貧困・格差と闘う思想家ヤニス・バルファキスの名作を翻訳出版したい!

貧困・格差と闘う思想家ヤニス・バルファキスの名作を翻訳出版したい!

支援総額

1,706,000

目標金額 1,500,000円

支援者
172人
募集終了日
2021年2月22日

    https://readyfor.jp/projects/varoufakis-japanese-translation?sns_share_token=
    専用URLを使うと、あなたのシェアによってこのプロジェクトに何人訪れているかを確認できます
  • Facebook
  • X
  • LINE
  • note
2021年01月06日 16:42

バルファキスが語る、パンデミック以後の世界経済②

バルファキスが語る、パンデミック以後の世界経済

ヤニス・バルファキス(聴き手:ロバート・ジョンソン、新経済思想研究所―INET

 

ロバート・ジョンソン みなさん、おはようございます。新経済思想研究所所長のロバート・ジョンソンです。本日はすばらしいゲストをお招きしていますヤニス・バルファキスさんです。「2008年の金融崩壊と2020年のパンデミック資本主義を一変させた組み合わせ」というテーマについてお話していただきます。講演のあとでQ&A(質疑応答)の時間も設けてあります。

   バルファキスさんは経済学者や哲学者、著作家や政治家といった様々な顔をもつ人物です。ギリシャ国会議員でもあり、MeRA25党首やDiEM25共同創始者でもあります。ギリシャの財務相を務めた時期もありました。また、バーニー・サンダースと一緒に「プログレッシブ・インターナショナル」を共同創設し、世界各地の進歩派勢力の一致団結を促進しています。経済学者としてケンブリッジ大学やテキサス大学オースティン校などで教鞭をとり、Adults in the Room(邦題:『黒い匣』)、And the Weak Suffer What they Must?(邦題:『わたしたちを救う経済学』)、そしてThe Global Minotaur(邦題:『世界牛魔人グローバルミノタウロス』)含め多くの作品を著しています。少し個人的な話になりますが、最近私はバルファキスご夫妻と一緒に「Economics and Beyond」シリーズの一環としてとても面白いポッドキャストを収録させていただきました。みなさんもお気づきかと思いますが、私は彼に対して深い尊敬の念を抱いています勇気と想像力にあふれる人物だからです。[INETと経済協力開発機構(OECD)による2015年]パリ会議ではジョーセフ・スティグリッツとバルファキスさんと私で公開対談を行ったわけですが、様々な重圧を背負っていたにも関わらずINETを応援していただき感無量でした。公の場でも私生活においても勇気と明瞭さを基調とする、すばらしい人物です。バルファキスさん、今日はこの場にお越しいただき本当にありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。

 

ヤニス・バルファキス 僕の方こそ、きみとこうして時間を過ごせるのをとても嬉しく感じているよ。オンライン・オフライン問わずINETの活動を応援できることを光栄に思う。INETは現代の様々な重要課題に取り組んでいるからね。導入の言葉にも感謝している。そして、僕にとって個人的に大切なテーマを扱えることを嬉しく思う。ありがとう。

   よくあるパターンとして、今起きている危機コロナウイルスに端を発する世界的な経済活動の停滞2008年の金融崩壊と対比して論じる人がいるよね。でもこれは間違っていると思う。2020年危機は2008年危機と切り離せるものではなく、むしろ2008年危機の延長線上で考えなければいけない事態だからさ。

   もう少しさかのぼって考えてみようか。ブレトンウッズ体制終焉後に着々と金融化が進み、世界レベルで資本が移動するようになった現代において、経済分析の定跡に従うこと、つまり「アメリカ経済」「イギリス経済」「ギリシャ経済」「日本経済」という区分をもちいて国民国家をベースに議論を展開してしまっては誤解を生むだけだ。国単位で経済の強みや弱みを分析するという従来のマクロ経済学がいかに使い物にならないかは、ここ20年間ではっきりしているはずでしょう。貿易や財政に関するデータを用いても、僕らを取り囲む霧を晴らすことはできない。鍵となるのは金融資本の潮流だ。金融化が世界を一新した理由も、2008年金融崩壊が金融化に大ダメージを与えた結果、DNAですらない、RNAのほんの切れ端でさえもこれほどの打撃を僕らに浴びせることができるようになった、その理由もここから読み取れる。コロナウイルスがこれほどひどい惨事をもたらしているのも、そもそも金融資本主義がコロナ以前にすでに深手を負っていたからなんだ。今日はこの文脈で話を進めたい。2008年に生じたある大きな出来事の発展型として2020年危機を捉えること。そもそも、2008年に起きた金融化の危機には決着がついていないこれを今日は示してみたいと思う。なるほど、金融市場は回復したかもしれない。お金は儲かっているかもしれない。でも、世界資本主義の要である金融化は、2008年という深手を完治できていない。僕の仮説が正しければ、コロナ以後の世界を理解したかったらコロナ以後の世界について語りたがる人たちは本当に後を絶たないものだけどまず2008年以後の世界を理解しない限り何も始まらない。

   本題に移るとしよう。一昔前までは、お金は各国間を主に金融取引という形で行き来していた。各国経済の消費者内需は国内生産者が満たしていた。アメリカのような大国だけでなく、僕の母国ギリシャのような小国においても、今と比べてはるかに多くの生産物を国内消費者向けに生産していた。これに関する数値を参照すれば、一国の経済の状態を把握することができたわけだ。現代ではそういった手法はもはや通用しない。1980年代以降の世界では、中国やドイツのような国における問題はアメリカやギリシャにおける問題と密接に結びついている。「アメリカやギリシャ」という風に、ロバート、きみの輝ける母国、世界の覇権を握る超大国を、僕の故郷である破産小国と同列に扱うような言い方をしたけど、これには理由があるんだ。というのも、アメリカとギリシャには「赤字国家」という共通点がある。

   ブレトンウッズ体制の終焉を資本主義の歴史における転機として位置づけたのにも理由がある。それ以前までは、金融家の活動は厳しく規制されており、通貨の循環(マネー・フロー)は実体経済の動向とつながりを保っていた。ところが1980年代前半にブレトンウッズ体制が終わり、資本規制が取っ払われると、金融工学による民間通貨の激流が巨額の貿易不均衡の主な原資となった。さきほど僕はアメリカを例に挙げた。それに、あなた方は現在アメリカからこのライブインタビューを見ている。というわけで、今しばらくアメリカに注意を向けてみたい。未来の歴史家たちは「アメリカの覇権はアメリカの貿易赤字の拡大に比例して強まった」という、1980年代に出てきた実に奇妙で重要な現象に焦点を当てるだろう。世界史上初めての出来事だからだ。これ以前は、帝国や経済大国や覇権国が黒字国から赤字国へと転落すると必ず権力の縮退が起きた。ところが、アメリカの場合はその反対のことが起きた。なぜだろう。理由はこうだ。アメリカが貿易において黒字国から赤字国へと転落していくかたわらで、ウォール街は海外諸国の黒字を再循環(リサイクル)させる上で中心的な役割を担うようになった主にドイツや日本から始まり、後に中国がそこに加わるようになる。アメリカへの純輸出が利益を生む一方で、利益をウォール街経由で再循環させたわけだ。「非均斉動的平衡」(unbalanced dynamic equilibrium)とでも呼ぶべきこの実に興味深い状態を背景に、アメリカは商品と他国利益の両方で世界最大の輸入国となった。さらに、ウォール街へと巨額のカネが流れ込み、アメリカを含む各国への資金となって再び流れ出すという潮流が形成された「金融化」と呼ばれる現象だ。ところが2008年に金融化は砂上の楼閣のごとく崩れ落ちてしまった。その理由はこうだ。金融化によって、持続不可能な量の民間通貨が発行された。砂上の楼閣のご多分に洩れず、この場合もまた増築を重ねてゆけばそのうち基盤が崩れた建物全体が瓦解する。連邦準備制度だけでなく、G20諸国の中央銀行が一致団結して2008年に金融市場を見事に再生(refloat)させたわけだが、ウォール街と金融化体制は世界の黒字を再循環する能力を失った。ブタ積みにされたカネを生産的な投資に変身させ、アメリカやイギリス、欧州各国やインド、そしてラテンアメリカ諸国で優良雇用を大規模に創出する力は、2008年以降失われたままだ。以上が僕の仮説だ。

(次号へ続く)

リターン

3,000


純粋応援コース

純粋応援コース

那須里山舎と『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』翻訳出版プロジェクトを応援してくださる方に、㈱那須里山舎より心を込めて感謝のお手紙をお送りいたします。

支援者
21人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2021年6月

5,000


完成書籍先取りコース

完成書籍先取りコース

出版プロジェクトを応援しつつ『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』を本棚に置きたいという方へ。那須里山舎から本書を一冊、発売日前にお送りします。あわせて、感謝のお手紙も同封いたします。

支援者
107人
在庫数
189
発送完了予定月
2021年6月

10,000


先行出版記念イベントコース

先行出版記念イベントコース

がっつりと応援しつつ制作チームと共に出版を祝いたいという方へ。那須里山舎より以下の三点セットをお送りいたします。
1、ご賛同者様限定先行出版記念イベントの招待状(オンライン開催を予定しておりますが、開催日程については調整中です)
2、『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』翻訳本一冊(発売日前)
3、那須里山舎より感謝のお手紙

支援者
23人
在庫数
22
発送完了予定月
2021年6月

30,000


マックス応援コース

マックス応援コース

最大限の応援をしていただける方に、すべてのリターンに加えて、翻訳本の巻末にお名前を掲載させていただきます。以下のセットとなります。
1、ご賛同者様のお名前を翻訳書巻末に掲載
2、ご賛同者様限定先行出版記念イベントへの招待状
3、『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』完成本一冊(発売日前)
4、那須里山舎より感謝のお手紙
 <*注意事項:このリターンに関する条件の詳細については、リンク先
(https://readyfor.jp/terms_of_service#appendix)の「リターンに関するご留意事項」をご確認ください。>

支援者
24人
在庫数
25
発送完了予定月
2021年6月

記事をシェアして応援する

    https://readyfor.jp/projects/varoufakis-japanese-translation/announcements/155230?sns_share_token=
    専用URLを使うと、あなたのシェアによってこのプロジェクトに何人訪れているかを確認できます
  • Facebook
  • X
  • LINE
  • note

あなたにおすすめのプロジェクト

注目のプロジェクト

もっと見る

新着のプロジェクト

もっと見る