プロジェクト概要

温泉場の再生を願う食堂づくり

 

はじめまして。まちづくりプランナーの中西佳代子と申します。地域の文化、歴史、自然、地場の産業など、地域の潜在的な力を引き出しまちの活性化につなげるプロジェクトに取り組んでいます。現在、神奈川県湯河原温泉の「湯元通り」のまちづくりに携っています。

 

湯元通りは、僅か300mほどの入り組んだ路地で形成されたエリアで、今は人通りの少ない通りになってしまいましたが、1200年以上続く湯河原温泉の発祥の地であり、度重なる河川災害を乗り越え、温泉場(おんせんば)の文化と賑わいを支え続けてきた場所です。

 

そんな湯元通りの再生を願い、食堂を始めようという動きが出てきました。通りで精肉店を営む加藤功さん(70)が隣の空き家を買取り、「食事処かとう」をオープンしました。皆様のご支援のおかげで公開17日で当初の目標の食堂1階の外観修景費80万円を達成することができました。本当にありがとうございました!


残りの期間で、さらに食堂の2階部分の外観修景費45万円を募集したく、あわせて125万円を目指します。どうか引き続き応援をお願いいたします。


左:現状(左の建物を食堂として整備予定。右の建物は加藤精肉店。)
右:修景イメージ(挿絵:深山健太郎)

 

加藤さんは、隣の空き家を購入後、食堂内部の改装工事を行い、7月10日から営業を開始しました。建物外観の修景費まで捻出することができず、外観はそのままの状態です。できるだけ早く食堂としての店構えを設えたく、皆様からのご支援をその資金に充てさせていただきたいと考え、READYFORプロジェクトに応募いたしました。

 

本件は、一軒の食堂づくりを支援するものですが、一方で、日本の温泉文化を支え続けてきた温泉場のまちの文化を守り未来へつなげるプロジェクトでもあります。ぜひ最後までご覧いただき、ご支援をご検討ただきたいと存じます。

 

    加藤 功さん    建物内部:内装工事前(中)と内装工事中(右)

 

 

湯河原ならではの温泉場文化は、長い歴史の中で育まれてきました

 

皆さんは湯河原温泉をご存知ですか? 湯河原町は相模灘に面し、熱海と真鶴の間にあります。首都圏からは電車で1〜2時間の好立地で、海と山の爽やかな風を感じながら、弱食塩泉・弱アルカリ性の肌に優しい泉質と豊かな海の幸を味わうことができます。

 

実は、湯河原温泉は、万葉集の時代から詠われてきた歴史を誇る温泉場なんです。

 

江戸時代の温泉番付では、東の小結としてナンバー3にランクインしました。明治以降は国木田独歩、島崎藤村、芥川竜之介、夏目漱石、与謝野晶子、竹内栖鳳など、数多くの文人墨客の逗留地として、戦時中は傷病兵の療養地として、そして、現代の観光客の温泉観光地として、それぞれの時代の要請に応えながら、温泉情緒と風格を兼ね備えた湯河原独自の温泉街の文化を築いてきました。


川に橋が連なる風景、そして、橋や宿の縁側から川を眺めたり、川辺で釣り糸を垂れたり、舟遊びや川床で夕涼みをする浴客の姿は、川と共に生きてきた湯河原温泉ならではの温泉情緒であり、地域の記憶として刻まれています。

 

「湯元通り」は、この湯河原温泉の発祥の地にあたります。多くの文人が宿泊した「中西屋」があった場所であり、近代日本画の先駆者である竹内栖鳳もこの通りをよく散歩したといいます。

 

大正時代の湯元通り(絵図出典:『相州湯河原温泉場之真景』神奈川県立図書館蔵、写真出典:『写真が語る湯河原今昔』湯河原町立図書館蔵)

 

 

「あたりまえの懐かしい風景」があること

 

昭和初期、湯元通りと平行した県道が新たに整備されたことから、以後も湯元通りは道路拡幅されず、往事の路地の雰囲気を今に引継いでいます。湯河原で、江戸期から徐々に形成された面的な街の骨格を今に残す唯一の区域でもあります。

 

ヒューマンスケールの街路に温泉場としての地域性を表す温泉宿や温泉櫓が並び、素朴な形式美や自然の素材感を感じさせる木造建築、門、塀、植栽などが点在する風景は、今なお湯元通りの最大の魅力です。

 

訪れる人は、この通りを「どこにでもあったどこにもない通り」「あたりまえの懐かしい風景」「温泉場の情緒に癒される通り」などと評します。

 

(現在の湯元通り)

 

しかし、湯河原も他の温泉地と同様に、景気の低迷、デフレ経済の長期化などの影響を受け、商店街の衰退、老舗旅館の閉鎖・取壊し、少子高齢化などに伴う地域コミュニティの機能低下など、地域の活力が失われつつあります。

湯元通りにおいても、空き家・空き店舗化、駐車場化といった変化や、趣のある木造建築や樹木などの景観資源の減少が目立つようになってきました。
 

地権者主体の取組みがスタート


このような現象を食い止め、湯河原の温泉場の文化を守ろうと、昨年、町が、国の「街なみ環境整備事業」を導入。この事業に基づき、地権者が湯元通りのまちづくりについて話し合う「湯元通り勉強会」を半年間にわたって開催し、「湯元通りまちなみ協定」をとりまとめました。

地権者間で地域を見つめ直し、ヴィジョンを語り、共有できるルールをつくり、これに自発的に取り組むとき、ルールは規制ではなく「生きた規範」になります。

 

同協定では、地権者が「温泉場情緒が息づく通り」を守り育てるという理念を掲げ、湯河原温泉の歴史とまちなみの変遷を共有し、建物、塀、緑、広告物等の修景・整備方針やルールを定め、これを守ること、実行することを誓っています。この協定を足がかりに、今後、空き家対策などのソフトの取組へと広げていくこととしています。

 

協定書の表紙(左)と、協定内容の抜粋(中・右)(挿絵:深山健太郎)

 

 

知る人ぞ知るお肉屋さんが、湯元通りに食堂をつくります!

 

湯元通りに食堂をオープンする加藤功さんは、奥様の年枝さんと二人で精肉店を運営しています。

加藤さんは、前述の湯元通り勉強会への参加を契機に、この通りの活性化のために地権者としてできること、やってみたいことについて改めて考えるようになったといいます。「昔は温泉街に食堂が沢山あって賑わっていたのに、お客さんが減って、多くの食堂が閉鎖してしまった。」「食べるところがないと、なかなかお客さんに街を歩いてもらえない。」「湯元通りは、散歩したくなるような雰囲気の通りなのに、もったいない。」勉強会の参加者の声や協定づくりの取組みが、加藤さんの気持ちを後押ししました。

 

実は、加藤精肉店は、美味しいお惣菜のお店として、知る人ぞ知る名店です。


ハンバーグ、しゅうまい、とんかつ、焼豚、餃子、ロールキャベツ、豚の角煮、コロッケ、メンチカツなど。どれも良質なお肉と野菜を使った手作りの品です。牛肉は「静岡そだちの黒毛和牛(雌牛4-5番)」銘柄、豚肉は「静岡型銘柄豚ふじのくに」という品種の肉を主に使用しています。野菜は、主に湘南・伊豆地域の生産者さんからの直送野菜を使用しています。もちろん、保存料は一切使用していません。

 

加藤さんのお惣菜の一部:左から、餃子、焼売、豚の角煮、ハンバーグ、煮込みハンバーグ (うち、焼売、角煮、ハンバーグは真空包装後の写真)
 
加藤さんのお惣菜は口コミでその評判が広がり、今は、湯河原のお客様だけではなく、全国各地のリピーターから電話注文のみを受け、お惣菜を真空包装・冷凍して送っています。
私も加藤さんのお惣菜のファンです。夕食のおかずに一品足りないときや、息子のお弁当のおかずなどに重宝しています!
 

来月オープンする食堂では、とんかつ定食やあじフライ定食を中心に、これらのお惣菜の一部も振る舞われる予定です。

 

多くの方に湯河原温泉へ、そして湯元通りへお越しいただき、加藤さんのお惣菜を味わっていただきたい。そして、この歴史ある通りを歩いていただきたいと思います。

 

 

食事処かとうと加藤精肉店の建物は、表が湯元通りに、裏側は藤木川に面しています。先ずは、食堂としての店構えを整える必要がありますが、それが実現したら、残りの修景(通り側の食堂の2階部分と精肉店外壁 + 川側の食堂と精肉店の外壁)にも取り組む予定です。これらの修景整備の費用は、街なみ環境整備事業の補助申請や、食堂の収益から賄うことを目標にしています。

 

 

失ったら取り戻せない地域資源の厚み

 

土地の価値に優劣はありません。そもそも土地の優劣を議論すること自体意味のないことです。しかし、土地ごとに地域資源の厚み・重みに違いがあることは明らかです。ここでいう地域資源とは、長いまちの変遷と人々の生活の歴史であり、彼らの情熱と経験の積み重ねであり、そこで花開いた産業や文化の重みです。これらが一体となって、この国のまちの文化が培われてきました。

ひとたびこのような地域資源が失われてしまうと、二度と元の機能を取り戻すことはできません。

 

湯河原の温泉場は、間違いなくこの地域資源の厚みのある場所であり、湯元通りには、辛うじてそれを確認することのできる地場の営みと街路空間が残っています。


かつて日本には、このような地域資源の豊かな場所が沢山ありました。今なおその資源が地域で共有され、意識して守られ引継がれているところがある一方、湯元通りのように失われかけているところや、失われてしまったところが多いのも事実です。前者は、主に建築的な価値の高い歴史的建造物の多い地域にしばしば見られるのに対し、後者は、地域資源の厚みはあるもののそのような建造物の少ない(または、ない)普通のまちの区域です。


日本で「地域活性化」が叫ばれて久しいですが、サステナブルな地域の発展を志すのであれば、後者のような地域にこそ光をあてるべきです。そして、目先の経済効率を優先した安易な投資や解決策へ流されないよう、地域の人々がしっかりと地域資源の厚み・重みを共有し、守るべきものと変えていくものを見極めながらことに取り組んでいかなければなりません。

湯元通りのまちづくりも、そのような想いからスタートしました。

 

湯元通りの取組みは、まだ始まったばかりです。目に見える変化はこれからで、今は、元気のない通りに映るかもしれません。しかし、湯元通りのように長く濃密なまちの歴史を紡いできた土地は、磨けば光る美しさや快適性を内に秘めています。我々はその可能性を信じ、粘り強く取組みを続けていきます。加藤さんのお店は、その第一歩となります。
ぜひ、皆様のお力添えを賜りたく、お願い申し上げます。

 

 

 

----------◆ 引換券のご紹介 ◆----------


◯ サンクスメール


◯ 食事処かとうの定食お食事券

 定食は、とんかつ定食 又は あじフライ定食を予定しています。

 


◯ お惣菜セット(ハンバーグ小5個、焼売10個)宅配


◯ 湯元通りまち歩きプログラム(約1時間)ご招待券
湯河原の温泉場のまち歩きをしながら、湯河原温泉の歴史や温泉場の変遷についてご案内するプログラムです。

(2015年10月から2016年3月にかけて、月一回実施予定。日程等の詳細は、後日ご連絡申し上げます。)

                   (湯元通り)

 

◯ 源泉 上野屋のご入浴券

湯元通りにある源泉 上野屋は、湯河原温泉で最古の歴史を誇る国指定登録有形文化財の自家源泉旅館です。

(源泉 上野屋の玄関(左)と「六瓢(むびょう)の湯」(右))

 

 

このプロジェクトは、町の事業とは別に、個人の責任で実施しております。

 

湯元通りのまちづくりの詳細や、食堂の修景内容などについてご不明な点がございましたら、ご遠慮なく下記までお問い合わせください。
(株)ランドスケープアンドパートナーシップ office@landscape-p.com


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