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奨励賞を受賞した長編小説「華麗なる孤独」を出版したい

妃貴 千紗(きさき ちすず)

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2018年07月22日 23:44

連載小説「最期の微笑み」第五章①

 

 

5

 

 ガーソン・ストーンが自分のおかしたミスに気がついたのは、屋敷の外だった。

 食事を終え急激に眠くなり、ベッドに倒れるようにしてもぐりこんだのは覚えているが、ジェームスに起こされるまで熟睡していて記憶がない。

 目が覚めた時にジェームスの笑顔がぼんやりと見えたが、まだ夢の中をさまよっているように気分が悪かった。

「よく眠れたかい」

「はい。すみません。先に寝てしまって」

 睡眠薬を飲まされたとは露知らず、ガーソンは素直に謝った。

「いいんですよ。あなたの仕事は見届けることだけですからね」

 その一言にガーソンは自分が置かれている立場を思い出し、一気に現実に引き戻された。

 慌てて起き上がると緊張を高まらせながらなんとか笑顔を作った。

「朝ごはんは何でしょうね。今度はジェームスさんのお口に合えばいいですね」

 明るい話題を作ろうとガーソンは考えを巡らせた。

「あいにく朝食はないよ。君の仕事が終わってからゆっくりといただこう」

「え、どういう・・」

 ガーソンは言い終わる前に察して後ずさりした。

「まさか、もう」

「驚くことはないだろう。長居は無用だ。君がぐっすり休んでいる間にすべての仕事は終えたよ」

 テーブルの上の書類を見せながらジェームスは余裕気に笑んで見せた。

「あとは君の仕事だけだよ、ストーン君。リチャードの部屋、そしてプリムローズの花畑に行って彼らの最期を見届けてきてくれたまえ。私は一睡も寝ていないのでね。君が仕事をしている間ここで休ませていただくよ」

 何事でもないかのように言って葉巻に火をつける殺し屋に、ガーソンは自分の考えが甘かったことを痛感した。

 突如ジェームスの恐ろしさがこみ上げてきて、同じ空間にいるのが怖くなった。

「わかりました。行ってきます」

「あ、それと言い忘れていたことがありました」

 逃げるように部屋を出ようとしていたガーソンは思わず肩を震わせた。

「なんでしょうか」

「現場を見て恐ろしくなって逃げたりなどしないでくださいね。あなたが帰ってこなければ、アルセイド様から私は褒美をいただけませんから」

 ジェームスが冗談まじりに釘をさすと、見透かされたガーソンは額に汗がにじむのを感じた。

「もちろんですよ。そのために来たんですから」

「まぁ、そうですよね。きちんと仕事を果たさなければ君もアルセイド様に殺されるでしょうし」

「そんなはずはありません。アルセイド様は僕を信じて・・」

「気づいてなかったんですか。あなた以外にも見届け役がいることを。あなたも見張られているんですよ」

 その言葉にガーソンははっとした。そういえばアルセイドはガーソンの他にもひとり仕事をさせると言っていた。

 だがその人間の役割までは聞いていない。いれば安心だろうとアルセイドは言っていたが、果たしてその存在は敵なのか味方なのか。

 逃げ道はない。きっとそうに違いない。

「僕は必ず戻ります。だから安心して休んでいてください」

 ガーソンは静かにそう言うと部屋を後にした。

 歩くたびに鼓動が高鳴る。

 まず自分の仕事はただ見るだけ。確認するだけだ。

 ジェームスを殺すことはまずは忘れて、言われたとおりに動けばいい。

 リチャードの部屋の前まで来るとガーソンは深呼吸をした。震える手でドアノブをゆっくりと回すと、意を決して一気に開けた。

 目に飛び込んできたのは悲惨な光景だった。

 荒らされた部屋の中、血だまりの上に横たわるリチャードがいた。

 その時、はにかみながらプリムローズを想って笑っていた、彼の笑顔が思い出された。

「リチャードさん」

 涙が頬を伝う時、やっと自分の仕事の意味を理解した。

 ジェームスを殺すことばかりに気を取られていて気がついていなかった。

 自分の役割は、人を見殺しにすることだったのだと。

 ガーソンは部屋の中に入ることはできなかった。これ以上惨い現実を思い知りたくはなかった。

 本当は防がなければならなかった。犠牲にするべきではなかった。

 謝罪をしてもしきれない罪悪感に襲われ、ガーソンはそれを振り払うようにして屋敷を駆け出していた。

 あと一人、プリムローズも見なければならない。

 どんなに惨い殺され方をしているのだろうか。そう思うと花畑に向かう足取りが重い。

 でも見届けなければならない。自分の役割ということもあるが、二人の死を止めることができなかったせめてもの義務だとも思った。

 広い花畑だったが、プリムローズは比較的にすぐに見つかった。

 朝露がまだついている花畑の中で、眠るように横たわっていた。

 その様子にガーソンは少しほっとした。

 きっと、美しいプリムローズは美しいままにして殺したかったのだろう。

 良かった。・・いや、そんなわけはない。

 人一人の命が奪われたのだ。

 自分は二人を見殺しにした。二人の将来を葬ったのだ。

 なんてことをしてしまったのだろう。後悔をしても二人は戻っては来ないのに。

 だが自分の仕事はまだ終わっていない。

 残るはそう、あの殺し屋を殺すだけだ。

「ジェームスさんを殺さなければならないなんて、僕にはやっぱり無理だ」

 どんなにひどい殺しをする人間でも、ガーソンはジェームスの優しさを信じていた。苦しみながら生きている彼を救いたいと思っていた。

 そんな人間を殺すことなどできない。

 約束を果たさなければアルセイドのところへは戻れない。

 だが、それが幸せなことなのかはもはや何もわからなくなっていた。

 ガーソンは無意識に、毒の入った小瓶をジャケットのポケットから取り出そうとした。

 その瞬間、ガーソンは血の気が引いて目の前が真っ暗になるのを感じた。

 ポケットの中にあるべきものがないことにようやく気がついたからだ。

 落とした?

 どこに?

 そこまで考えた時、ガーソンは最悪の事態を確信して頭が真っ白になった。

 昨夜の強烈な眠気がジェームスによって眠らされたものだと悟ったからだ。その時にポケットから抜き取られたのだと考えれば自然だった。

 ジェームスならあの瓶の中身が毒だということは分かっているはずだ。

 同時に自分の殺害計画も察したに違いない。

 そんな人間をジェームスが生かしておくはずもない。

「逃げよう。わざわざ殺されに戻ることもない」

 他に自分を狙っている人がいるかもしれない。だが、それはあくまで可能性だ。ジェームスのところに行けば確実に殺される。

 屋敷を背に逃げ出そうとしたその時、脳裏にリチャードの最期が蘇った。

 見殺しにしたまま逃げるのか。常にだれかに狙われているのをおびえながら。

 違う。それは本当に自分のやりたいことではないはずだ。

 ガーソンはうなだれた後天を仰ぐと、踵を返し屋敷の方へとふらふらと歩きだした。

 アルセイドに会った時から、自分の運命は決まっていたのかもしれない。

 それならばもう、足掻くのはやめよう。

 向かうのは殺し屋の待つ部屋。

 静かに何かを自分に言い聞かせながら、自分の決めた道を踏みしめていた。

 

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リターン

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ありがとう付箋+コラボしおり

・感謝の気持ちを込めた「ありがとう」付箋
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以上8点をお届けします。
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