障がい者の仕事・スポーツが丸ごとわかる太陽ミュージアム建設へ

　障がい者が働き、納税者となり、国へ恩返しする。それはある人の“はい、やりましょう”から始まったものである。障がい者雇用の大きなターニングポイントとなったエピソードを紹介します。

背景：

　日本では障がい者が働く機会がなかった時代に障がい者が働く工場を作り、初年度から黒字を出した。障がい者の働く能力は無限である。No Charity, but a Chance!　｢保護より機会を！｣。こう考えた中村裕博士のアイディアに賛同したのはオムロン株式会社（旧名：立石電機）の創業者立石一真さん。

オムロン株式会社創業者立石一真さんと中村裕博士の出会い

　＜中村先生とわたしの出会いは、昭和46年9月19日（1971）、橋本登美三郎先生（政治家）の紹介で、秋山ちえ子さん（ラジオパーソナリティ、評論家）と二人で御室（おむろ、オムロンの創業地として知られており、社名の由来にもなっている）の本社に来訪のときであった。そのとき先生は、福祉工場の建設計画を熱っぽく語って、その工場に入居し、55人の重度障害者をつかって近代産業方式を植えつけてくれと懇願いした。

　ずいぶん突然の事ではあったが、わたしはこの仕事はわが社の社憲にも添う事なので、その事業に協力することにした＞　（オムロン株式会社創業者立石一真、中村裕先生を偲ぶ「まさに人生をかけ足で走り抜けたような人だった」より）

秋山ちえ子氏は、この日のことを話す。

　＜なんとしても新しい工場を作りたい。｢中略｣　立石社長ならいいだろうと橋本先生がおっしゃったので、大阪空港で中村先生と落ち合って、京都の御室に行ったのよ。

　会社に入ったところの、玄関にあるエスカレーターが動いてないでしょ。この会社は業績が駄目で、それで働いていないのかと思ったの。社員の人に聞いたら、人が乗ると動き出すのだと教えてくれたので、びっくりしました。

　朝の9時半頃から立石社長に会って、縷々説明して、今日は“うん”と言って頂かなかったら、帰りません、と言ったの。夜の8時頃になって、一緒に夕食をしましょうということになって、とうとう返事を頂いたんです。＞（「中村裕伝」より）

　この出会いが日本初の障がい者が働く福祉工場と「オムロン太陽株式会社（旧名：オムロン太陽電機株式会社）の誕生に繋がった。これは、中村裕先生のお願いに、 “はい、やりましょう”と応えた立石一真さんの返事から始まったものである。

写真は、1972年2月5日、立石一真氏（左）と中村裕博士（右）、オムロン太陽電機株式会社設立時のものです。