【プロジェクト第一段階完了!】残留農薬検査が完了しました!
いつも橘久丸商會プロジェクトを応援いただきましてありがとうございます。
『目指せ、減農薬!持続可能な農業モデルを、有田のみかん畑から。』と題して開始したクラウドファンディングが終了して約半年。この半年の間、様々なかたちで支えてくださった皆さまのお言葉やお顔を思い出しながら頑張って参りました。「頭の中で考えてきたこと」と「実際に関係者の方々と対話してみかんの生産現場を観て感じて考えたこと」の間のギャップを埋め、着地点に至るプロセスのイメージ更新を繰り返しました。そして、ようやく今日ここに第一段階完了のご報告が叶います。応援してくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。本当にありがとうございます!
【今回のゴール】
プロジェクト第一段階のゴールは「みかん畑の土壌の残留農薬検査から基礎データを得ること」でした。自ら調査して得られた「見えないものを見えるようにするデータ」から状況を把握し、アイデアを生み出し、発想を跳躍させることで、課題に対して策を講じられるようになります。フィールドワークを通して量的・質的なデータを取得して分析するプロセスは、私たちが構想を具現化する上で欠かせない営みとなっています。
【調査時期】
「調べる」ことの多くに当てはまることだと思いますが、「調べるタイミング」はとても重要です。自然のサイクルと産業社会のサイクルが絡み合う農業でも同様で、今回のみかん畑の土壌のケースで熟考した結果、サンプリングの時期を11月に設定しました。大雨や台風などで荒ぶっていた天候も落ち着き、みかん農家の方々のお仕事が一段落するタイミングであり、春先から続いた農薬散布もほぼ終わりを迎えるタイミングであるためです。農薬分解の半減期も考慮しています。
【調査エリア】
私は11月の晴れた日に大阪から地元和歌山に戻り、有田市と有田川町の山地や平地の5地点の畑を自転車と徒歩で巡ってその土壌を一定の方法に則って採取しました。スコップとチャック付きのナイロン袋を持参して、土壌検査の採取方法を参考に、複数の平均的な場所で均一なサンプリングを行うことを心がけました。
【検査を依頼した分析機関】
今回は、三重県環境保全事業団さまにご対応いただきました。「なぜわざわざ大阪から三重まで?」というご質問がありましたのでお答えさせていただきます。ミツバチの不審死をきっかけに始まった橘久丸商會プロジェクトの初期段階より、親身になって相談に乗ってくださったことと、その御礼を直接お目にかかってお伝えしたかったこと、どのような分析機器でどのように検査しているのかについて学ばせていただくことも含めて、同事業団にお願いすることに致しました。津駅から単線の伊勢鉄道に乗り込み、田んぼがたくさんあるのどかな道を歩いて、分析を請けて下さったこちらの専門機関を訪問させていただきました。
【最終的な検査内容】
当初の計画通り地元の5地点でサンプリングを行ったものの、全てのサンプルを計画通り分析すると、今回使える予算の数倍の金額が必要であることが判明したため、発想と視点を変えて目的を次の3つに絞り込み、2地点の土壌分析を行いました。
①農薬散布量・残留量が多いと考えられる山地土壌の分析
(農薬散布専用の設備があり、他の畑からも風に乗って飛散する可能性が高い)
②自然栽培と慣行栽培の緩衝地帯の残留農薬の状況を検証する分析
③検査手法の妥当性を検証する分析
(1つの検体を異なる2つのメニューで検査)
■番外編:あるネオニコチノイド農薬の残留性の分析
【結果】
いよいよ、検査結果です!つい先日、封書で送られてきました。
結果の詳細をお知りになりたい方もおられることと存じますが、下記3つの理由により、この場で詳細を公開することは敢えて控えさせていただきたく思います。
今回は「土」という扱いがとても難しい検体で本格的に農薬の残留性を調べた検査データであること、現時点ではまだ検査結果を踏まえてプロジェクト関係者で議論ができていないこと、そして一度公開した数字は独り歩きしてしまう性質があること。これらを考慮して、データを慎重に扱いたいと思います。
一方で、プロジェクトを応援いただいている皆さまの消化不良につながることは望ましくありませんので、結果について大まかな内容に留めてお伝えさせていただくことでどうかお赦し頂けますと幸いです。また、橘久丸運営メンバーには結果を共有させていただいて議論し、それぞれの立場で対応策やアイデアを検討する基礎データにしていただくように致します。
①農薬散布量・残留量が多いと考えられる山地土壌の分析
⇒農薬を散布する設備がある山地の畑では複数の残留農薬が検出されました。それらが農家さんご自身の管理の元に散布されたものなのか、別の畑から飛散したものかなど、引き続き検証を続けます。
②自然栽培と慣行栽培の緩衝地帯の残留農薬の状況を検証する分析
⇒両者の畑の端境にある緩衝地帯の土壌から、農薬は検出されませんでした。私の仮説に沿った結果とはなりませんでしたが、これについては安堵しました。
③検査手法の妥当性を検証する分析
⇒分析機関の回答待ちの状態であり、検査方法の妥当性はまだ結論が出ておりません。
■番外編:あるネオニコチノイド農薬の残留性の分析
⇒私の仮説とおおむね合致する結果となりました。農家の方々とのコミュニケーションに最大限配慮し、慎重に進めるよう、尽力致します。
【リターン】
プロジェクト終了後、各プロジェクト協力者の方々から順次リターンをお送りさせていただきました。皆さま、有田が誇るみかんやみかん製品をご賞味いただき、お楽しみ頂けましたでしょうか?「継続して購入したい!」というとても嬉しいお声もお聞きします。その場合は、ぜひインターネットで公開されている早和果樹園さんや虹のネ農園さんに直接お問い合わせいただいてお買い求め下さいませ。川口さんのみかんも、私にお問い合わせ頂けましたらご紹介させていただきます。
【収支】
皆さまからご支援頂いたプロジェクト資金60万9000円のうち、当初予定より大きく膨らみましたリターン購入費用・送料関連、READYFOR手数料、消費税など約38万円を引いた228,664円の全額を、和歌山・三重へのサンプリング・研修・旅費交通費、残留農薬検査費、関係者への連絡諸経費等に使用させて頂きました。本当にありがとうございました。
【今後について】
第一段階を経て、2019年は下記に取り組みます。
①地元の協力者・賛同者で今回の結果と今後について対話するミーティングを開催
②山地の青みかんの収穫方法の検討と収穫量の想定
③残留農薬検査の仕組み化検討
④自然栽培のみかん生産量を鑑み、今後の方向性を再検討(柑橘別種の栽培含めて)
⑤製品開発の方向性、企業や自治体との連携を模索する
⑥農家の方々へのネオニコや除草剤の使用に関するヒアリングと啓蒙活動
⑦上記を通して、農薬の多用を産業として減らす対策を多方面から検討・実行
とりわけ④は、それまでの考え方から大きく転換することになりましたが、隣り合う自然栽培と慣行栽培の畑で、それぞれの果樹に実ったみかんの量や大きさの差を目の当たりにして衝撃を受けたことがきっかけとなりました。大量の青みかんが摘果・廃棄される慣行栽培と、自然栽培のそれには大きな乖離があり、自然農みかんの生産量では青みかんを十分に確保できないことが明らかになりました。しかし、地元で得られた様々な情報を元に、ブレイクスルーにつながるアイデアを思いつきましたので、関係者の了解が得られましたら、実行に移して皆さまと楽しみながら進めていきたいと願っております。
橘久丸商會プロジェクトはこれからも引き続き、400年の歴史と伝統を誇る有田のみかん産業の中に入ってみかんのことを知り尽くし、私たちが見出した課題解決に取り組み、100年先を見据えて「産業構造の変革」「生活者意識の変革」「生態系の回復」の実現を目指してまいります。
皆さま、これからも応援の程、何卒よろしくお願い申し上げます。
ありがとうございました。
乙井一貴(非営利活動組織NOD)