ネパールで和食料理教室を開設し、生活困難な料理人の技能向上を

こんにちは。
今日は私が女将を務めます「だんらんレストラン」のお話を少し。

バンダ（ゼネスト）中の街。普段は渋滞している道が車両ゼロ

今日は「バンダ」と呼ばれるゼネラルストライキです。そのために各種公共交通機関、個人車両共、通行を禁止されています。ネパールはいまだ政府が安定しておらず反政府抗議活動として「バンダ」がしばしば行われます。
この時は交通機関だけでなく、あらゆる営業活動もストライキへの参加を強要され、これを無視して営業をしていると投石などの被害にあう場合もあります。
私たちのレストランはその時々の危険性を見極めて、できるだけ営業する方針でこれまでやってきました。そこには私の「働く権利を守る」という信念があるからです。

従業員たちは経済的に余裕のない家庭出身のものが圧倒的に多く、得た給料はほとんどが家族のために消えてゆきます。それでも彼らは朝早くから夜遅くまで本当によく働きます。
小学校を中退した者は10代のころから、寒い冬でも冷たい水で皿を洗い、床を磨き、そうしてようやくここまで来ました。（この頃は少し余裕が出てきたようで、ちょっとおしゃれもするようになりました。）彼らは自分の力でここまでやってきたのです。そんな彼らの働く権利を侵すことは許しがたいと思うのです。

けれど今日はふと立ち止まって考えてみました。これは私の独りよがりになっていないかと。そこでスタッフを招集してミーティングを開き一人一人に尋ねてみました。
「今日の営業はどうしたらいいと思うか？」
「閉めましょう」というものは一人もおらず、「危険があるようなら、来たお客様をこっそり受け入れましょう」との答え。
「なぜ、リスクがあるのにそこまでするのか」と意地悪な質問をしました。
「お客様の為、売り上げの為、休むと働く意欲がなくなる」との答え。
これまでスタッフには「一日休むとみんなの給料はそれだけ下がる。ウチのお客様はウチのごはんが食べたくてわざわざ来てくれるのだから、帰らせることはできない」と指導してきました。信念についての話は難しすぎて理解できないだろうと思っていたのです。しかし、今日は時間をかけてゆっくりと私たちの考えを伝えてみました。

「君たちはこれまで誰にヘルプされるわけでもなく、自分自身で一生懸命働いて頑張ってここまで来た。仕事をするかしないかは、君たちが決めることで、誰かが“仕事をしてはいけない”と言うことはできないのだよ。これは君たちの『働く権利』なんだよ」と。
一人のスタッフはよく理解したようでしたが、ほかのスタッフは初めて聞く話に「えっ」という顔をしていました。

今日の話が、どこまで理解できたかはわかりませんが、今日わからなくても時間をかけて理解できればいいと思っています。「働くことは強制ではなく、権利である。」と。それが理解できた時、働くことが喜びになり、彼らはまた精神的に成長してゆくのだと思います。

今日のミーティングの場に一人スタッフが欠けていました。彼は昨日遅くに叔母さんが急病になり病院に連れていくために、カトマンズの郊外に住む叔母さんの家に昨夜から行っており、今朝の電話では「病院に入院させたらその足で職場に行きます。」とのことでした。
今日はバスも走っていないので、彼は今、歩いて3時間の道のりを徒歩でこちらに向かっています。

頑張れみんな！

「だんらん」の様子はfacebook でご覧になれます。
https://www.facebook.com/danranrestaurant/