早期発見と個別治療最適化で、膵臓がんで亡くなる患者さんを減らしたい

早期発見と個別治療最適化で、膵臓がんで亡くなる患者さんを減らしたい

寄付総額

20,055,000

目標金額 15,000,000円

寄付者
1,002人
募集終了日
2021年9月30日

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2021年09月21日 11:00

【対談#2 前編】パンキャンジャパン 眞島喜幸理事長とともに

 

 

東北大学の古川 徹です。7月2日に当クラウドファンディングを始めてから、残り9日となりました。皆様からのあたたかいご寄付・応援のおかげで、寄付総額が目標金額の1500万円に到達し、現在ネクストゴールの2000万円に向けて挑戦を続けています。心から感謝申し上げます。 

 

今回、膵臓がんの課題解決や、膵臓がん患者さまの支援などにもご尽力されておられる患者会、NPO法人パンキャンジャパン(https://www.pancan.jp/)の理事長、眞島喜幸(まじま よしゆき)様とオンラインにて対談を行いました。私と同じく「膵臓がんの撲滅」への思いで活動され、今回のクラウドファンディングも応援してくださっています。
 

 

膵臓がん撲滅への強い思いを胸に

 

古川:パンキャンジャパン理事長の眞島様には、10年以上お世話になっております。最初に眞島様とお会いしたのは2006年。パンキャンジャパンの立ち上げの時から二人三脚、膵臓がんの患者さまとのコミュニケーションをしながら、日本の膵臓がん研究を牽引していくとの意気込みで、それぞれの立場から取り組んでまいりました。

 

思い出深いのは、2007年にアメリカで行われたパンキャンサミットへ眞島様とともに向かい、アメリカのトップの研究者や、パンキャンのアドボケーター(患者様の意志を代弁する方々)とお話しさせていただいたことです。その時から、日本でもアメリカのパンキャンに追いつくようにと、眞島様と頑張ってきました。

 

眞島:私と膵臓がんの出会いは2004年の夏、「膵臓がんが見つかった」という妹からの電話でした。私はその当時アメリカに住んでおり、アメリカでは膵臓がんの情報へたくさんアクセスできました。しかし妹がいる日本では、膵臓がんのさまざまな情報を探しても、なかなか出てこなかったのです。

 

当時はがん対策基本法もできておらず、がん難民があふれている中で、その中でも悲惨だったのが膵臓がんの患者さんだったのではないかと思います。今でこそ、進行した膵臓がんの5年生存率も9%ですが、当時は5%しかなく、余命3ヶ月です、6ヶ月です、と告知されて患者さんが亡くなっていました。妹をそのような悲惨な目にあわせたくない、なんとかできないか、と家族で焦って必死になっていたことを覚えています。

 

妹は当時の標準治療を受けることができ、よく効いたほうでしたが、残念ながら1年半後の2006年4月に亡くなってしまいました。そのとき悔しかったことは、中学生の息子、私の甥を残して亡くなってしまったことです。妹は、この子が育って大きくなるのを見たかったんだろうなと思います。その経験から、「膵臓がん撲滅」のために何かできないかと、アメリカのパンキャン( Pancreatic Cancer Action Network:略称PanCAN)を訪れました。

 

 

眞島:アメリカのパンキャンは、膵臓がん患者さんのご遺族の手によって作られ、その目標は「膵臓がんの撲滅」です。膵臓がんという言葉をこの世の中からなくしたいという、本当に強い思いをもった方々が運営しています。やはり、膵臓がんの撲滅には、膵臓がんの研究を進めなければならず、「研究支援」を第一のミッションに掲げています。

 

私はその後、パンキャンの唯一の海外支部であるパンキャンジャパンを立ち上げました。日本でも、膵臓がんの研究を推し進めていただけないかということで、その領域の第一人者の古川先生にご相談させていただきました。

 

膵臓がんの研究を進めるためには

 

− 膵臓がんの研究における課題点は、どこにあるのでしょうか?

 

眞島:古川先生は、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学とも繋がりがある先生でして、日本のがん研究をリードしている先生です。パンキャンサミットでもご一緒し、そこで先生と日本の現状と課題についてご相談させていただいたのですが、研究予算が足りないため、米国で学んできた研究者が日本にもどっても研究ができないこと、そのため研究者が日本では育たないことが問題だと指摘されました。アメリカでもやはり膵臓がんの研究が少ないために研究者が少ないことが問題になっていました。

 

膵臓がんの研究フィールドを育てるためには、若手の研究者にどんどん入ってきてもらわなければなりません。しかし、現状はご家族のどなたかが膵臓がんで亡くなり、残されたご家族のひとりが、膵臓がん撲滅を目指して研究に取り組まれている状態です。本当のあるべき姿というのは、きちんと研究フィールドがあり、そこに研究者の方がたくさん入ってこれる、研究で生活できるくらいの予算がついていなければなりません。

 

 

眞島:日本には世界最大の膵臓に特化した学会、日本膵臓学会があります。膵臓がんに関連した先生方が4000人ほど登録されており、かつ、日本では膵臓がんは胃がんとならんで国別年齢調整罹患率ではトップ5に入るがんです。当然日本がこの研究フィールドをリードしなければいけないのですが、なかなか研究予算がつかないという課題があります。

 

パンキャンでは『ナショナルアドボカシーデー』という活動を始め、膵臓がんの研究に予算をつけてください、というロビイング活動を進めています。ただ、メジャーな癌の研究費と比較しますとまだまだ研究費が足りません。ロビイング活動の結果、アメリカ国立がん研究所(NCI)の膵癌研究費がやっと年間195億円の規模になってきましたので、膵臓がん患者一人当たりの研究費に換算すると約32万円となりますが、日本では恥ずかしながらいまだに膵臓がん患者一人当たりの研究費は、約1万5000円と大きく不足しています。

 

 

眞島:今回、古川先生が勇気を出してクラウドファンディングをしてくださっていることは、私たち患者さん、ご家族と一体感がうまれる1つのきっかけにもなりました。ぜひ古川先生にはこれをきっかけに膵臓がんの研究をさらに前に進めて、これからも活躍していただけるとありがたいと思っています。

 

15年以上、膵臓がんの課題と向き合い続けて

 

− 妹さんを亡くされた当時から、膵臓がんを取り巻くさまざまな課題解決に取り組まれる中で、感じておられる変化はございますか?

 

眞島:我々が一番最初に取り組んだことは、アメリカで使われている薬が日本で使われるようになるまでに時間がかかる、という「ドラッグ・ラグ」の問題でした。実は私の妹も、アメリカでは承認された薬が使えず、ドラッグ・ラグに苦しんだ一人です。

 

日本での薬の承認のプロセスは、PMDA(医薬品医療機器総合機構)が担当しているのですが、世界最速の承認を目指して人員なども含めて拡充され、ドラッグ・ラグは以前のように5年はかからず、今は2年くらいでほとんどの新薬が承認されるところまで改善されてきました。

 

一方で、日本の膵臓がんの患者さんがアメリカと同様に必要な薬が使えるかというと、そうではありません。今、日本でもゲノム医療が始まっています。ゲノム医療とは、がん遺伝子パネル検査でどのような遺伝子変異が一人ひとりの患者さんにみられるかという情報をもとに、その遺伝子変異にマッチした薬(承認薬・適応外薬)を投与して治療をするというものです。アメリカでは遺伝子変異にマッチした適応外薬も使えますが、日本では承認されていない薬剤は使えません。

 

さらに問題なのは、日本ではアメリカのようにがん遺伝子パネル検査を膵臓がんの診断時に受けられないのです。アメリカのNCCNガイドラインでは「診断時にパネル検査を受けなることを推奨する」と書いてあるのですが、日本では「標準療法が終わってから受けられる」と制限されており、検査のタイミングが遅すぎるのです。

 

膵臓がんの患者さんで、標準治療が終わってからというと、抗がん剤で体がボロボロになってしまう状況です。その段階で検査を受け、2ヶ月待ってから遺伝子変異にマッチした治療薬があるか調べましょうということですが、膵臓がん患者さんはそんな悠長なことは言えない状況に追い込まれています。ゲノム医療が膵臓がん患者の命を救う有効な手段になるためには、アメリカと同じように、もっと早いタイミングで、診断時にがん遺伝子パネル検査が受けられるように変えていかなければならないと思います。

 

膵臓がんが早期に発見できる未来をめざして

 

眞島:膵臓癌の予後をよくするのは、早期発見が鍵です。今回古川先生が進めてくださっているバイオマーカーの研究、これは非常に重要になってきます。その研究の成果を活用して、膵臓がん患者さんの早期発見に繋げていただければ、とてもありがたいと思います。

 

古川:私は膵臓がんの研究を30年以上続けてきました。この30年、膵臓がんの予後はほとんど変わっていません。我々研究者は本当に忸怩(じくじ)たる思いで日々過ごしています。

 

私の願いは眞島様と同じく、「膵臓がんで亡くなる患者さんをなくしたい」というところです。今回のクラウドファンディングにも関連しますが、眞島様からもお話があったように、早期発見と患者さん個々に即した個別化治療、ということになります。この2本を柱に、クラウドファンディングを進めています。

 

がんの治療で重要な点は早期発見・早期治療であることは、自明の理だと考えられますが、膵臓がんもその通りで、早く発見できるほど予後が良い、ということが明らかになっています。特に膵臓がんでは、全体の予後が現時点で9%、あるいはデータによっては5%という5年生存率が出ています。平均余命は1年〜1年半、やはりそこを改善できる鍵は「早期発見」で、見つかった段階ではもう治療の手立てが乏しいような状況を打開しなければなりません。
 

 

古川:早期発見のためには、早期の膵臓がんがどういうものかを徹底的に調べる必要があります。これまで、膵臓がんの研究は世界規模で進められてきました。もちろん膵臓がんのゲノム解析なども進んでいますが、早期の膵臓がんがどうなっているか、現時点でもあまりわかっていません。

 

それは、早期で見つかる膵臓がんそのものが非常に少ないということが根本的な原因になっています。やはり調べるものがなければ、詳しく調べることもできません。調べるものを見つけていくには、がんばって早期の膵臓がんを見つけていく必要があります。


ここで私たちには大きなアドバンテージがあります。早期の膵臓がんを見つけるという診療技術において、日本は特に優れているのです。世界をリードしているといっても過言ではありません。内視鏡を扱う消化器内科の先生方、放射線科、外科の先生方含めて、日本の医療の力は世界に誇れると私たちは考えています。

 

私たちは、全国の多施設共同で早期膵臓がんの患者さんを集めて研究を行いました。200例の早期膵臓がんの症例を集め、医学的な解析をして、早期膵臓がんの患者さんが臨床的にどういう特徴を有しているかを明らかにする研究を行いました。


これは世界に例のない研究となっており、今回のクラウドファンディングでいただいたご寄付では、この200例の早期膵臓がん切除例を分子病理学的に徹底的に調べ、そこにどういう特徴があるかを明らかにすることで、早期膵臓がんの発見につながるバイオマーカーを特定できると考えています。本研究を進めることで早期膵臓がんの診断が可能になる、それを信じて研究を進めているところです。
 

眞島:私の妹は40代で膵臓がんに罹患しました。アメリカには家族性膵癌登録制度というものがあり、その研究所を訪問したときに、妹の発症年齢が若いことから、私も家族性膵癌の疑いがあり、膵臓がんに罹患するリスクが非常に高いと言われました。日本に戻ってから経過観察をしていただいていたら、ちょうど妹が亡くなって6年後の2012年、私の膵臓に影がでてきたということで、再発リスクを下げるために膵臓の全摘手術を受けました。

 

その時にわかったのですが、私の膵臓の中には、これから膵臓がんになるという「パニンという癌の芽」のようなものが頭部から尾部全体に散らばっていました。実はその病理検査をしてくださったのが古川先生です。私が手術を受けた病院で、病理検査をやってくださいまして、ステージ0の上皮内癌という診断をしてくださいました。

 

その時は膵臓の頭の部分に影があったわけですから、普通でしたら膵臓の頭の部分だけ取り、体部と尾部を残します。ところが、あなたのような場合は膵臓を残すと危ないからと内科の先生から言われ、とりあえず先生の仰ることを信じて、膵臓の全摘をしていただきました。私は膵臓のことについてはど素人ですので、「膵臓がなくても生きていけるんですかね?」という風に質問したくらいです。これが、私の早期発見に結びついた体験です。
 

 

眞島:先生からアドバイスされたのは、家族性の膵臓がんは、膵臓がんの芽がいたるところに出てくる可能性があり、次は早期発見につながらないかもしれないということでした。さまざまな膵臓がんのリスク因子は公表されていますので、それを2つ3つなど複数持っておられる方は、ぜひ膵臓がんを診ている先生にかかっていただき、検査を受けることをおすすめしたいです。

 

私の場合、家族性膵がんの疑いからハイリスクな患者として定期的に経過観察をしていただいたお陰でステージ0で見つけていただくことができました。通常の患者さんはステージ3,4で見つかるのがほとんどで、1,2で見つかることもほぼありません。古川先生もおっしゃっていたように、こうやってステージ1や2、さらにはステージ0で見つけてもらえる国は唯一日本だけだと、アメリカのMDアンダーソンがんセンターの先生もおっしゃるほど、日本はその点に優れています。古川先生が進められている研究も、日本だからできる、重要な研究です。

 

古川:今回のクラウドファンディングでは、特に患者さま、あるいはご家族、ご関係の方からの応援が多く、コメントでも膵臓がんでご家族、ご友人が亡くなられたことから本研究にご寄付いただいている方も多いこと、日々拝読しております。膵臓がんの患者さまから、この研究が必要と思っていただけていることは、私たちとしても非常に心強く思っています。引き続きよろしくお願いいたします。

 

 

==== 治療の個別化についてなど、次回(後編)に続きます。 ====

 

ギフト

3,000


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▽寄附金領収証明書
2021年11月末までに送付します。領収書の日付は東北大学に入金がある2021年11月の日付になります。

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