こんにちは、矢田@インドネシアです。

 

プロジェクトの終了まで48時間を切ってしまいましたが、ご関心をお持ちいただけた皆さんにお伝えしなければならないことがまだまだ残されています。

今日の記事では、この「熱帯林の恵みで村おこし ヤシ砂糖を使った生姜湯を作ろう!」というプロジェクトを実施することになった背景、森と人との共存に向けた取り組みにについて紹介しようと思います。

 

 

これまでの記事で触れたように、国立公園内での居住や耕作といった人為攪乱を認めない自然保護政策と、実際に人が住んでいる場所が国立公園に設定されてしまう現状との間には、大きな矛盾があったことも事実です。そんな理想と現実とのギャップに悩むインドネシアの国立公園管理ではありますが、世界的にも住民参加による環境保全の重要性が説かれ、数多くの実践がなされる中で、その自然保護政策も大きな変化の時を迎えています。

 


このプロジェクトの舞台であるグヌン・ハリムン・サラック国立公園では、日本政府による幾つもの取り組みが実施され、その管理制度の改善に多くの貢献がされてきました。特にJICA(独立行政法人国際協力機構)を通じて2004年から2009年にかけて実施された協力では、「地域住民と共に生きる国立公園」をモットーに、住民が違法伐採撲滅の為のパトロールを行ったり、荒廃地での植林活動に参加するなどの条件を満たした場合には、既存の田畑での耕作が許されるなど、地域住民と協力しての国立公園保全の制度作りが進められてきました。

 

 

 

 

NGOとJICAとが協働で実施する「草の根技術協力事業」の枠組みを用いて、私自身も2009年から2012年までの3年間、住民参加による国立公園管理の体制づくりに関わることになりました。

 

 

 

 

2009年当時、まさに変化の真っ只中にあったグヌン・ハリムン・サラック国立公園。その管理制度の変更は多くの困難に満ちていたことも確かです。


たとえば、森林管理のスペシャリストとしての訓練を受け、森林伐採や耕作活動など住民の活動を違法行為として取り締まってきた国立公園職員。彼らは政策の変化を受けて、一転して地域住民との協力を命じられ、その方法に頭を悩ませていました。


また、その反対に、それまで国立公園職員による取り締まりの恐怖に常におびえてきた地域住民。農地の差し押さえや住居の立ち退きなどの心配を抱えながら日々を暮してきた人々にとって、急に国立公園管理に参加せよと言われても素直に従うには大きな抵抗があり、公園職員と直に接することにさえ根強い抵抗がありました。


「ネズミがネコを見たら逃げるように、国立公園職員の緑色の制服が見えたら、俺たちは森の中に逃げるさ」。村人の一人が口にした言葉と彼の畏怖が、私には強く思い出されます。畑に植えた作物を引き抜かれたり、森から建材を切り出すと違法伐採者として逮捕されたりと、日々の暮らしが取り締まりの対象とされてきた地域住民にとって、国立公園職員は関わりたくない人達の筆頭だったと言えます。政策の変更に伴って国立公園保全に向けた協力を求められても、「何か裏があるのではないか」と勘繰るに十分な不幸な歴史が、これまでに繰り返されてきたことは認めざるを得ない事実です。

 

 

 

政策が改善され、国立公園を管理する側と地域の人達とが協力できる体制が整ってきたにも関わらず、現場レベルでは未だ感情的な対立が激しく、お互いの歩み寄りが難しい状況を前に、この状況を何とかしたいと強く感じたことが、私がこの地域に関わることになった最も大きな動機です。


私は公園職員と住民との間の橋渡し役になることを意識し、国立公園の保全と地域の人達の生活権の保証に向けて、様々な取り組みを行ってきたました。そのいくつかをご紹介します。

 

 

 

集落で行う意見交換会

住民と公園職員とが座を共にして話し合う場が実現しました。

 

 

 

村の人々が国立公園職員を案内する形で実施した森の調査

共に調査を実施することで、国立公園職員は住民の森林利用の状態を把握し、住民の活動が必ずしも森林破壊に直結しないことを確認していきました。

 

 

 

GPSを使った地図の作成

国立公園制定以前に耕されていた田畑、住民が利用している雑木林、人の手がはいっていない原生林、既に森が危機的状況にある荒廃地など、国立公園内の土地の利用状況を地図化します。

 

 

 

作成された地図

 

地域住民が耕作に利用して良い土地、植林を通して森林回復が必要な土地、水源確保のために保全する森など、地域住民と公園職員との共同作業で地図が作られました。

作成された地図は、国立公園管理計画に添付される、法的根拠を伴った公文書として認めてもらうことになり、地域住民が国立公園管理に参加する体制づくりの大きな成果のひとつとなりました。

 

 


3年間をかけた活動を通じて、住民と公園職員とのわだかまりも解消し、国立公園内の土地利用の明確化とそこでのルール、環境保全に関する住民の役割など、住民参加による国立公園管理の仕組みが定められることになりました。

 


森林回復が必要と判断された地域では、公園職員の指示のもと、村の人々が植林活動を通じて国立公園の保全を手伝うことになりました。

 

 

 

また、村の人達が利用することを許された地域では、森の恵みを使った収入向上活動も試みられるなど、地域の人達の生活基盤を確保する活動が求められるようになっています。

 

今回、この「READY FOR?」を通じて皆さんに支援をお願いしたヤシ砂糖を使った生姜湯の生産活動は、地域の人たちが国立公園と共存し、森を守りながら暮らしを成り立たせていく活動の一部分なのです。グヌン・ハリムン・サラック国立公園で私が関わることになった二つの集落を出発点として、なんとかこの生姜湯「Gulahe」の生産と販売を軌道に乗せたいと考えています。

 

 

「READY FOR?」でのご支援の募集、残すところあと48時間を切りましが、一人でも多くの方に関心をお持ちいただき、この活動を一緒に盛り上げてくださることを願っています。
 

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