能登半島地震の惨状から復興の経過を絵画記録で残し、将来へ伝えたい

あなたは絵で泣いたことはありますか？

この活動をはじめた時、理解してくれる人、応援してくれる人など誰ひとりいませんでした。

それでも私にしかできないことだ信じて描き続けていくうちに、次第にかけられる感謝の言葉を支えに活動を続けて、気づくと13年もが経過していました。

しかし、まだまだこの活動の知名度は殆どなく、負担だけが重くのしかかってる日々が続いています。

▼ 最も目を覆う惨状の町野町

この日訪れた町野町集落の被災状況は被災地を歩き続けてきた私ですら目を覆ってしまう惨状でした。

両側の家の殆どが崩れ落ち、道を通り抜けることすら難しい……。
恐らく倒壊率では今回の地震でも最もひどい場所の一つでしょう。

記録画を描けるだろうかとカンバスを構える場所を探しますが、両側とも倒壊し、大きな車がすれ違うことすらままならない中で、とても油絵をかけるだけのスペースを探すのは難しい状況でした。

そこで少し離れた広場に車を止めさせてもらい、リュックにスケッチ道具だけを入れて最低限の画材で描くこととしたのですが、それでも交通や復旧工事の邪魔になりそうなのには変わらない。被災している人に迷惑をかけてしまう……早々に立ち去ろう。

遠くから女の子の笑い声が聞こえる。
どうやら近くの小学校では卒業式をしているようだ。

▼ 被災者から出た言葉に……

ちょうど描いていた道路脇の向かい側の家は比較的新しく倒壊を逃れたようで、住民と確認にきたJAの職員の談笑が聞こえてきた。

「いい絵だよなぁ」
談笑が終わったらしく近寄ってきた男性の言葉に少々驚きつつ
「いや……正直描いていても辛いのですよ」
と答えると、
「確かに崩れた家々だけれども、これはいつかなくなるもので振り返ることってできなくなるでしょ。しかし絵に人柄が溢れているよ。写真とは違う。心のこもった優しい絵だ。いつかこの絵をまた見たとき、これであぁこんな状態だったなと振り替えることができる。これはウチの前で描かれたんだ絵なんだと自慢できる。本当にありがとう」

同じだ、全く同じ言葉だ。
今入っている被災地で被災者自身から私が常々言い続けてきた言葉のすべてを聞くときが来るなんて。

この活動は被災者を直接支援するものではないとして、行政や自治体・クラウドファンディングを含む全ての団体から、助成や援助の対象とは認められないと、一歳援助が受けられていない。

後ろ盾になるものは一つもなく、被災地に心の記録を残すために生活の殆どを投げ捨てて活動し続けているのに、被災地以外の人たちからはずっと冷たく冷ややかな言葉を浴び続けてきました。

しかし、被災者にはしっかりこの思いが伝わっていたのです。
この活動が日の目を見ることは多分生きているうちにはないだろうと思っていた私にとって、この言葉は今受けられる中では最大の賛美でした。

気づくと目がら涙が溢れ出ていた。
全てが救われた気がしたのです。

なんとかこの活動を続けたい。
被災地の復興を願い描き続けなくてはいけない。

しかしその思いとは裏腹に、もう限界は目の前にきている。