熊本最後の妊娠相談窓口訪問は、「こうのとりのゆりかご」で有名な慈恵病院です。日本財団の赤尾さんやスタディライフの田尻さんのご尽力により、蓮田理事長と直接お会いすることができました。

 

 

 

 

2007年から運用が開始された「こうのとりのゆりかご」はNHKをはじめとする様々なメディアでとりあげられているので、きっとみなさんご存知だと思います。設置当初から賛否両論、現在でもさまざまな議論を巻き起こしている「こうのとりのゆりかご」について、みなさんはどのような印象をお持ちでしょうか?

 

誰にも相談できなくて、一人で赤ちゃんを生んで、遺棄して、逮捕される女性。遺棄されてしまう赤ちゃん。生まれたその日に死んでしまう赤ちゃんがいる。この数ヶ月だけでもそんなニュースがもう何件もありましたよね。

 


私たちには関係がない話なのでしょうか?
特別な背景を持った一部の人だけの問題なのでしょうか?
その人に原因がある、責任があるから、自業自得なのでしょうか?

 


慈恵病院は産婦人科をはじめとして小児科、外科、内科、麻酔科を擁するキリスト教系の病院で、明治30年に創立されたハンセン病療養所、「徒労院」に始まる歴史ある病院です。その理事長である蓮田先生は、柔らかい笑顔を絶やさず、メガネの奥の目がとても優しい方でした。隣に座る奥さんとの冗談のような会話に、緊張する私たちの気持ちをほぐしていただきながら、こうのとりのゆりかごへの思いや開設までの道のり、開設から今日までのご苦労や実際の様々なケースについて、また実際の運営の現状や課題、これからの展望について教えてくださいました。

 

「こうのとりのゆりかご」には2014年度は4036 件、なんと今年度は6000件(初回相談だけの数です)を超える勢いで相談が寄せられているそうです。ここの最大の特徴は、赤ちゃんを匿名で預けることができる「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」があることですが、預けられた子どもの開設以来の累計は112名にのぼります。
各ケースについては、弁護士や大学教授、児童精神科医、社会福祉士らによる専門部会が3ヶ月に一度非公開で開催され、違法性がないかどうかが検証されています。

「こうのとりのゆりかご」に赤ちゃんを預ける方には、お一人お一人それぞれの背景があります。私たちは、預ける人のこれまでの人生や境遇を知らない、理解できないかもしれません。声をあげること、助けを求めることができない人の気持ちを想像してみたとき、何か自分にできることはないかと立ち止まり考えることは頭で考えているよりもずっと難しいことなのかもしれません。

 

蓮田理事長は、毎日命と向き合ってきた産婦人科医として、「赤ちゃんが生き延びる権利が最も重要で優先されるべきである」という揺るぎない信念をお持ちでした。どんなに批判されても、その批判と向き合う時間も大切にしながら、できることをやり続けている姿勢に深く感銘を受けました。

 

「未受診の人の中には、さまざまな制度があってもそれに気付けない人がいます。だから周りの人が、気がついた人が、声をかけることが大切なんですよ」とのお話に、誰にでもできることはなんですかときくと、「妊娠している人をみたら、予定日はいつですか?、楽しみですね、どこで産むのですが?と声をかけることです、それならみんなができるんです」、という答えが心に残りました。

 

蓮田理事長との面会のあと、師長さんにナースステーションや実際の赤ちゃんを預ける場所をみせていただきました。入口から少し長い小径をゆくと、突き当たりに赤ちゃんを預けにきた方へのメッセージと扉があります。その道を通りながら、赤ちゃんを抱っこしてここを通った方の気持ちを想像すると、切ないけれど温かい気持ちがぶわっと湧いてきました。

 

赤ちゃんの命を諦めずに、守るために預けに来てくれてありがとう。赤ちゃんもあなたも幸せになって欲しい、そのためにここはあるんだよ、そんな希望を感じました。

 

 

 

にんしんSOS東京の活動の先も、赤ちゃんとお母さんの笑顔や希望に繋がっている。私たちはそう信じています。

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