「Eちゃん~!Eちゃん~!おはよー!Eちゃん~!もう来てる~?」ちょっと遅れて登園した年長さんがおひさまさん(0歳児)の部屋の前で声をあげています。「来てるよ~、今おむつ変えてた~」お尻をきれいにしてもらったEちゃんを抱きかかえて顔を見せると「きゃー!Eちゃん、おはよー!今日もかわいい!!」手を振り黄色い歓声をあげ、年長さんもウキウキと自分の部屋へと戻っていきます。

 

 オープンスペースのような作りになっている保育園は、他のクラスの様子がよく目に飛び込んできます。

 例えばそらのこさん(4・5歳児)が朝の集まりをしていると、散歩に行こうと小さいクラスの子ども達が傍を通り過ぎていきます。ギュッと集中して話し合いをしている大きい子たちの様子に小さいながらも口をつぐんでみるけど、視線はやっぱりお兄さん、お姉さんたちの元へ。散歩に出かけるつもりが、気が付けばちょこんと話し合いの輪に加わっていたりなんてことも。

 

 午前中はクラス毎、年齢別に活動しますが、食後やお昼寝後は大きい子から小さい子までいつも一緒に過ごしている朝市っ子たち。0歳児でさえ、自分の欲求として“あっちの部屋に行きたいよ!”と戸を開けてコールがはじまります。ただ可愛がられていることが嬉しい時期から、段々とその手を払いのけて行動する時がきます。それまで「こうすると楽しいよ」と保育士が仲立ちして関わりをつくっていきますが、その時になって大きい子はやっと、小さい子は自分の欲求を満たすおもちゃではなく、自我を持ったひとりの人間なんだと確信し、ますます可愛く思えるようです。

 言葉でのコミュニケーションが取れない相手にでも、「〇〇したいの?」と問いかけ、その反応から「〇〇したいんだって!」と嬉しそうに保育士に伝え、願いを叶えようとする姿があります。

 小さい子の思考・行動を読んで、「あ、コレここにあると赤ちゃん危ないよ!」とお互いに声かけ合い、はさみやテープカッターなどの扱いにも気を配る場面も見られます。

 

 どろんこさん(1歳児)やかぜのこさん(2歳児)にとっても大きいそらのこさんは特別です。同じクラスの中ではお互いぶつかり合いどうしても譲れないという場面もありますが、そんな時は、お姉さん・お兄さんに助けをもとめます。そして、頼もしく受け止め、解決してくれる大きい子たちを目の当たりにする日々は、「大きくなって、そらのこさんみたいになりたい」とあこがれの思いを膨らませていくのです。こうした憧れが、チャレンジを恐れないたくましい心を育てていくように思います。

 

 年長さんになるといつの間にかその思いやりは、小さい子だけにではなく同じクラスの仲間たちにも存分に向けられます。もちろんいつもいつもではありませんが。それでも給食配膳のお当番活動では、込み入った作業は年長さんが率先してやったり、年中さんにアドバイスやフォローをさりげなくしてくれたと・・・。

 

 クリスマス会に向け、年長さんは毛糸で代用した“裂き織り”で大きな靴下をつくりました。四角い織物を、4枚織りつなぎ合わせます。はじめの頃は、自分との葛藤の日々でしたが、周りをみる余裕ができてくると、見せ合ったり褒め合ったりが始まりました。しかしこの時期、感染症が流行りだします。スタートでだいぶ遅れととったMくんは気持ちはあるもののなかなか進みません。クリスマス会が目前になるとみんなも自分の手を進めながら心配でたまりません。Mくんがいる時もいない時も「大丈夫かな~」「大丈夫だよ!」「だってMくん、病気だったんだから仕方ないよ。しょうがないよ。」「大丈夫だって。なおみ(担任)がいるから!」

 クリスマス会当日、Mくんを含め年長さん全員の大きな靴下とリースが下げられました。歓声があがり喜びのジャンプが止まらなかったのは言うまでもありません。

 自分の思いをいつでも受け止めて欲しい気持ちがとても強かった年長さんたち。クリスマスを迎える頃には、自分以外にも柔らかい視点で目を向けれるようになっていました。

 

 昨今、子育て環境は豊かではなくなっています。もちろん“物”に困ることはなくなってきたでしょう。でも小さな家族形態で、地域とともに子育てしていくのも難しくなっています。お父さん、お母さんにかかる子育ての重圧は年々重みを増しているように思います。

 保育園という、異年齢が生活する場ですから、みんなが兄弟のように在ることで子どもたちも少しだけ豊かに育ってくれるのではないでしょうか。私たち保育園にできることの可能性はまだまだあります。

 

 

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