萩岡松韻様より応援メッセージを頂戴しました

この度、長年苦楽を共にしてきた武田孝史先生が邦楽科の教授を退任されます。武田先生とは、流儀のお家元であり私の幼い頃からの親友であった故宝生英照君（能楽宝生流先代宗家）との縁もあり、学内でも仲良くさせていただきました。

「明日へ」と題された退任記念演奏会は、伝統芸能・能楽の継承者として古典作品でプログラミングされるのかと思っておりましたところ、本学の音楽プロデューサーである八反田弘先生とのダブル退任記念演奏会で、ピリオド楽器演奏団体「オルケストル・アヴァン＝ギャルド」を招いての世界的にも例のない壮大な舞台を考えているとのこと。能楽とベートーヴェン、一見するとあいまみえない組み合わせのようにも思えますが、私は、この企画は邦楽科が長年取り組んできた創作舞台企画『和楽の美』の延長線上にあるのではないかと思っています。

伝統は、「古きを温め新しきを知る」ことです。藝大邦楽科の使命は、現代における邦楽の可能性を追求することで、本学の強みの一つである流派や分野を越えて、さらには洋楽や美術など他ジャンルとの交流ができる恵まれた環境を生かして新たな芸術を創造していくことです。武田先生・八反田先生両先生方の今回の試みは、まさにこれを具現化するものと言えるでしょう。

コロナ禍だからできないのではなく、コロナ禍だからこそ生まれた企画であると思います。本公演が、多くの人に希望と勇気を与え、亡くなられた尊い命への鎮魂となると信じております。

多くの皆様のご支援をいただきたいと存じます。