映画を通じて、知り考えてほしい。新しいHIV予防法「PrEP」

Q さっそく、PrEPって何のことですか？
— PrEPとはPre-Exposure Prophylaxisの略で、日本語では「暴露（ばくろ）前予防投薬」といいます。これは、現在HIVに感染していないけれども今後感染するリスクが高いと考えられる人が、抗HIV薬を服用することによってHIVに感染するリスクを下げる予防法です。あらかじめ抗HIV薬を継続して内服することで、例えばセックスの相手がHIVに感染していて、もし何らかの原因でその人の体液が自分の体の中に入ってしまっても、ウイルスが増えて感染してしまうことを防ぐことができます。
 

Qどのような人がPrEPをすべきなのでしょうか？

—みんながPrEPをしなくてはいけないわけではありません。海外では、未治療のHIV感染者のパートナーがいる人や複数のパートナーがいる人、最近性感染症に罹患したことのある人など、ある程度感染リスクが高い人だけが対象とされています。またPrEPを始める時点ですでにHIVに感染している人は「予防」ではなく「治療」としてもっと多くの薬を飲む必要があるので、必ずPrEPを始める際にはHIV陰性であることが直前の検査で確かめられている必要があります。さらにPrEP中は3カ月ごとのHIV検査を必ず受け、HIV陰性を確認し続けていく必要があります。

Q どれくらい予防の効果があるんですか？
—男性とセックスする男性を対象とした海外の研究では、毎日内服できた人では最大で90％程度HIV感染リスクが減少することが分かっています。

Q すごい！それだけ効果があるってことは、薬をたくさん飲むのでは？
—たくさん飲む必要はありません。現在海外で実施されている方法は、テノフォビルとエムトリシタビンという薬の合剤（ツルバダ配合錠^®)を、1日1回1錠毎日飲み続けるという方法です。毎日飲み続けないと効果がないだけでなく、耐性ウイルス（薬が効きにくいウイルス）に感染するリスクが高くなるので、注意が必要です。

Qところで、PrEPをすればHIVはほとんど感染しないから、コンドームはいらないんですよね？
— いいえ！PrEPはHIVのみを予防する方法なので、他の性感染症（梅毒や淋病、クラミジア、ウイルス性肝炎など）を防ぐことはできません。実際に海外での経験では、コンドームの使用率が低くなるにしたがって性感染症に罹る人が多くなったという報告があります。したがってPrEPをしていてもコンドームは必ず着用しなくてはなりません。さらにPrEP期間中は定期的に医療機関等を受診し、性感染症の検査を受けなくてはいけません。もし性感染症に罹ってしまったら早期に性感染症に対する治療を受ける必要があります。

Q なるほど、PrEPとコンドームの合わせワザでHIV感染の不安はかなり解消されそうですね。少し気になったのですが、薬を飲むと副作用が出る人もいるんじゃないですか？
—確認しておきたいポイントですね。実は現在海外でPrEPとして用いられている薬（ツルバダ配合錠^®）には、吐き気や食欲低下といった胃腸障害や腎機能障害、さらに骨量減少を起こす（骨がもろくなる）リスクがあることが知られています。多くの人は軽い症状で済み、もし副作用が出ても薬を中断すればもとに戻るといわれていますが、3カ月に一度定期的に医療機関を受診し検査で副作用をチェックする必要があります。また慢性B型肝炎がある場合にはこの薬の中止により急激に肝機能が悪化するリスクがあり注意が必要です。

Q ふむふむ。副作用に注意して使えば、メリットのある方法だと分かりました。そのあたりの具体的な相談もしたいし、今度、病院に行ってみようと思うのですが、何科に行けば良いですか？
—実は現時点（2017年8月末）で、日本ではPrEPはいまだ認可・承認されておらず、PrEPに関する国のガイドラインも作成されていません。もちろん健康保険も使えません。従って現時点で病院を受診してもPrEPを開始することはすぐには出来ません。しかし今後状況が変わり近い将来何らかの形でPrEPが日本でも導入されるかもしれませんので、まずは色々勉強して知識を得ておくことは重要なことだと思います。

Q 先生、詳しくありがとうございます！まだまだ聞きたいことがたくさんのですが…
—ここでは解説しきれない内容もあるので、当日の上映会に遊びに来てくださいね。一緒に楽しく勉強しましょう！