7軒の農家さんの集まりから日本を代表する6次産業企業へ

 

2018年6月末日、私はお中元時期でご多忙な早和時果樹園さんを訪問し、専務のマークン(以下「マー」と表記)、常務の大浦(以下「大浦」と表記)さんにお時間を割いて頂き、3時間に及ぶインタビューをさせていただきました。
第4弾の今回は、商品開発や販売について。本物の味を知り尽くした農家さんが経営する早和果樹園さんの製品が美味しいのは当たり前。そしてコンセプトがとてもユニークです。どのようにして独創的な製品が生まれるのでしょうか。お二人のインタビューを通して生々しくお伝えしていきます!

株式会社早和果樹園 取締役専務のマークン(左)と取締役常務の大浦さん(右)

 

独特の開発手法:「本物を知る農家のこだわり」と「早和ラッキー」!?

 

乙井  4名の若いメンバーの強味を活かす組織運営により、業務の効率化を推進し、現在の生産・加工・販売までを手がける6次化を果たされたのでしたね。

 

大浦  仕事(営業)で海外まで行こうなんて、それまでは考えたこともありませんでした。当初はどこを攻めていこうってヴィジョンもなかったんです。年に数回、幕張や大阪で商談会や食品の展示会とかがありまして、そこで出会った業者さんに電話とメールで「どうですか?」って営業してました。

 

商談会に出るようになってメーカーという立場になったので、新商品を毎年1品出すという目標を立てました。水を加えていない美味しいジュースだけで作った果汁91%のゼリー『味一ジュレ』ですとか、そういうのを出すと反応が凄く良かったです。例えば、当初から高級スーパーさんが目を付けてくれまして、ジュースに始まってゼリーを作ったり、ゼリーの中に丸みかんを入れたり(『味一ジュレてまりin』)、ジャムをやったり(『黄金ジャム』)、ラインナップで一緒に開発をやらせていただきました。

 

乙井  流通さんも一緒にアイデア出してくれたんですね。

 

大浦  ゼリーの中に丸みかんまるごと一個っていうのはアドバイスしてくれましたね。

 

マー  丸みかんの瓶詰め自体はね、ホンマは破棄するみかんのサイズやったんよ。おばちゃんらが冬に売り物にならんアカンみかんを瓶詰やって夏に食べるとかやってたんよ。普通は大きいみかんを一袋ずつバラバラにしてやるんやけど、小さいサイズのみかんも美味いからってバラバラにするん面倒くさいから、大きい瓶へ入れてた。バラバラのもんも小さい玉のまんまのも入れておばちゃんらが自分らの趣味で作ってた。冬に市場の人と売り終わった後の反省会で「こんなん作ってんのよ」って見せたら「これ商品になるぞ」って(笑)。まあ言うたら「B品」というか加工にまわってしまうもんも喜ばれる商品に変わるというか(『てまりみかん』)。

 

乙井  自分たちで普段趣味でやってたようなことが、取引先とかファンの人とか他の人の視点が加わることによって商品になると。それがまた売れるという良い循環になると。

 

マー  ポン酢もね、そうなんよ。年始の注連飾りあるやん。でも最近、飾る人減ったやん。最初ダイダイを注連飾り用に、枝と葉っぱつけて何時いつに出荷するの受託してたんやけど、市場に問い合わせたら「もう要らんわ」って言われる(苦笑)。「ええ?どうする?」ってなって。自分らが毎年のように出荷してたやつのあまりもんのを搾って自家製ポン酢を作ってたんやけど、それでもせなしゃあないってなって、あとから作ったが『みかポン』よ。

 

乙井  『みかポン』美味しいね。うちも使わせてもらってる。そうやって出来たのすごいよなー。ということは、モノづくりの視点で言うと、原点の『味一しぼり』の時の「苦肉の策」とか、『味一ジュレ』や『てまりみかん』みたく「ファンや関係者の人との共創」みたいなのが多いみたいなんやけど、「こんな商品が作りたい!」って商品開発のスタイルなんじゃなく、自然な流れの中でモノづくりが進んでいく方が多いんかな?

 

マー  今のラインナップの中ではそっちの方が多いかな。こんなん作りたいっていうて、作って実際に売れてるのは…

 

大浦  『飲むみかん』かな…糖度にこだわって作った『味一しぼり』や『味まろしぼり』は高いもので1本500円近くするので、毎日は飲めないじゃないですか。毎日朝ごはんの時に子どもさんに飲んでもらおうとか、健康のために手軽に飲んでもらえるジュースがあったらええなあと考えて作ったのが『飲むみかん』なんですね。

 

乙井  確かに、マーケティング的な発想の商品開発ですよね。ターゲット決めて、使用シーン決めて、価格帯決めて…とか。

 

大浦  値段的には手頃で、糖度にこだわらず、搾り方と有田みかんの味で勝負の商品です。冬でも売れるって、バイヤーさんがびっくりされていました。価格帯的には普通のジュースより少し高いくらいです。

 

マー  健康的なことを考えてもらうと、毎日続けられん値段ではキツイしね。『飲むみかん』が出来たころには会社も大きくなってきて、そういう知恵を皆で出せるような状態やったんで出来たんやろうと思う。今までが逆に『みかポン』とかでも「ダイダイがあかんようになったから」偶然できたもんやし、こっちが思いもせんとこで売れていくのはラッキーやった。

 

乙井  自分らでその商品開発の手法に名前を付けるとしたら?『飲むみかん』じゃない方。凄い独特やと思うし、マーケティングとしては『飲むみかん』は通常のやり方やけど、そうじゃない方も沢山売れてヒット商品になっている現状があります、と。そうなった時にその商品開発プロセスに名付けるとしたら?

 

マー  「早和ラッキー」じゃない?(笑)

 

乙井  ヒット商品がラッキーから生まれてるのか!(笑)

 

大浦  自分らがやってて面白いとか楽しいとか、これいけるかもっていう「ワクワク感」とか、「ええんちゃうん感」とかがありますね。「そんなんなかったやん、今まで!」っていう感覚。『味一しぼり』の時は市場がどうって全然知らんかったもんな。

 

マー  昔はジュースがどうって何にもわからんかった。

 

大浦  地元のいいものが商品になるっていうのはええわな。『味一』レベルのみかんがジュースになるのは、まあ農家の常識では考えられんかった。原料の美味しさを選別するっていうのはそこらへんの加工業者さんにはできへん。農家にしかできへん仕事やと思いますね。

 

乙井  素材を知り尽くしているからこそ出せる商品ですね。

 

大浦  小さいみかんが美味しいというのは一般の人は知らないですもんね。見た目にもかわいいし味もいい。ゼリーもそうなんですよ。一般的なゼリーの原料を売る人に言わせたら、「固めるための粉をまず水で溶いて、果汁と合わせるんですよ、それがゼリーの作り方なんですよ」というんですけど。「いやいや、でもこれに水加えたら美味しさ減ってまうやないか。これそのまま固めたいんよ」というアイデアから業者さんを説き伏せて、ジュースをそのまま固める粉を開発してもらったんですね。

 

乙井  ということはやはり「早和ラッキー」だけではなく、本物を知っているからこそできる提案だったり、開発手法だったりするんですね。

 

大浦  商品開発は、ほとんど今も会長がやってるんです。

 

マー  好きなんやろうな。それと「当てる」センス。そういう感覚が凄いんやな。

 

乙井  ということはネーミングとかパッケージとかも会長が見てる?

 

マー  パッケージはそうとも限らないけど口は出す。ネーミングは割とみんなで考えるかな。役員会で「どれええ?(どれがいい?)」って候補から選ぶ。最後、面倒くさくなったら「もう誰か決めといてよ」ってなるけど(笑)。

 

乙井  ネーミングは独特な感じがするんですけど、あのセンスはどこから来てるんですか?

 

大浦  すごく独特だと思いますね(笑)。『味一しぼり』は味一みかんを搾ったということでそのままなんで分かりやすいですが、『味まろしぼり』は味が「まろやか」やからなんですけど、飲み比べた我々やからまろやかさの違いが分かるっていう所はありますが(苦笑)。ちょっとネーミングの話から逸れるんですけど、味の決め方っていうのも、いま女性の社員さんが多いんですよ。会長がこれでええって思ったものを女の人に食べてもらうんですよ。意見をずばっと言うし、センスも持ってるし。

 

乙井  会長の感性からできたものでも、社内の女性の力で評価してもらって…それが世に出るのですね。その時にまとうパッケージやネーミングが面白いということですね。

 

大浦  今も試飲販売を・・・・、

 

【ガラガラーっ(突如戸が開き女性社員が入室。トラブル発生の模様)】

 

大浦  う、うそー!衝撃やな…すみません、ちょ、ちょっと行ってきます…

 

乙井  ど、どうぞどうそ!


【ドアがピシャリと締められ、退室後もやり取りの声が聞こえてくる。】

 

乙井  大浦さん、大変やな…えーっと、ネーミングのええ話の途中やったね(笑)。『てまりみかん』とか…他におもしろい商品名あったよね?「おかん」って付いてたような…。

 

マー  『おふくろスムージー』

 

乙井  そうそう!失礼!「おふくろ」!

 

マー  みかんの袋が入ってるからよ。

 

乙井  そうか!━(゚∀゚)━ みかんの袋でおふくろなんか!

 

マー  あれね、わざわざ入れ戻してるんよ。チョッパーパルパーで裏ごしされたみかんの袋を入れ戻してんのよ。

 

乙井  あの商品も食感がすっごい良くって、むっちゃオリジナリティあるよね。

 

マー  農家の延長の自分らが普通やって思ってることをメーカーとして製品にしてみたら皆さんに喜ばれるのは有り難いわな。まだまだ自分らでは普通すぎてそうでもないと思ってるけど一般には売れるものもあるんやろうなとは思う。

 

乙井  まだまだやりようあるね。

 

マー  「こんなシーンで合う」とか、他の人に言われんと分からんかった。こんなんあかんと思う農家の基準が、「それがなんであかんの?」って世の中では思われる。そういうのがまだまだいっぱいあるはずやな。商品の考えようはもっと広げれるんやろうな。

 

( ˘⊖˘) .。oO(しばし、会社の現状と近未来について語る専務。会社を更に発展させるため社員一丸となって取り組むべきことへの想いがあふれる。ここでは触れずにいつか社員の皆さまに本人からお話していただきましょう(^.^))

 

マー  そういや2番目のジュースブランドの『味まろしぼり』も『味一』できやんかったからなんやで。

 

乙井  どういうこと?

 

マー  みかんって自然のもんやん。雨が沢山降ればみかんの味は悪くなる。『味一』って糖度12度以上のみかんって決まってるんよ。そしたら『味一』が全くできん年も出てくらよ。そしたら『味一しぼり』どうすんのってことからよ。

 

乙井  『味まろしぼり』は何度?

 

マー  11度台。『味一』は『味一みかん』が和歌山県農のブランドみかんで12度以上って決まってるから。

 

【ガラガラーっ(大浦さんが戻ってきた)】

 

乙井  大変ですねヾ(^-^;)、大丈夫でした?

 

大浦  大丈夫です!(^~^;)


販売戦略:戦略的な試飲販売で世界中にファンを生み出す    


乙井  では無事にお戻りになられた大浦さんに販売方法についてお聞きしたいのですが、例えば伊勢のおかげ横丁で早和さんの社員の方が販売されているのを拝見したことがあってびっくりしたんですけど、どういった点に力を入れられているんですか?

 

大浦  実際に味わっていただける試飲販売をやっています。伊勢のおかげ横丁と、白浜のとれとれ市場と、和歌山マリーナシティの黒潮市場の3箇所がメインですね。

 

乙井  紀伊半島を中心にされているのですね。

 

大浦  たまに海外の高級スーパーでやらせてもらうこともありますが、その3箇所は他府県からのお客様が多くいらっしゃいます。和歌山県のいいものをお買い求めいただきたいということで、お土産にして頂いています。自分たちが全国津々浦々に行くのではなく、来て頂けるタイミングでご紹介したいと考えています。そのような観光地ですと、世界中からお客様が来て頂いているので、日本で試飲販売で買って下さった方と、香港や上海の試飲販売でお会いすることもあります。試飲販売はお客様の生の声を聞けるのでいいですね。

 

乙井  お客様とのコミュニケーションを大事にされていて、それが着実に実を結ばれているんですね。他には有名なホテルなどでも採用されているんですね。

 

大浦  そうですね、お名前はお出しできませんが、多くのホテルで採用して頂いています。

 

乙井  (こっそり錚々たるホテル名をお聞きする)おお!それは凄い!そうすると皆さん知らず知らずのうちに早和さんのオレンジジュースをお飲みになっているかもしれませんね!


大浦  あとは機内飲料ですね。機内で「和歌山のみかんジュース」って紹介して頂いていて、とてもよく出るらしいです。ある国際線のビジネスクラスでも採用があります。飲んで頂いているところ思わず写真撮りたくなりましたもん!

 

乙井  自社製品が買われているところとか使われているところとか見ると凄くうれしいですよね(笑)。

 

マー  機内のパンフレットに載せてもらってるのも見ると嬉しいわな(笑)

 

大浦  農家が自分らの製品をそんな凄いところに売りに行けるなんて思っていなかったですよ!

 

乙井  それだけ、商品が本物ってことですね。有田の製品が世界に認められるって素晴らしいことです。

 

大浦  あとは宇宙に行きたいと思ってるんですけどね!(笑)

 

乙井  う、宇宙!?あ、なるほど、もしやパウチで!?

 

大浦  そうです。『おふくろスムージー』とかね。社長が宇宙からSNSで…

 

マー  「月なう」とかね(笑)

 

早和果樹園の製品の開発方法は、みかんを知り尽くした農家さんの中だけで受け継がれてきたものをファンや関係者と一緒に商品化したり、時々に生じる課題への苦肉の策として生み出されたり、様々なラッキーから生まれたり(笑)。それらはいずれも会長の卓越した感性と最近では女性社員の厳しい評価によって世に送り出されていました。試飲販売にこだわるのも美味しさへの自信から、そして観光地が選ばれたのは県内外だけでなく世界にもファンを広げたいという想いからでした。有田が誇る6次産業企業はやはりどこを切っても独特でした。

 

次回インタビューはいよいよ最終章です。農家さんと会社員を両立させる働き方とは?まだまだ続きます。

 

<次回に続きます>

 

早和果樹園さんのリターン紹介はこちら。

 

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