【体験とは?】

「近くのお菓子屋はんは、観光客向けの和菓子作りの体験やってますよ。それに物凄い人が来ていて、多い日には観光バスとかで一日で500人くらい来てますよ。その『体験』というのが、ええのか悪いのか。例えば横浜やら新潟やら小学校からも来るんですが、引率の先生に子どもの情操教育をどう思われてるんですかと、聞きますわな。そうすると学校で粘土細工なんかはしないらしいです。私らからしたら和菓子でちょこちょこやっているのはどう見ても粘土細工にしか思えへん(笑)。

 

その体験の場では、朝になったら、あんこ屋はんが缶にあんこ持って入りよると。外の生地は生地で、生地屋はんらが持って入ってくると。和菓子屋はんが来て桜や梅やらちょこちょこ作ったり、茶巾包みとかキュッキュッと作ったりして、入れ替わり立ち替わり子どもらに見せていると(笑)。私にはそれが子どもの創造性を豊かにする情操教育とは思えへんと。我々の一年中もの作っている立場から見てるとなにやっとんのかと、あほとちゃうかと。でもその『体験』は凄い金儲けになってます。」

 

 

【どんどんけったいにいろうたらええ】

「最近の若い人のおかしな着物の着方も、コミック文化に影響されてますな。ああいうものを見続けてると、描いてある着物を簡単に受け入れられる。昔やったら日本髪を結うてたのに、こんな造花の薔薇をボーンと付けたり、レースの飾りを付けたり、着物とは全然無縁と思うんですけど、そういう風にしいひんかったら、ああいうもんは拒絶するんでしょうね。そういう時代なんですよ、今は。」

 

「自分の言うてることと自己矛盾に陥る可能性がありますけど、けったいにいろうて結構やと思うんです。どんどんけったいにいろうたらええと。成人式で花魁みたいな抜きの襟をやったり、そういうんでもええと思うんです。ただね、そういう要望があるさかいに、多分着付けをするとこも、そういう風なもんを一生懸命供給するわけですやん。そういう人も今まで着たいと思ってもなかったわけですやん。それで活性化するのはいいんやけど、その次にどのように仕掛けとして考えるのかが大事。刹那刹那やさかいに、余計に『醜い』となるんでしょうな。入り口としてはそれでいいんやけど、次にそれが習慣として、文化として根付いていくんか、ということまでは考えてはないですわな。

 

(つづく)

 

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