「貧困根絶!グローバル連帯税実現…」プロジェクト終了です!
【 「張り切って!」活動できたのもみなさまのご支援の賜物 】
「貧困根絶!グローバル連帯税実現のため世論にアピールしたい!」プロジェクト(以下、プロジェクトと略)をご支援してくださいましたみなさま、グローバル連帯税フォーラム(以下、フォーラムと略)の田中徹二です。
本年3月27日から4月27日まで支援ファンドを募集させていただきましたが、みなさまのお陰で予定額をクリアーすることができました。そして、5月1日からプロジェクトがはじまり、6か月後の昨日(10月31日)をもって終了しました。
この6か月間、研究会やら国会議員へのロビイングなど、みなさまからのご支援で、例年になく「張り切って!」活動することができました。あらためて感謝いたします。ところで、ご承知のように、突然国会が9月28日に解散され、10月衆議院選挙(同月22日投開票)が行われ、活動の方も若干修正を余儀なくされました。
実は、後で詳しく報告しますが、政府の2018年度税制改正の動きは例年ですと9月末から本格化するのですが、今年は衆議院選挙があったためひと月後ろのほうにずれることになります。もとより、フォーラムは(みなさんのご支援を得て)9月からの政府の税制改正の動きにアプローチすべく準備してきました。従いまして、グローバル連帯税を世論にアピールする活動もこれまでの準備とその成果を踏まえつつこの12月まで続けることになります。
この世論へのアピールが花開き、グローバル連帯税が--当面は航空券連帯税が--次年度から実施されるよう引き続き努力していきたいと思っています。このように長期間頑張れるのもひとえにみなさま方から支援があったればこそ、です。重ねて御礼申し上げるものです。《写真は、10月4日第2回研究会のもよう》
【 プロジェクト実施のプロセスと結果について 】
プロジェクトは次の4本柱を掲げ、5月7日の第1回研究会を皮切りに実践に入りました。プロセスと結果について、それぞれ報告します。
1)2回の研究会の実施(グローバル連帯税とSDGs、タックスヘイブンと税逃れ問題)
2)グローバル連帯税推進協議会「最終報告書」の小冊子づくりと関係者への配布
3)主に国会議員を対象としたロビイング活動
4)WEBサイトの充実化
1、2回の研究会の実施
第1回研究会は「持続可能な開発目標(SDGs)とグローバル連帯税を考える」というテーマで、5月7日東京医科歯科大学のセミナー室で開催しました。講師は、稲場雅紀・SDGs市民社会ネットワーク代表理事、金子文夫・横浜市立大学名誉教授で、この分野の第一人者の方々です。当日の講演資料は以下のURLから入手できますので、ご参照ください(質疑を含めての報告はリターン類の中に入れました)
・「SDGsこの一年 そして今、すべきことは?」…稲場雅紀・SDGs市民社会ネットワーク代表理事
・「グローバル連帯税の可能性」…金子文夫・横浜市立大学名誉教授
研究会には、専門家、ジャーナリストを含む市民35人が参加し、予定時間を超えて議論が行われました。《右の写真は第1回研究会のもよう》
第2回研究会は、「BEPSプロジェクト-進捗と課題」
というテーマで、10月4日参議院議員会館会議室で開催しました。講師は、パスカル・サンタマンOECD(経済開発協力機構)租税センター局長で、OECD(経済協力開発機構)やG20諸国はもとより途上国を含む世界100カ国が参加するBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの責任者です。
BEPSプロジェクトとは、アップルやスターバックスなどグローバル企業によるタックスヘイブン(租税回避地)などを利用した税逃れに歯止めをかけるためのプロジェクトです。一昨年秋に最終報告書が発表され、現在、各国はその内容に沿って、国内法の改正や租税条約の改定に取り組んでいます。今回の講演はその進捗状況と課題についてお話していた
だきました。
現在、最大の課題となっているのは電子経済(電子商取引)への対応で、物理的な経済活動が存在しな い拠点に対する課税をどうすべきか、という点には国際的に合意することができず、現在も検討・研究が続けられている、とのことです。また、途上国にとっては(税収そのものが少ないうえに)法人税が主たる基
幹税となっており、進出したグローバル企業等から税金を徴収できなければ、貧困対策や社会保障に使用する財源がいっそう不足することになり、深刻な問題となっています。当日のサンタマン局長の講演は、次のURLから入手ください。
・「BEPSプロジェクト-進捗と課題」…パスカル・サンタマンOECD租税センター局長
サンタマン局長の超過密スケジュールの中でなかなか日程が決まらず、従って日時が決まってからの広報が遅れたことや午前中の開催にもかかわらず、専門家やマスコミ関係者など市民30人が参加しました。午後すぐに局長はニューヨークに立つとのことでしたが、午前中ギリギリまで議論が続けられました。
2、グローバル連帯税推進協議会「最終報告書」の小冊子づくりと関係者への配布
グローバル連帯税推進協議会の最終報告書である『持続可能な開発目標の達成に向けた新しい政策科学 ―グローバル連帯税が切り拓く未来―』は2015年12月に公表されました。
グローバル連帯税推進協議会は「国際連帯税創設を求める議員連盟」(会長:衛藤征士郎衆議院議員、以下議員連盟と略)から研究・検討を委託され、寺島実郎・(財)日本総合研究所理事長(当時)を座長に専門家・NGOから構成される協議会でした。これには、各省庁(外務省、財務省、金融庁、環境省)からもオブザーバー参加をしていただきました。
最終報告書の企図は、国際社会がミレニアム開発目標(MDGs)から持続可能な開発目標(SDGs)へとシフトするにあたり、深刻化する地球規模課題の解決のために、持続可能な開発分野、気候変動分野に大別して必要な資金の見積もりを行い、第三の財源(公的資金、民間資金とは違う)であるグローバル連帯税の必要性を主張するものです。具体的には、航空券連帯税や金融取引税を提言しています。
この報告書は、グローバル連帯税の最新知見をまとめたものであり、実は本年3月外務省が「国際連帯税を導入する場合のあり得べき制度設計及び効果・影響の試算等」という委託業務の結果を公表しましたが、内容はほぼこの報告書を踏襲しています(検討委員会が昨年12月に設置され、座長は寺島実郎氏でした)。
・外務省「国際連帯税を導入する場合のあり得べき制度設計及び効果・影響の試算等」
以上から、最終報告書を小冊子(ブックレット)として記録を残すことはたいへん重要でした。6月中に300部無事印刷を終え、まず議員連盟の役員を務めている国会議員30数名に配布するとともに、メディア関係者・NGOに配布することができました。
なお、6月末までにリターン類(御礼の手紙、小冊子、研究会報告、合同出版本『世界の富を再分配する30の方法』)を郵送させていただきました。
3、主に国会議員を対象としたロビイング活動
航空券連帯税などグローバル連帯税を実現する道筋は、まず主管官庁である外務省が次年度税制改正要望で(税制)新設要望を出し(8月末)、その要望が与党の税制調査会で議論され、「次年度税制改革大綱」に盛り込まれる(12月末)、というプロセスをたどります。その後、翌年の通常国会で法案化されたものを可決し、実施ということになります。従って、実現の道は、2つの山場を越えなければなりません(形式上はこの2つですが、今日では税制改正に関して官邸の決定力も強くなっていますので、越えなければならない山は3つということになります)。
ひとつの山場である外務省の新設要望については、個別的に、また議員連盟とともに7月、8月と外務省に要請してきました。その結果、外務省は国際協力を使途とする資金を調達するための税制度の新設として「国際連帯税(国際貢献税)」というグローバル連帯税の要望を提出しました。
次の山場は、与党の税制調査会と官邸となりますが、6月から7月にかけて、先の小冊子配布ともかねて30数人の議員事務所を訪問し、議員や(不在の場合)政策秘書の方にグローバル連帯税について語ってきました。そして、9月に入り衛藤会長から、①議員連盟を強化するために自民党三役(幹事長、政調会長、総務会長)に役員になってもらう、②(例年ですと)9月末から開催される臨時国会中に官邸に申し入れの行動を行う、との方針が伝えられました。いよいよ次の山場に向かって動きだす体制ができつつありました。が、先に述べましたように、突然の衆議院解散との報が安倍首相から伝えられ、9月、10月と国会はストップしてしまいました(次の山場に向かっては、11月からはじまることに)。
この直接のロビイングを側面から支えるのが、国会議員向けのニュースレターの発行です。5月に『g-tax news letter 国際貢献・連帯税』第1号(通算13号)を発行し、全国会議員712人(当時)に配布しました。当初の予定では5回発行する予定でしたが、9月、10月と国会が開催さないため3回の発行に留まりました(プロジェクト実施期間は終了していますが、11月からまた再開します)。
4)WEBサイトの充実化
WEBサイトの充実化については、2つ試みました。ひとつは、タックスヘイブン・租税回避問題の活動を行っているタックス・ジャステス・ネットワーク・ジャパン(TJN-Japan)のWEBサイトの新設です。TJN-Japanはグフォーラムはじめ国内の公正・公平な税制を求める諸団体によって構成されていますが、フォーラムはWEBサイト構築を担っていくこととなりました。もうひとつは、フォーラムのWEBサイトのリニューアルです。
・TJN-JapanのWEBサイト ・グローバル連帯税フォーラムのWEBサイト
どちらのWEBサイトも、まだ部分的で完成していませんので、ビジュアルでかつ読みやすいWEBサイトにするために引き続き挑戦していきます。
【 ご支援いただいた資金はこのように使いました 】
収入は、クラウドファンディングによる339,623円でしたが、全額をプロジェクトに使わせていただきました。収支は以下の通りです。
●収入:339,623円
・クラウドファンディングによる資金 339,623円
●支出:339,623円
1)2回の研究会に、講師料や通訳料などで、101,900円使いました。
2)最終報告書の小冊子づくりに、印刷・製本代やイラスト代などで、89,100円使いました。
3)ロビー活動に、ニュース発行や議員への戸別訪問、渉外活動などで、52,500円使いました。
4)WEBサイトの構築に、50,000円使いました。
5)その他の経費に、書籍購入代、通信・印刷代などで、46,123円使いました。
【プロジェクトを終えて:課題と今後】
1)課題について
実はこの「世論にアピールするプロジェクト」の最大の山場を、議員連盟が官邸に申し入れ行動を行う時期(10月頃)と設定していました。世論へのアピールの仕方としては、今日SNSを使うという方法もありますが、一般的な方法としてはマスコミにグローバル連帯税のことを取り上げてもらうことです。そういう意味で、自民党から共産党まで参加している超党派の議員連盟が、首相に対してグローバル連帯税を求めて行動する、というのがマスコミ的にももっとも取り上げられやすいイベントである、と考えたからです。
しかし、先述したように衆議院選挙が入ってしまい、政治地図もずいぶん変わってしましました。また、国会開催期間がまだ分からない状況です。いずれにしましても、議員連盟と相談しつつ、(プロジェクト期間中やり残した)官邸申し入れ行動を実現するために準備を進めたいと思っています。
2)今後について
今後については、上記議員連盟の官邸申し入れ行動の実現のため活動することですが、現在ちょっとややこしい問題が起きています。それは国内観光資源の財源を確保するために「出国税」を導入しようという動きが強まっています。実は、国際線の飛行機を利用する人にかかる出国税は、仕組み的には航空券連帯税と同じです(日本から出国するときに航空券に税がかかる)。もし出国税が実現してしまいますと、航空券連帯税実現のハードルが高くなりますので、この動きに対処していかなければならず、現在このことで活動中です。
また、12月3日にシンポジウム「税と正義/グローバルタックスと税制改正」を、フォーラムと民間税制調査会との共催で開催します。その企図は次のようなものです。
今日日本のみならず世界的に排外主義的なポピュリズムが台頭していますが、この背景には経済のグローバル化による格差・不平等の拡大という問題が横たわっています。従来、格差・不平等の拡大を曲がりなりにも抑えてきたのは、税による所得の再分配政策でしたが、その機能が現在弱まっていると言えます。あらためて「税は人間の尊厳を維持するためのシステム」になりうるのかという原点に立って、「税と正義」の問題について考えます。また、現実の税制--金融取引税などグローバルタックスと国内の税制改正--の現状について、ならびに課題についても考えます。
この分野の第一人者が講師としてお話してくださいます。ぜひ参加くださるよう呼びかけます。
・12.3シンポジウム「税と正義/グローバルタックスと税制改正」
以上、プロジェクトの報告を終えたいと思います。長文にもかかわらず、最後まで読んでいただきありがとうございます。最後の最後に、重ねてプロジェクトへの資金援助に心から感謝するとともに、みなさまの有意義な活動に敬意を表します。ありがとうございました!