシビリティが出てきたのはうれしい。
『OSK日本歌劇団100周年誌 桜咲く国~OSKレビューの100年~』
ともあれ、「東京ブギウギ」だけではない、笠置シヅ子の楽曲の豊かさが、これから半年、少しでも多くの人に知られるようなら何よりであるし、その活躍の母胎となったのが、松竹座の大阪松竹歌劇団であることが、さらに知られるようになることを期待したい。すでに輪島裕介『昭和ブギウギ 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲』(NHK出版新書)のような、うってつけの入門書も出ているが、なによりご本家OSKが、『OSK日本歌劇団100周年誌 桜咲く国~OSKレビューの100年~』という、すばらしい百年史を刊行している。膨大な資料収集、とりわけ写真の豊富さと多彩さで、ただただ編集班の情熱に圧倒される。370頁超で定価5000円、ぜひご関心ある向きは一家に一冊揃えていただきたい。
OSKから世界にはばたいた、もうおひとりにも触れておきたい。
「笠置さんは、怖い先輩でした」。後輩である京マチ子さんの口から、そう伺ったことがある。早稲田の演劇博物館で京マチ子さんから資料をご寄贈いただいた上にご寄付まで頂戴したので、お恐れ多くも何度か食事の席をご一緒した。そこで懐かしいOSK時代の思い出を伺うことができたのである。
「私、誰よりも早く出てお稽古しました。好きなんだから、苦にもなりませんよ、私、学校もお勉強はできなかったけど、登校は誰よりも早くて門が開くのを待ってたのね。松竹座でも、門が開く前に、守衛さんのところから入って、誰もいないお稽古場に行って、私が一通りお稽古し終わったところへ一番乗りの人が来るのが毎日でしたね。好きだったんですよ」「映画に入るときは、まだ踊りに未練があったから、とってもイヤだったの。踊りが好きでOSKに入ったわけですからね。歌が歌えないじゃないの、って自分で自分に言うんだけど、私ほんとうにミュージカルがやりたかったのね」
本当に本当に、踊りが好きでたまらない、だからこそOSKには、強い強い思い入れがおありだった。
日本映画の黄金時代にグランプリ女優とうたわれて、日本人離れしたスタイルを誇りながら、同時に海外からは日本女性の典型のようにみなされた京マチ子さん。その原点が、OSKのモダニズムにあったことも、もっと世間に知られてほしいと願う。
来年2024年は、京マチ子生誕100年にあたる。
児玉竜一(早稲田大学教授)
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リターン
3,000円+システム利用料
活動報告+サンクスメール+HPにお名前掲載
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■松竹大谷図書館HPへのお名前掲載(ご希望の方のみ)
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