貧困・格差と闘う思想家ヤニス・バルファキスの名作を翻訳出版したい!

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支援総額

1,706,000

目標金額 1,500,000円

支援者
172人
募集終了日
2021年2月22日

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2021年01月23日 13:36

バルファキス&チョムスキー ニューヨーク対談①

バルファキス&チョムスキー ニューヨーク対談①

 

ここにご紹介するのは、バルファキスさんと著名な言語学者・政治哲学者で社会活動家でもあるノーム・チョムスキーさんのビッグ対談です。やはり早川さんの翻訳でお届けいたします。チョムスキーさんは、バルファキスさんのよびかけではじまったDiEM25(「欧州に民主主義を」運動2025)のメンバーでもあります。実は、本プロジェクトのあとに、チョムスキー&ロバート・ポーリン著『気候変動危機とグローバル・グリーンニューディール』(仮題)の翻訳出版も予定しているので、その予告編としてもお読みいただけるかもしれません。

 

まず、最初は、ずばり「新自由主義の欺瞞」を暴くことからお二人の対談ははじまります。

まず、その第一部です。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ヤニス・バルファキス×ノーム・チョムスキー

2016416日 ニューヨーク公共図書館(NYPL

https://www.nypl.org/audiovideo/yanis-varoufakis-noam-chomsky

 

 

ヤニス・バルファキス こんばんは。今回は前置きもないみたいだし、早速始めよう。ここにこうして集まって話せることを嬉しく思う。「公共部門は役に立たない」という主張もこれでは立つ瀬がないね(会場笑)。ノームはどう思う?

 

ノーム・チョムスキー きみが今言ったことは、私が今ここにギリギリ到着できたという事実とつながっている。というのも、私は妻とボストンから来た。片道7時間の旅だ。新自由主義的な政策によって社会が粉砕されていなければ、片道2時間半ほどで来れたはずなのにね(会場笑)。電車はかつて公共部門の誇りだった。1950年に初めて公共電車に乗ったときのことを思い出したよ。あれから電車は15分ほどしか速くなっていない(会場笑)―それも時間通り運行している場合の話で、それすらもあやしい。だから今回は飛行機に乗ることにしたんだけど、午後にずっと滑走路で暇つぶしをする羽目になった(笑)。

 

バルファキス さて、ノーム、今日は何について話そうか。

 

チョムスキー そうだねえ。例えば、「ここ数十年における世界の人々に対する新自由主義の襲撃」はどうだろうか。きみもこれについては実にすばらしい文章を書いているわけだし。

 

バルファキス 昨年は僕の人生の中でも特にドラマチックな一年だった。その経験を経て思うんだけど、新自由主義社会には大きな乖離が存在する。一方には、新自由主義の思想とイデオロギーがある。他方には、新自由主義的国際金融体制と交渉する中で―というよりも、括弧つきの「交渉」で、正確には「命令される中で」と言った方が良いけれど―僕が出会った現実がある。考えてみてほしい。自由至上主義(リバタリアニズム)や新自由主義の親分たちは税で賄われた活動をすべて否定する。では、僕がギリシャの財務相を辞め、今日ここにいる理由は何なのか。税によって担保された融資―債権者側が僕に無理矢理押し付けてきた融資―1000億ドルを僕が拒否したからだ。

 

チョムスキー 「三つの否(ナイン)」だね。

 

バルファキス 驚きだろう? 国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)、そして欧州委員会(EC)が破産国家ギリシャに対して1000億ドルの融資を受けるよう迫ってくる。しかも、その融資の保証人である欧州の納税者たちへ返済が不可能になるような条件をつけて迫ってくるんだからね。新自由主義者のやることとは思えない。税収によって担保された政府融資をすべて否定し、支払い能力を失った主体には融資を受ける資格はないと信じているはずなのにね。

 

チョムスキー きみが指摘するように、この融資の90%はフランスやドイツの銀行に渡るんでしょう。

 

バルファキス 初めの融資はそうだった。今回の融資は、債権者の右ポケットから左ポケットへ渡るだけ。「ギリシャは破綻していない」という体裁を保つためだけにね。僕が言いたいのは、新自由主義体制がいかに欺瞞的かということ。[訳注:hypocrisyは以下文脈に応じて「欺瞞」と「偽善」に訳し分けていく。] 新自由主義のイデオロギーに忠実でいようという意志さえ感じられない。「否」の一言を発するだけの反骨精神をもつ者は徹底的に叩きのめすという、19世紀式の権力政治(パワー・ポリティクス)をやっているだけなのだから。

 

チョムスキー それは何も今に始まったことではない。新自由主義にはある矛盾が含まれている。新しくもなければ自由でもないという矛盾がね(会場笑)。

 

バルファキス まったくそのとおり(会場笑+拍手)。

 

チョムスキー きみが描写してみせた現状はたしかに欺瞞的だ。同じような欺瞞は「税で賄われた機関は否定すべき」という主張にもみてとれる。金融部門はそもそも税で賄われている。

 

バルファキス いうまでもない。

 

チョムスキー アメリカの主要銀行に関するIMF論文を思い出してほしい。そこでは、諸銀行の利益はほぼすべて政府による暗黙の保険のおかげで成立しているという結論が出ている。安価な信用(クレジット)、高い信用格付けを受ける能力、高リスクな取引を促すような報酬=動機構造(インセンティブ)。そういう取引は大きな利益を生む可能性をもつが、もし失敗した場合は納税者のみなさまに損失をご負担いただく、というわけだ。

   あるいは、現代経済の基盤[となっている科学技術]に注目しよう。政府後援の研究所で開発が進められていく様子を、私は間近で見る機会に恵まれてきた。1950年代からずっとマサチューセッツ工科大学で教えてきたわけだけど、政府はたくさんの助成金を注ぎ込んでいた。いや、当初はむしろ国防総省(ペンタゴン)が資金源だったというべきだね。未来のハイテク経済の基盤をつくり、民間事業という名を冠した営利団体の足場を固めるために、惜しみなく資金を注ぎ込んだ。資本主義の原理に則ると、高リスクな事業へ長期的に投資をし、30年後にその事業が利益を生み始めた場合、投資家には利益の一部を得る権利がある。でも実際はそうならない。数十年にわたって投資を続けたのは納税者だったけれど、利益は納税者ではなくアップル社やマイクロソフト社の懐に入るんだ。

 

バルファキス まさしくそのとおり。例えば、iPhoneを分解してみればわかるけど、各部に集約されている技術はすべて政府資金を使って開発されたものだ。例外はない。しかも、そこには他国からの政府援助も含まれる。例えばWiFiはオーストラリア政府が資金提供したよね。

 

チョムスキー MITのような主要研究機関の内部にいると、色々と面白いことが見えてくる。例えば50年前にさかのぼってみると、当時私が勤めていたビルの中にはレイセオンやITECIBMなどの電子機器系の企業が陣取っていた。公費で開発されていた科学技術を潤沢なビジネスに変身させようという、はっきり言って泥棒行為をしていたわけだ。現代に戻って、今のMITのキャンパスを歩き回ってみると、以前とは異なるビルが目に入ってくる―ノバルティスやファイザーなどの大手製薬会社のビルだ。理由は何か。経済の最先端が電子機器からバイオ医療品へと変わったからだ。いわゆる「民間部門」の捕食者たちは、税によって賄われている基礎生物学の諸研究分野にじっとにらみを利かせつつめぼしい成果にありつこうと陣取っている。「自由な事業活動」(free enterprise)や「自由市場体制」と呼ばれているものの正体はこれだ。欺瞞とはまさにこのこと。これよりひどい例はそうそうお目にかかれない。

 

バルファキス たしかにそうだね。この偽善・欺瞞は250年前からずっと資本家の企業文化全体を支え続けてきた。「国家は市場の敵であり、市場社会は国家から独立して存在する」という考えだけど、人類史においてこれほど悪趣味なジョークは他にない。「誰かが私的に築き上げた富を、国家が社会安全網(ソーシャル・セーフティーネット)を必要とする労働組合や労働者階級を代表して盗賊よろしく奪っていく」という物語は真実を完全に捻じ曲げてしまっている。有史以来、富とは集団がつくり個人が私有化するものであり続けてきた。例えば、イギリスで起きた「囲い込み」も、国王軍による国家の暴力なくしては起こりえなかっただろう。先祖代々の地から農民を追い出し、こうして労働や土地が商品化され、資本主義が誕生した。ついさっき、僕らはニューヨーク公共図書館のこの美しい建物に納められた地図のコレクションをみせてもらった。そこで見たアラバマの地図には、アメリカの先住民族から土地が強奪され、分割され、商品化されていく様子がありありと描かれていた。これもまた、国家による暴力的な介入なくしてはありえなかった出来事だ。こうした介入こそが土地の私有化を可能にし、さらには商品化を可能にした。

(続く)

リターン

3,000


純粋応援コース

純粋応援コース

那須里山舎と『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』翻訳出版プロジェクトを応援してくださる方に、㈱那須里山舎より心を込めて感謝のお手紙をお送りいたします。

支援者
21人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2021年6月

5,000


完成書籍先取りコース

完成書籍先取りコース

出版プロジェクトを応援しつつ『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』を本棚に置きたいという方へ。那須里山舎から本書を一冊、発売日前にお送りします。あわせて、感謝のお手紙も同封いたします。

支援者
107人
在庫数
189
発送完了予定月
2021年6月

10,000


先行出版記念イベントコース

先行出版記念イベントコース

がっつりと応援しつつ制作チームと共に出版を祝いたいという方へ。那須里山舎より以下の三点セットをお送りいたします。
1、ご賛同者様限定先行出版記念イベントの招待状(オンライン開催を予定しておりますが、開催日程については調整中です)
2、『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』翻訳本一冊(発売日前)
3、那須里山舎より感謝のお手紙

支援者
23人
在庫数
22
発送完了予定月
2021年6月

30,000


マックス応援コース

マックス応援コース

最大限の応援をしていただける方に、すべてのリターンに加えて、翻訳本の巻末にお名前を掲載させていただきます。以下のセットとなります。
1、ご賛同者様のお名前を翻訳書巻末に掲載
2、ご賛同者様限定先行出版記念イベントへの招待状
3、『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』完成本一冊(発売日前)
4、那須里山舎より感謝のお手紙
 <*注意事項:このリターンに関する条件の詳細については、リンク先
(https://readyfor.jp/terms_of_service#appendix)の「リターンに関するご留意事項」をご確認ください。>

支援者
24人
在庫数
25
発送完了予定月
2021年6月

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