【プチ講座】読み解きから始めよう

私はときどき「カメラマン」と呼ばれるが、それは時に正しく、時に誤りである。何らかの依頼を受けて、撮影記録のみを担当する場合はカメラマンだが、企画制作を行う場合は「カメラマン＋ディレクター」＝ビデオジャーナリストである。最近では、取引そのものを兼任する場合も多く、その場合は「＋プロデューサー」ということになる。

日本では「メディアリテラシー」が矮小化して捉えられており、撮影や編集の技法を学べば、映像作品が作れると信じている人は多い。しかし、これは大きな間違いだ。

映像作品の企画を考えるのも、取材をするのも、編集をするのも、多くはディレクターの采配による。テレビ報道の世界でも、制作プロセスの全てにかかわるのはディレクターであり、カメラマンは技術者として単に取材日に技能を発揮するだけで、編集マンも同様。報道特集は、単に事実を記録しているのではなく、問題意識を持って、ねらいを軸としながら作られる。

が、なぜかそういうことを教える講座はほとんどない。あるとすれば、プロが自らの経験を敷衍して語る講座くらいのもの。企画制作全体を理論的に整理し、後発教育してきたのは、残念ながらおそらく私だけ。実にお寒い状況だ。

撮影という行為は、確かに人目に触れるし、特殊な機器を使うという点で、映像制作の象徴のように思われるのは無理もない。だが実は、制作全体からすれば氷山の一角にすぎず、「映像技法を学ぶ＝メディアリテラシー」ではない。

本来のメディアリテラシーの目的は、専門家教育ではなく、メディアを批判的に捉えるための学だ。「リテラシー」とは「読み書きの能力」を示すが、日本の一般的な講座は「書き」だけを教えようとしているのが大きな誤りだ。

したがって、MSOで今後予定しているワークショップも、まず「読み解き」を基礎とする。カメラも編集ソフトも不要。普段見ているテレビや映画を分析する「視点」を提供する。一般的なワークショップのイメージとは異なるかもしれないが、この基礎講座は受講者からは「目からウロコ」と評判である。

今回のリターンのなかにもこの基礎講座受講権が含まれている。これを選んだ皆さんは楽しみにしていてほしい。今までのメディア観があっという間にひっくり返るはずだ。そして、メディアリテラシーが万人にとって必要な共通認識であることを知るだろう。メディアによる社会改革を目指すのであれば、まずはそこから始めなければならない。