支援総額
目標金額 610,000円
- 支援者
- 61人
- 募集終了日
- 2015年11月27日
「花は咲く」花は咲くプロジェクト
大槌町の仮設に通うようになって、数ヶ月が経過しました。宮古市と同じ岩手県三陸地域とは言え、車で一時間の距離を南下した土地では、言葉使いや習慣など、様々な面で違いがありました。特に私が訪問した仮設のひとつは、大槌湾に面する漁師町だったこともあり、住民同士で交わす会話内容がまるで喧嘩のように聞こえたり、本人を目の前にして悪しざまにモノを言う様子は、とても驚きました。また、誰が言わなくとも音楽が鳴ればすぐに立ち上がって、手足をひらひらさせながら踊りをおどる人もたくさんいました。感情表現はストレートで、遠慮が無く、しかしそれがかえって小気味良く思えました。
口は悪いのですが、いったん親しくなると世話焼きが多いので、我々は何度も食べ物やおみやげを持たされました。九十歳を越えた女性は、私が部屋に送り届けると
「他の人に見えないように、すぐ車に運んで」
と言って、350ccのビール6缶を渡そうとしました。最初のうちは丁重に断っていたのですが、ぐいっと手に押し付けてドアをばしゃんと閉めるので、そのうち諦めて頂戴するようになりました。
また、イカの酢漬けや胡麻を炊き込んだおにぎり、紫蘇ジュースなど、この土地ならではの美味しい食べ物を知ることも出来ました。一番驚いたのは、お盆の時期になるとあちこちで聞こえてくる「小豆ばっとう」の話です。
「小豆ばっとうの“はっとう”は、内陸で言うところのひっつみ(すいとん)ですよね」
私がそう聞くと、ビールをくれた女性が
「はっとうは、ひっつみよりもっと細長いの。うどんみたいに。お盆が近づいた8月7日に食べ始めて、お盆までに8回は食べないといけない風習があるのよ。一回食べるごとに、近くの川に行って水浴びするの」
それは風習と言うより、儀式なのでは‥と私は思いました。我々も一度だけ、小豆ばっとうをご馳走になりましたが、小鉢に一杯食べるとかなり満腹になりました。
どこの仮設もそうですが、日中に仮設集会所(談話室)に集まってくるのは、仕事が無い(もしくは休みの多い)高齢の、特に女性ばかりでした。大槌町の仮設でも、六十代から九十代までの女性ばかりが集まり、まるで井戸端会議のようにあーだこーだと喋りながら活動をしていました。前述のように、会話している様子はまるで口喧嘩なのですが、元々同じ集落に何十年もご近所さんとして暮らしていた仲間同士なので、遠慮が全くありません。歯に衣着せぬ物言いと、きっぷの良さは惚れ惚れするほどでした。
そんな彼女たちに人気だったのが、アシスタントなすちゃんです。彼は(増減はありますが)ふくよかな体型にアンパンマンのような丸顔、冬でも裾の短いズボンを履いていて、あまり被災地ボランティアとか復興支援関係者という雰囲気はありませんでした。そして私が冗談で活動冒頭に良く言っていた
「一日に五回しかしゃべりません」
の言葉通り、寡黙で引っ込み思案なのですが、いったん仕事となると、私がどんな無茶振りをしても、きちんとこなしてくれる律儀さがあります。ずんぐりと太い体で、私の指令通りにひょうきんな踊りをするなすちゃん(皆さんからはお兄さんと呼ばれています)は、女性たちの絶大なる支持を集めました。お腹を触ったり、隣に座りたがったり、マスコットとしては超一流です。
なすちゃんが人気だったのは、高齢の女性だけではありません。子どもたちからも「トトロ」と呼ばれたり、サッカーに誘われたりと、この頃は彼も子どももお互いにリラックスして接することが出来るようになりました。仮設巡回の初期に、子どもから不審者呼ばわりされてダウンしていたのが嘘のようです。
その漁師町にある仮設で、ある日おばあちゃんに連れられて小学校低学年の男の子がやってきました。最初は恥ずかしがっておばあちゃんの背中に隠れていたのですが、横に座ったなすちゃんがだんだん気になってきたのか、腕を掴んだり、覆いかぶさったりとじゃれあうようになりました。
「せっかくだから、ブラブラ遊びしてあげようか」
と私は懐メロの合間に立ち上がりました。ブラブラ遊びとは、大人が二人がかりで子どもを挟み込み、片方が両手、片方が両足を掴んでハンモックのようにブラブラ揺らす遊びです。彼はこの遊びがいたく気に入ったらしく、何度も何度も要求してきました。
「ほら、お兄さん達が疲れちゃうでしょ!そろそろやめなさい」
おばあちゃんに促されて、しぶしぶ彼は座り、再びなすちゃんの腕にまとわりつきました。その後、子どもでも耳にしたことのある歌は何か無いかな、と思ってリストを探していたら、参加者から
「NHKで良く流れてるから、あれ歌えるんじゃない?花は咲く」
との声が出て、最後に皆で歌いました。肝心の小学生男子は歌そっちのけで、なすちゃんに夢中でしたが。
活動後、その子はテレビを見に仮設の部屋まで走って帰っていきました。後に残ったおばあちゃんに話を聞くと、彼のお父さん(つまり、彼女の息子さん)は津波の犠牲になり、今はおばあちゃん、お嫁さん、お孫さんの三人で仮設暮らしなのだそうです。まだ小学校に上る前にお父さんを失った彼は、何ヶ月も泣きながら生活をしていたと言います。
「最近はやっと笑顔になったんだけどね、でも子供会のイベントでずっとホースから水を出していて、どうしたの?って聞くと、虹を作っていたって言うの」
「虹、ですか」
「虹が出来れば、きっとお父さんが会いに来てくれるって、そう言うの」
この日の最後に歌った「花は咲く」は、被災地に住む人々にとって「これは私たちの歌だ」と実感できる、心の拠り所のような歌でした。私はそれを上手に歌う(伴奏を弾く)自信が無かったので、それほど活動中には取り上げて来なかったのですが、仮設に住む皆さんと声を合わせて歌うと、じんわりと心に響くものがありました。
どこかで、この歌詞は「津波で亡くなった方の視点から描かれている」と知りました。私はずっと被災地で懸命に生きている人々を支援するために活動を行ってきたので、亡くなった方に対する追悼、もしくは鎮魂という視点は持ちあわせていませんでした。しかし、残された人は今もずっと亡くなった方の魂と共に暮らしています。小豆ばっとうを何回も食べ、水浴びをする習慣も、彼らの「亡くなった人を悼む気持ち」によって大事に受け継がれてきたのだと思います。
リターン
3,000円

①お礼状(ポストカード)
- 申込数
- 34
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2016年2月
10,000円

①お礼状(ポストカード)
②写真集1冊
③当法人ホームページへお名前の記載
(掲載を希望されない場合はご連絡下さい)
- 申込数
- 20
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2016年2月
3,000円

①お礼状(ポストカード)
- 申込数
- 34
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2016年2月
10,000円

①お礼状(ポストカード)
②写真集1冊
③当法人ホームページへお名前の記載
(掲載を希望されない場合はご連絡下さい)
- 申込数
- 20
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2016年2月

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