戦没学生の音楽作品よ、甦れ!いま戦争の記憶を語り継ぐ

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寄付総額

2,112,000

目標金額 1,500,000円

寄付者
127人
募集終了日
2020年6月12日

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2022年07月30日 11:00

草川宏さんの父・草川信さんの伝記出版

山内喜美子著「奇跡の童謡(うた)《夕焼小焼》の作曲者を訪ねて」発売

 

 暑い夏を迎えていますが、皆さまいかがお過ごしでいらっしゃいますでしょうか。東京藝術大学「戦没学生のメッセージ」プロジェクトからのお知らせです。「戦没学生のメッセージ」プロジェクトでは、これまで鬼頭恭一さん、葛原守さん、草川宏さん、村野弘二さんといった東京音楽学校で学んだ、4名の戦没学生の遺した譜面を調査・発掘し、実際の音としてご紹介してきました。

 

 彼らが育った家庭環境は、当然のことながらさまざまですが、4人の中で草川宏さんは唯一音楽家の家庭に生まれ育っています。彼の父親の草川信さんは、東京音楽学校甲種師範科の卒業で、今も多くの人々に歌い継がれている《揺籃のうた》や《夕焼小焼》などの童謡の作曲者です。また信さんの二人の兄、草川宣雄さんと友忠さんも東京音楽学校で学び、宣雄さんはオルガニスト、友忠さんはヴァイオリニストとして活躍しました。さらに宣雄さんの次男で宏さんの従兄にあたる草川啓さんも作曲家でした。このように草川家の家系には、音楽的才能を持つ人物が多く見られます。

 

 そんな草川信さんの伝記とも呼べる本が、最近発売されました。東京藝術大学音楽学部楽理科を卒業した山内喜美子さんが書いた『奇跡の童謡(うた)《夕焼小焼》の作曲者を訪ねて』(大空出版)がそれです。

◆山内喜美子著『奇跡の童謡(うた)《夕焼小焼》の作曲者を訪ねて』 大空出版 定価1,800円+税

 

山内喜美子著『奇跡の童謡 《夕焼小焼》の作曲者を訪ねて』(大空出版)

 

 著者の山内さんは、本プロジェクトの支援者のひとりでもあり、戦没のコンサートには欠かさず顔を見せていますし、私や橋本先生も度々取材を受けました。本書は明治時代に生まれ、昭和の戦争の時代を生き抜いた一人の作曲家・草川信(1893~1948)さんの生涯を、童謡の名曲《夕焼小焼》を手掛かりに丁寧にたどっています。全体はプロローグとエピローグに挟まれた全5章で構成されていますが、その第4章が「戦禍の草川家」というタイトルで、太平洋戦争中の草川家の様子がかなり詳しく書かれています。そしてこの章のかなりの部分は、息子の宏さんのことに割かれているのです。

 

 草川信さんには、長男・宏(1921~1945)、次男・誠(1925~2020)、長女・竹(1931~2014)の3人のお子さんがいらっしゃいました。草川家では父の信さんがヴァイオリンを弾き、子どもたちがピアノや歌を歌うなど、家族で合奏を楽しむことがあったようです。特に長男の宏さんの指導には熱が入ったということで、この本を読むと、信さんが宏さんに自分の後継者として、いかに大きな期待を寄せていたかがよくわかります。宏さんが一浪の末、東京音楽学校への入学を果たしたとき、父はどんなにか喜んだことでしょう。

 

 ところがその宏さんは、研究科在籍中の昭和19年、召集され前線に送られ、消息不明になってしまいます。昭和20年、終戦を迎えても息子が戻らないばかりか、生死さえ分からない状態に、父の信さんが感じた焦燥感は想像を絶するに余りあります。もともと肺炎を病んだことのある信さんは、そうした心労がたたったのか、激しい肋膜痛に襲われ、肋骨を4本切除する手術まで受けることになります。

 

 結局、宏さんがフィリピンで戦死したとの知らせが草川家にもたらされたのは、終戦から3年経った昭和23年5月になってからのことでした。遺骨(遺骨といっても骨ではなく、名前が書かれたただの木片1枚)を引き取りに行った弟の誠さんは、当時すでに体調を崩して入院していた父に、それ以上のショックを与えないために、宏さんが戦死したことを伏せておくことにしたそうです。しかし信さんは息子の戦死について、実際にはうすうす気がついていたようです。そして信さんはそのわずか4か月後、55歳の若さで息を引き取りました。

 

 この本には、そうした草川親子の細やかな情愛だけでなく、草川宏さんの東京音楽学校での日常や心情があざやかに描かれています。それは宏さんが残した日記の記述に基づくもので、ここまで彼の日記が読み込まれて紹介されるのは初めてのことです。戦時下での学生生活を知る上でも、是非手に取って読んでみることをお勧めいたします。

 

東京藝術大学名誉教授 大石 泰

 

 

◆著者略歴

山内喜美子

1962年、福岡県北九州市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、85年、MRT宮崎放送にアナウンサーとして入社。88年10月、同社退社後、『サンデー毎日』記者を経て、フリーに。91年、『告知せず』(文藝春秋)で作家デビュー。TBSでドラマ化され話題に。他に『海を渡るいのち』(講談社)、『患者の言い分』(時事通信社)など著書多数。2006年、『世界で一番売れている薬』(小学館)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。また、09年には東京藝術大学音楽学部楽理科に入学。13年卒業後、文筆活動の傍ら演奏や司会、朗読、ナレーションも務める。

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「戦没学生のメッセージ」プロジェクト応援コース

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「里帰りコンサートin旧奏楽堂」応援コース①(コンサート不参加)

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