イマンジャマさんが絵かきさんになるまで（金山麻美）Part II

＜絵が大好きな少年＞

イマンジャマさんは、1959年に警察官だったお父さんの赴任先のタンザニアのザンジバル島で生まれました。お母さんは主婦、3人兄弟の末っ子です。彼の幼少時にお父さんは警官を辞め、大陸側の大都市ダルエスサラームに移り住み、タンザニア・タバコ会社（TTC）で仕事をはじめました。

　お父さんは家で時間のあるとき、紙と鉛筆や墨を取りだしてきて、気ままに人物画などを描いていたそうです。その影響でイマンジャマさんも絵を描き始めました。お父さんとお互いを描きあったりすることもあったとか。

　お父さんが「この子はいける！」と思ったのでしょう、イマンジャマさんが小学校を終えると、町中にあるゲーテインステチュート（ドイツ文化協会）で絵画教室が行われているというのを聞きつけて、受講させました。ドイツ人の先生が、デッサンから水彩画まで幅広く教えていて、生徒はタンザニア人の子どもや若者たち、20名ほどたったそうです。1975年から76年にかけてのことでした。
 

＜ニュンバヤサナー（芸術の家）との出会い＞

　そのコースに、イギリス人のシスタージーンが訪ねてきました。彼女はニエレレ初代大統領の支援を得て、1972年にダルエスサラームにタンザニアの若手芸術家たちの研鑽や発表の場としてニュンバヤサナー（芸術の家）を創設した人です。

　イマンジャマさんも彼女に誘われて、絵画コース終了後にニュンバヤサナーの活動に加わりました。最初は助手として、所属する先輩芸術家たちの手伝いをしていたそうですが、その仕上げ力に定評があり、そういうきちっとした仕事ができる彼にはエッチングがあっているとシスタージーンに勧められたそうです。
 

＜エッチングの名手に＞

　1978年にドイツ人女性がニュンバヤサナーにやってきて、エッチングの技術を画家たちに教える機会がありました。それが、エッチングとの初めての出会いでした。

　1979年のダルエスサラームでのニュンバヤサナーの展覧会で、初めて自分の作品、動物画が展示されて、とても嬉しかったそうです。

　1984年にはタンザニア訪問中にニュンバヤサナーを訪れたイギリスのチャールス皇太子（当時）に自作の絵画を手渡したこともありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

　1986年にタンザニアの芸術家を支援しているオランダ人夫人の後押しで、オーストリアへエッチングを学びに行くことができました。そのときは、ひとりで一月ぐらいの滞在でしたが、その後、ニュンバヤサナーのほかの画家たちとも一緒に何度かオーストリアへ学びに行きました。

　そこで知り合ったドイツ人オフマンさんのドイツでのエッチングワークショップに講師として参加したこともあるそうです。1993年のことでした。11人のドイツ人にエッチング技術を教えました。一週間続いたコースの最終日には生徒たちの作った作品とイマンジャマ先生の作品展示があり、本人は「生徒たちは記念ということもあり、皆自分の作品を買ってくれたので嬉しかった」と語っています。

 

 

　1999年には、オーストリアで出版された絵本『Safina』の絵も担当しました。

　人との縁を結びながら世界との繋がりを広げているのも彼の絵画の魅力のなせる技なのでしょう。今では、すっかりカラーエッチングをはじめとする絵画の名手で、ドイツや北欧での展覧会にも作品を出品しています。

　そして、後進の育成にも力を注いでいます。ダルエスサラームを中心にタンザニアの各所で子どもたちや若者たちに木版画や絵画、工作、エッチングなどのワークショ

ップを積極的に行っているそうです。

金山麻美（JATA Tours)