貧困・格差と闘う思想家ヤニス・バルファキスの名作を翻訳出版したい！

バルファキスさんって、どんな人！？④

バルファキスさんの論文で、松尾匡さん、朴勝俊さんが訳された「ヨーロッパを救うひとつのニューディール」という注目される文章をご紹介いたします。

これは、以下のサイト（ひとびとの経済政策研究会）に掲載されているもののＵＲＬを記載しておきますが、これは『「反緊縮！」宣言』松尾匡編　亜紀書房　にも収録されています。

https://economicpolicy.jp/wp-content/uploads/2017/09/translation-007.pdf

ここに提言されていることは、欧州のみならず、コロナ禍、コロナ後の政治経済においても重要なヒントとなると思います。その部分のみ抜粋します。

・大規模なグリーン投資。このための資金は、ヨーロッパの公共投資銀行(ヨーロッパ投資銀行やKfW3など)と、各国中央銀行との連携によってまかなわれる(つまり、中央銀行が投資事業債を買い取る量的緩和を行うのである)。それによって、ヨーロッパの総所得の５％をグリーンエネルギーと持続可能技術への投資に向ける。

・雇用保障システム。これは、すべてのヨーロッパ人がその故国において、公的セクターや非営利セクターで、生活賃金が得られる仕事に就く機会が得られるようにするものである。これは、そうした仕事を希望する全ての人が利用できるものとする。このシステムの導入の代わりに、公務員を減らしたり、公務員の定年を短くするようなことはしない。既存の給付金をカットするようなこともしない。窮乏か移住かという究極の選択を迫られている人々に、もう一つの選択肢を与える政策である。

・反貧困基金。これは、ヨーロッパの全加盟国の人々の基礎的ニーズを満たすとともに、将来的には各国が新たな社会保障基金を設立するのに寄与する。

・普遍的な基礎配当。これは、資本への報酬が上昇しているのに対して、そのもっと大きな割合を人々のものにするものである。

・家屋立ち退きに対抗する保護政策。これは緊急を要する。借家権の形をとる保護政策によって、住宅を抵当にとられた持ち家住民が、地域コミュニティの委員会の決める公正な家賃で、自分の家に住み続けられるようにする。さらに長期的なテーマは、大陸のあちこちで社会的住宅供給政策が解体されてしまっているが、これを復活させることである。ヨーロッパは、すべてのヨーロッパ人に対し、それぞれの故国でまっとうな住居を保証し、その資金を提供しなければならない。

上記の政策の財源としては「プラグマチックかつラジカルな通貨改革によって資金を提供する契機とする。特に、各国中央銀行の通貨発行益は、全額がこれらの目的のために使われるべきであろう。」とあり、いわゆる中央政府の通貨発行権を駆使した「公共通貨」「政府通貨」的な考えを用いています。

ここもとても重要な視点だと思います。