日本では、年間5万人近くが死亡している胃がん。一方韓国では国の予防医療が成功

 

 

——日本が地震大国であるという認識はあっても、胃がん大国という異名をも持っていて、そのことで海外から煙たがられている…ということを、ご存知でしょうか。

 

日本人の胃がん発症率は欧米諸国の約5倍にものぼり、今も年間4万9千人の方々が命を落としています。

 

どうして、こんなにも衛生的で医療が発達した国なのに、胃がんで亡くなる方が後を絶たないのか。

 

10年以上にわたり胃がん予防を研究し、日本ヘリコバクター学会の幹事でもある認定医・間部克裕医師に、堀江貴文がお話を聞きました。場所は羽田空港に隣接したレストラン。

 

そこで聞いたのは、かなり信じがたい現状。まずは前編を、お伝えします。

 

(文章 / 聞き手・塩谷舞)

 

 

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胃がんの発生率は、日本と韓国に偏っている

 

堀江:欧米では、胃がん発生率は低いんですよね。どうしてですか?

 

間部:はい。胃がんの原因の99%を占めているのはピロリ菌で、胃の中に存在する細菌です。これは日本人にも、欧米人の胃の中にも発生しますが、両者ではピロリ菌の特性が全然違うんです。

 

 

堀江:というと?

 

間部:欧米人の胃の中にピロリ菌がいたとしても、起こす病気は十二指腸潰瘍が多いので、潰瘍になってから除菌しても遅くないんです。それに対して、日本人と韓国人の胃の中にピロリ菌がいる場合は、高い確率で胃がんを作るんですよ。

 

堀江:そうなんですか。東南アジアは?

 

間部:東南アジアも、胃がんが発生することはあるのですが、確率としては低いですね。残念ながら、ここまで胃がんの発生率が高いのは、日本と韓国に偏っている。

 

でも日本の中でも、発生率がものすごく低い場所があるんです。

 

堀江:どこでしょう?

 

間部:沖縄です。下のグラフは胃がんの死亡者数を都道府県別に比べたものですが、ダントツで少ないでしょう。

 

堀江:本当だ。

 

 

間部:かつては「沖縄は塩分摂取が少ないし、ストレスも感じにくいから…」なんて言われていたんですけど、違うんです。沖縄の方々の胃の中にいるピロリ菌は、胃がん発生の毒性が少ない、欧米型などのピロリ菌が多かったんです。

 

堀江:なるほど。

 

間部:ピロリ菌は人の胃にしか感染しない細菌です。ですから、胃がんリスクの高い菌が多く感染している地域で感染した人は、胃がんリスクが高くなってしまうんです。

 

堀江:たとえば、どこでしょう?

 

 

間部:元をたどると、朝鮮半島を渡って日本に住み着いた人たちの胃の中にいるピロリ菌が、一番悪いんです。世界的に見ても、樺太あたりの東シベリアと、朝鮮半島、中国の東側、そして日本。そのあたりで胃がんの発生率が、ものすごく高い。

 

堀江:ってことは、ピロリ菌の特性によって、僕らの先祖がどこから来たのかわかるかもしれない、ってことですか?

 

間部:そうなんです。朝鮮半島からの移動とピロリ菌の分布は、ぴったりと合うんですよ。ですが、今はみんな飛行機で世界中を移動していますし、世界規模での交流、定住がある。そこで、どんどん混ざってきてしまっています。

 

 

堀江:それ、ピロリ菌に限って言えば、まずいんじゃないですか?

 

間部:そう。だから欧米の専門家からは「毒性の強いピロリ菌をばら撒かないでくれ!」と冗談交じりに言われるぐらいです。

 

——横から失礼します。それってつまり、海外から日本が危険視されているんですか?

 

間部:そうですね、「早く、日本人の胃の中にいるピロリ菌を全滅させてくれ!」「何をやってるんだ日本は!」と。あくまで冗談交じりでですがね。これだけ胃がん発生のリスクが高いピロリ菌感染を撲滅しないで何しているんだ、という彼らの思いは、話をする度に伝わってきます。

 

——じゃあ、たとえば。ピロリ菌を保有している日本人女性が渡米して、アメリカ人と結婚して子どもを産んだら、悪いピロリ菌を広めちゃうっていうこともあるんですか?

 

間部:ま、極端な話しですが、あり得ない話しではないですね。日本でも、年々ピロリ菌に感染している若者は減ってはきましたが、5〜10%いる若年層の感染者の多くは、母親から感染してしまっているんですよ。

 

——知らなかったです。でも、その話だと韓国の方も同じように胃がんの危険性が高いということですよね。

 

間部:そうですね。でも、今は変わってきているんです。

 

韓国の胃がんの検診受診率は10年以上前は日本と同じくらいだったのですが、最近は50%と非常に高くなってきた。早期発見をして、胃がん死亡者を減らすことに成功しているんです。ちなみに、日本人の胃がん検診受診率はまだ10%くらい……。

 

堀江:うーん。

 

 

検査を受けない人には、医療費を高くすることで早期発見。早期発見することで、結局医療費が大幅に削減される

 

 

——どうして韓国の方は熱心に検診を受けているのに、日本ではそうならないのでしょう?

 

間部:韓国は「内視鏡でも、バリウムでも、どちらでもいいので2年に1度は検査を受けてください。その代わり検査を受けなかったら、胃がんの医療費を高くしますからね」という仕組みにしたところ、受診率が大幅に上がったようなんです。一方日本ではバリウムだ、内視鏡だという議論が長く続き、今年になってやっと内視鏡も胃がん検診として認められました。

 

堀江:検査しない人には医療費を高くするってやつ、めちゃくちゃ効果ある施策なのに、日本で全くやってないでしょう。ドイツでは年に2回歯石をクリーニングしないと、保険が効かなくなるとも聞きました。

 

間部:そうですね。もう、そうしていかないと限られた医療費がもたない、ということも大事な視点です。

 

 

——韓国でピロリ菌の検査が上手くいったのは、政府と医療機関がちゃんと連携してるってことですか?

 

間部:韓国の場合は、政府が管轄してる保険が一個しかないんです。日本は国民健康保険の他にも、社会保険ってバラバラでしょう。だから一元管理が難しいんです。

 

 

堀江:僕はもともとIT業界だったから、関東IT健康保険組合に入ってましたね。IT企業の人限定の保険で、つまり若い人が多いから、病院にかかる人が少なくって保険料も安い。結構福利厚生も良いな、と(笑)。でも、そうやってバラバラになってるのが、良くないと。

 

間部:健康診断も、各保険に委ねてますからね。だから日本は、住民検診はわかっても職域検診がどれくらいなされているのか……という実態がわからず、国民の検診受診率がわからない。そして、がんの罹患率も、わからないんです。

 

そんな恥ずかしい国って、日本くらいですよ。台湾も、韓国も、しっかり国が管理できているんです。

 

 

本当は国のプロジェクトとしてやるべき、という声

 

——現在堀江さんが主体になって進めているこの「予防医療普及委員会」のプロジェクトですが、公開したら「それって国がやれば良いんじゃない?」「なんでホリエモンが?」という声がたくさんTwitterなどで出ていたんです。

 

間部:残念ながら、国はこれまでも……たとえば薬害エイズにしてもそうでしたが、先導を切って動かしてきてはいないですよね。世界保健機構が2014年に胃がん対策として、ピロリ菌検査と除菌を進めるよう勧告しているのですが。

 

 

堀江:この「予防医療普及委員会」は最初に厚生労働省に相談したんですよ。それは最初別件で…まぁ、刑務所のアレで、話をしていたのですが……

 

間部:あぁ、そんなこともありましたね……(笑)。

 

堀江:それがきっかけですが、予防医療の担当課長も紹介してもらった。でもリスクの話ばかりになって、なかなか進まない。

 

だからまずは個人的に有志を募って、クラウドファンディングで盛り上げていこう、という途中なのですが。もっと本格的にやるには、「予防医療を推進する議員に投票します」って政治活動とかにするのが一番効果的なんじゃないか、とも思っています。

 

間部:我々も何とか国に動いてもらえるように、努力を続けてます。

 

堀江:うーん。政治家にとって、一番強いのは有権者だから。有権者が明確に「予防医療を推進する政治家じゃないとダメ」と選ぶことが出来たら、日本も変わっていくと思うんですね。そういう声を集めるWebサイトも作りたい。

 

——堀江さんは政治家にはならないんですか?

 

堀江:もともとは、選挙に立候補してたし、やるつもりでしたけどね。でもあの時に政治家の方々と親しくなって、その世界を知っていくと、多分僕は政治家になるよりもこういう活動をしていた方が、結果として政治的課題を速く解決出来るんじゃないか、と思ったんです。

 

 

間部:なるほど。

 

話が戻りますが、アメリカでは国ではなく保険会社が「大腸がんの検査を受けないと、保険料を釣り上げますよ」といって、大腸がんの死亡率が随分下がったんです。

 

韓国では国をあげて胃がんの検査率が向上しているし、アメリカでは民間の競争原理によって検査率向上を果たしている。方法はどちらでも良いのですが、日本はどちらにも転ばず、中途半端なんです……。

 

 

ピンクリボンに匹敵する、胃がん予防のプロジェクトを

 

——日本で成功している、検査の例とかってあるんでしょうか?

 

間部:いやぁ、少ないですよ。欧米だと、主な死亡原因の病気だと50〜80%が検診を受けることが多いけど、日本は多いもので30〜40%くらい。女性の乳がん検診や子宮がん検診は少しずつですが、確実に受診率が上がりつつありますね。

 

堀江:それは、ピンクリボン運動の成果ですね。あれは成功していると思います。

 

http://www.pinkribbonfestival.jp/

 

 

間部:そうですね。札幌では会社や市の両方をあわせるともっと高い受診率でした。年代によっては60%以上でした。

 

堀江:僕は、この予防医療普及委員会で、ピンクリボン運動に匹敵するものをやりたいんですよ。色々と予防するべき病気はあると思いますが、まずは最も簡単な方法で見つかる胃がんを、日本からなくしたい。それが出来たら、すごいことじゃないですか。

 

 

間部:それは同感ですね。僕らは胃がんを防ぐ活動をしていますが、これまでお話した現状はとても重く受け止めている。だって、アメリカには大腸がん、韓国には胃がんの検診の普及率で負けていて。日本の医者は、日々それらの国に医療技術を教えに行っているぐらいレベルが高く、内視鏡機器も殆ど日本製だというのに。

 

堀江:政策の問題なんですかね。

 

 

間部:そうですね。でも、「神の手」のようなものを、医療側もマスコミも重要視する傾向がありますよね。もちろん難しいオペを成功させる技術やその普及は大切です。ですがより大きな目で見れば、もっと前の病気になる前の段階で、簡単な検査で早期発見を促すこと。それを、国として普及させることが重要なんです。

 

堀江:それって、工業製品の世界とも似てますね。ものづくり大国ニッポンだ!なんて言って、職人の技ばかりがすごく注目されるんだけど、全体的には衰退している。

 

 

間部:職人技はそれはそれで素晴らしいのですが、やっぱり、国家規模で出来ることをしっかりやらないと。

 

堀江:あとは、ゼロリスク信仰が強いというのも、影響してますよね。ピロリ菌を除去するにしても、そうすると逆流性食道炎が発症するから……と躊躇する方も多い。リスクがあるから、除去出来ないという意見があります。

 

間部:そうですね。ピロリ菌を除去すると、逆流性食道炎になる人もいます。でも統計学的に有意になる程ではなく、良くなる人も変わらない人も多いんです。その先の胃酸逆流によるバレット腺癌の増加を懸念する人も居ますが、ピロリ菌を除菌することによって増加するわけではありません。少なくとも死亡者数でいうと、圧倒的に胃がんの方が多いんです。

 

ただ、ピロリ菌を取り除いたからといって、胃がんにならない訳ではないので油断は禁物なのですが。それは検査を受ける年齢にも関わってくるんです。

 

 

<次回に続きます>

 

 

——あなたの胃の中にピロリ菌がいるかどうかは、たった数千円の検査キットで調べることが出来るんです。

 

現在、予防医療普及委員会では、4月末まで開催しているクラウドファンディングのリターンとしてピロリ菌検査キットを準備しています。この機会に、ご家族や会社のみなさんでぜひ、一緒に検査してみてください。

 

 

まずは知ることから。病気になってから後悔するのではなく、最初の段階で気が付けるように。予防医療の普及に、ぜひご協力ください。

 

 

・胃がんの原因は99%ピロリ菌だった。 皆で検査をして予防しよう。(クラウドファンディングへのご支援はこちら)

 

 

 

 

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