CCBAというバレエスタジオを主宰しています。
MECPの方々には、バレエの発表会で、生演奏でバレエを踊るというという、贅沢な機会を提供して頂きました。

”音楽を聴く”という行為は、”自分の内なる声を聴く”ということです。
そして、忙しい現代、これは、意識しなければ避けてしまう部分です。

音楽を聴く時―音楽に全てを委ねているのではなく、あくまで、自分の耳から入った音楽が、自分自身を通して新しい感情を生み出します。

つまり、音楽は、完成された物として存在しているのではなく、

その人の経験や思い出に寄り添い、精神状態を反映することで、新たな存在感を産み出しているのです。

もし、音楽自体に絶対的な一つの感情が存在するのであれば、誰がどこでいつ聴いても同じように聴こえるはずです。

が、実際はそうではありません。

つまり、音楽は、自分の内側から生れるものだという意識がとても大切で、そう考えると世界が変わります。

そして、バレエの魅力もここにあります。

バレエに魅了されるのは、ダンスに音楽がついているからです。

バレエは、どちらかというと幾何学的なダンスですが、
音楽と一緒になることで、詩的で感動的な美しさが生まれます。

音楽を「耳で聴いて、体を合わせて踊る」ということではなく、「体で感じて、体で音を奏でる」ということがダンサーにはとても大切です。
「体という、この世で唯一の最高の楽器」を駆使し、オーケストラが奏でる生演奏と共に、表現する術を身に付けるべきだと思っています。

今回、MECPの皆さんが演奏する曲は、当時の実際の音声に弦楽四重奏が重なっている作品と聞きました。
この作品を、実際にテロや震災の被災者の方が聴くのと、3歳の子どもが聴くのと、80歳の様々な経験を重ねてきた人が聴くのと…、

決して同じ感情ではないでしょう。

今回、この音楽を聴くことによって、この音楽にどういう感情を抱き、どのような存在感を与えるでしょうか。

そして、自分自身、どう変わるでしょうか。

「パンは命の糧、音楽は心の糧」というように、音楽は、人類の進化の一部を担ってきました。

目に見えない空気の振動の集まりなのに、人々は涙を流したり、癒されたり、元気をもらったりします。
アインシュタイン博士は音楽について、「音楽がなくても人間は生きられる。しかし、音楽のない世界は人間の心を疲弊させる」と言いました。

この疲弊した人の心が、自然破壊や、戦争を引き起こしました。

裏を返せば、皆が音楽を、自分の内なる声を聴くという意識で聴けば、音楽を通して、人々の心を一つにする力を持っているという事です。

一つの音楽から世界が一つに繋がり、言葉も、民族も、国境も関係なく一つになれます。

それは、平和を可能にする力を持っているということです。

たった一瞬で、慣れ親しんだ町並みが壊れ、家族や友人もいなくなる。
そして、避難所や仮設住宅など、全く新しい環境で、これまでとは違う人たちと暮らす。

この、苦しく辛い、そして、過酷な試練を乗り越える為には、

衣食住の整備とともに、被災者の心を癒す行為が必ず必要になります。
その為に芸術や音楽が果たす責任と役割は、悲しみを強さへと変えること。

そして、この試練を乗り越えたなら、誰よりも強く、そして優しくなれるはずです。

そういう意味で、今回のMECPの皆さんによる演奏は、本当にかけがえのない機会であり、素晴らしい時間となるに違いありません。
この機会を、一人でも多くの人に知って欲しい。

そして、音楽を聴いて欲しい。

そこから少しでも何かを感じ、そして、何かのアクションを起こす動機にして欲しい。

そのちょっとした行動、考え、心境の変化…。それが、やがて大きなうねりとなり、周りを巻き込み、心を一つにするための一歩になると信じています。

これから先も、音楽がずっと我々に寄り添っていられるように。

MECPの皆さんの今後のご活躍に大いに期待しています。