レーベンでやってきたこと　誰かを待っている犬

　夏の夕方に、付近をさまよい歩いていたところ保護され、レーベンに来たメス犬のフラ。身体を恐る恐る洗って室内に入れ、静かな環境で休んでもらうことになりました。

　当初は柔らかくふやかしたご飯を与えると食べることもでき、相変わらず穏やかな様子。試しに調子の良さそうな時に散歩に誘うと、あまり経験がないのか初めは戸惑っていましたが、歩くこともできました。

それにしても、背中の骨ばっていること。余命宣告までされているので、無理はできません。

後ろ足の関節が固まって伸びてしまっているよう。

　それでも、入りなと言われたお家の中で、静かに座ってくれます。撫でても抱っこしても嫌がらない。可愛い可愛い女の子。

　窓際に居る時は、外の様子を眺めています。あなたがお迎えを待っているのはどんな飼い主なの？どうしてお家を出て歩いていたの？

　だんだん肌寒い日が増えていってヒーターを使う頃になっても、この子について何の情報も届きませんでした。日にちだけが過ぎていきます。余命と言われた月数を、気がつけば超えていました。

　自分で水を飲みに室内を歩いて行っていたフラは、近くに持ってきて飲ませてもらわなければ飲食できなくなっていきました。浮き出た骨のところの皮膚が傷んでこないよう、姿勢を1日に何度も変更しました。敷物を工夫して、少しでも快適に過ごせるよう考えました。

　ホームケアとして皮下輸液をした方が良いということになり、ボランティア達は教わりながら覚えました。組み立て式の酸素室を用意し、その使い方も申し送りました。フラの以前にも、老犬の介護をしたことがあったので、道具は揃っています。オムツをあて、トイレは交換で済ませるようになりました。

　一緒に写っている良の母犬、浜。まさかこの後、2人ともお空に上がるとは思わず。

　フラ、あなたの今日はしあわせですか？教えてもらいたいことがたくさんある。フラの周りには、いつもボラの輪がありました。

　年の暮れが近い晴れた日、元気そうなフラを抱っこして外に出て、久しぶりに散歩に誘いました。本当にその日は、地面に降ろすとゆっくり立って、気持ちの赴く方に歩いたりできたのです。草のにおい、土の感触を確かめ、時々カメラを構えたこっちを向いて「写真、綺麗に撮ってね」とでも言うかのような目線をくれる。暖かいその日の風に優しく吹かれるかのように、あっちこっちをゆっくり回っていました。元気になってきたのかもしれない。フラはやはり、誰かを探しているかのように見えました。会いたい人がいるように。

　数日後、フラは静かに永い眠りにつきました。夢で会えているといいのですが。私達は、フラに出会えて本当にしあわせな日々をもらうことができました。でもフラにとっては、どんな時間だったのだろう、誰に会いたかったのか、今も教えて欲しいのです。こんな最期の大切な時間に、一緒に過ごすのが私達でよかったのか。