インタビュー2回目の今回は、高田先生のエボラ研究年表②、”エボラウイルスが細胞に侵入するメカニズムの研究を始めた”ことについて伺っていきます。

 

前回のインタビューでは、エボラの研究を決めたものの、エボラウイルスを取り扱える安全度が最高レベルの施設(BSL4施設)にアクセルする方法がなかったため、偽エボラウイルスを開発したと伺いました。
 

文章:READYFOR株式会社プロジェクト担当 田中


 

アメリカでの共同研究の末、「偽エボラウイルス」が完成

 

 ー「偽エボラウイルス」は、どのくらいの年数をかけて開発したのでしょうか。
 
偽エボラウイルスは、アメリカのメンフィスにあるSt.Jude Children’s Research Hospitalという研究所で、当時のボスにエボラの研究を提案いただいてから1年足らずで開発できました。

 

ー1年で‥!「偽エボラウイルス」開発のために、まずは何から始めましたか?
 
開発のためには、まずリバースジェネティクスという技術(この場合、ウイルスを人工的に作る技術)が必要でした。

 

偽エボラウイルスの中核となったウイルスを作る技術がすでに確立されており、それを提供していただいた研究者の方々が共同で研究を進めてくれたおかげ完成することができました。私は運が良かっただけです。

 

▲アメリカのメンフィスにある St. Jude Children's Research  Hospital〈高田先生提供〉

 

 

 ー「偽エボラウイルス」と平行して、エボラウイルスが細胞に侵入するメカニズムの研究を始めたと伺いました。

 

ウイルスというのは、遺伝子とその暗号をもとに作られるタンパク質でできています。作られるタンパク質はウイルスが増えるための様々な機能を担っています。

 

エボラウイルス粒子の中に含まれているものには、7種類のタンパク質が知られています。そのうち、粒子表面に存在するスパイクのようなタンパク質は、エボラウイルスが細胞の表面にくっついて細胞の中に入っていくという過程をもっています。

 

私達が開発した偽エボラウイルスは、そのエボラウイルスのスパイクタンパク質を他の安全なウイルスの表面に乗せ変えたものです。

 

なので、この偽エボラウイルスを使えば、本物のエボラウイルスを使わなくても、エボラウイルスが細胞の中に取り込まれる仕組みが解析できるようになったのです。
 

 

ーエボラウイルスの表面のタンパク質を、人に病原を示さないウイルスの表面と交換し、病原性を弱らせた「偽エボラウイルス」を開発した…ということですね。

 

本物のウイルスを使わなくても、エボラウイルスが細胞の中に取り込まれる仕込みが解析できるようになったことで、安全度の低い施設でも研究が続けられるようにしたのは、画期的ですね。

 

 

 

研究の幅を大きく変えた「偽エボラウイルス」

 

ー細胞に侵入するメカニズムは、どのように調べたのでしょうか。

 

エボラウイルスが細胞に侵入するためには、まず細胞表面の受容体にくっつく必要があります。その受容体を探すのに、この偽エボラウイルスは世界中で活用されました。現在では複数の受容体の存在が分かっており、エボラウイルスの研究は、かなり進展しました。

 

また、もう一つ重要な使い道として、エボラウイルスの感染を防ぐ抗体の有無を調べることができるということが挙げられます。

 

ウイルスの感染を防ぐ抗体というのは、主にウイルスの表面に結合して(上で説明しましたスパイクタンパク質にくっつきます)、ウイルスが細胞に入っていく過程を阻害する役割があります(このような抗体を中和抗体と呼びます)。

 

例えば、中和抗体の多くはウイルスが受容体に結合するのを阻害します。もちろん、最終的には本物のウイルスを使って調べる必要はあるのですが、この偽エボラウイルスのおかげで、中和抗体やそれと同じ作用を持つ化合物を探すことが簡単にできるようになったのです。

 

ー今回のインタビューを通し、「偽エボラウイルス」のおかげで研究の幅が大きく広がったことが分かりました。次回は日本帰国後の研究についてお話をお伺いできればと思います。
 

▲2000年頃のお写真〈高田先生提供〉

 


◀︎前回の研究に関する記事はこちらからご確認下さい。
 

プロジェクトは、3月29日まで続きます。

引き続き、応援どうぞよろしくお願い致します。

 

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