戦国時代の何気ない日常を再現したい

戦国時代の何気ない日常を再現したい

支援総額

700,000

目標金額 670,000円

支援者
39人
募集終了日
2022年9月9日

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プロジェクト本文

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自己紹介

 

はじめまして、木村弘明と申します。

 

私は東京大学で日本文学を専攻しながら自主制作映画などを制作しておりました。卒業後は東映にて助監督として働き、現在Hiroakiの名義で映像制作を行っております。

 

作成映像のテーマ

 

江戸時代より前の時代を、

もし過去に戻って実際に見たらどんな感じか

 

【昔の人の文章には強いイメージが宿っている】

 

この活動を始める最初のきっかけは、中学2年生の時に読んだ『平家物語』にありました。文章を読んで、イメージ・映像が非常にはっきりと感じられたからです。その後も色々と勉強していく中でも、やはり古い文章には明確なイメージが感じられました。

 

この感覚を「何らかの形」に表現したいと思い、結局は映像を選択しました。そして『平家物語』などの古典文学作品を映像化することを将来の目標と設定しました。

 

【江戸時代の代表的な作家も同じことを感じていた】

 

このような感覚のことは。江戸時代の作家、井原西鶴も言っています。「源氏物語を読むと、昔の出来事を、はるか後の時代である現代において、目の前に見るような感覚になる。」

 

テレビやデジタルデバイスが存在せず、今よりもはるかに文字や文章の重要度が高かった時代の言葉には、強いイメージが宿っているように思います。そのように実際の昔の人たちが書いた文章などから得られるイメージは、テレビや映画で示される映像とは全く違うものです。

 

【形にするには知識が必要】

 

上のようなイメージを形にするため、私は東京大学日本文学科に進学し、日本文学や古い日本語、古文書などについて学んできました。また、それだけでは映像化するのに知識が足りないと思い、美術工芸品や絵画などにも触れたり、茶道や雅楽、蹴鞠を修めたりし、感覚的な知識も増やすようにしてきました。

 

文献など情報的な方面からも、感覚・感性的な方面からもアプローチができるように学習をしてきた、という訳です。こうした学習を10年余りにわたって続けてきました。

 

蹴鞠は、現在ではNHK大河やテレビのバラエティー番組で指導や出演をすることもあります。映像制作の方は、学生時代から活動を続け、卒業後は東映にて助監督になりました。

 

2020年には、サンプルとして「つはもの―ツワモノ―」を制作しました。これは、現代人の主人公が室町時代終わり頃(1500年代前半)にタイムスリップするという短編映画です。

 

 

ストーリーは、設定と同じ時代に書かれた能の演目「正尊」を原作にしました。この時代の様子を再現するため、絵巻や文献を調べながら予算の制限の中、できるだけ正確に映像を作っていきました。

 

言葉も文献を調べて当時に近づけています。時代劇などの従来の映像作品というのは、文献や史料などを調べてみると、実際の戦国時代がどうだったかとは関係なく時代劇の「お約束」に従って作られているのがほとんどです。1500年代の設定のはずが江戸時代以降に誕生した物が、飾り付けといて置かれているようなことが頻繁にあります。

 

分かりやすい例を挙げると、烏帽子(えぼし)のかぶり方があります。烏帽子というのは、今でも神主さんが頭に被っている黒い帽子のようなもので、時代劇でもよく見ると思います。時代劇では頭にすっぽりかぶる帽子ような形になっています。

 

実際に鎌倉時代や室町時代の人々が被っていた烏帽子は、髷に結び付けた上に頭の上にのせるもので、すっぽりと被るものではありません。当時の絵巻も必ずそのようなバランスで身に着けているように描かれています。明治時代以降、人々が髷をなくしてしまったので烏帽子はすっぽりと被る形に変わっていきました。

【多くの時代劇でも、烏帽子は現代式ですっぽり被る形になっている】

 

烏帽子のかぶり方というのはとても些細なポイントに思えますが、当時の常識に従って些細なことを積み重ねて映像として再現していくことで、本物の雰囲気がでてくるものだと私は思います。

 

 

プロジェクトを立ち上げたきっかけ

 

400年前、500年前のいわゆる戦国時代の日本語は、現代語とはかなり異なります。日本文学を専攻していた自分としては、これを当たり前のように思っていました。

 

しかし自分の活動を広めるべく色々な方や友人たちと話している内に、このことはあまり広く認識されていない事に気付きました。「実際の戦国時代の人々は、時代劇と違って現代語を話さない」わけです。

 

言葉だけでなく、文化的なことやビジュアルなども時代劇のイメージが、本当の戦国時代の様子なのだと思われているのを強く感じました。様々な資料や文献を調べてみると、時代劇というのは、一見昔の様子を再現しているように見えて、実は現代の感覚や常識がかなり入り込んでいることが分かります。

 

冷静に考えると時代劇は、現代人の我々が見て楽しむ物なので現代的な感覚で作られているのは当然かも知れません。時代劇の戦国時代と、資料から見えてくる戦国時代の様子の違いを軽く動画にしたので、見てみてください。

 

 

私の最終的な目標は、日本の古典文学を映像化することですが、それ以前にまずは「歴史資料を元にリアルに映像化を行う」という活動を知ってもらうことが大切だと思いました。ストーリーものは、どうしてもストーリーの方に意識がいってしまい、ディテールには注目されないのではないかと思い、今回ストーリーのない「再現映像」を制作することにしました。

 

今回、再現することにしたのは、人気の高い戦国時代です。特に豊臣秀吉時代あたりを想定しています。この時代は、口語資料が比較的多く残っており、言葉の再現がしやすい時代です。

 

プロジェクト概要

 

戦国時代の日常の瞬間を、文献を調べながらリアルに再現しようというプロジェクトです。

 

歴史ドラマ・時代劇では、合戦に焦点が当てられることがほとんどですが、そうした特別な場面でなく、当時の人が実際にどんな服装をしていたのか、どんな言葉をしゃべっていたのか、どんな挨拶をしていたのか、という切り口で映像にしたいと考えています。

 

服装・髪型・言葉・挨拶など、あまり知られていない日常の様子を再現したいと思います。より完璧な再現を目指すと、時間も予算も莫大になってしまうので、現実的な予算の範囲で可能な再現を目指します。

 

「時代劇が正しい描写をしている」という先入観や思い込みのまだ少ない若い世代の方々に見て頂きたいです。

 

文献等を用いて戦国時代の言葉を再現したのを聞いて、新鮮な印象を持たれたら、という希望をもっています。また、衣装等を本式に再現し、文化財で撮影した時の重厚な雰囲気を感じてもらえたらと思っています。

 

 

プロジェクトの内容

 

戦国時代の日常の瞬間を再現する

 

戦国時代の何気ない日常を、動画で再現すること。服装や言葉などの文化・風俗を文献を元にしっかりと再現した映像を制作すること。

 

 

設定は戦国時代、中でも豊臣秀吉が天下を取りつつあった時代。武士・貴族たちは他人に要件がある時は、すぐ直接出向いたりせず、まずは使いを出して連絡をしてました。今回再現するのは、このようなやり取りの様子。ある武士の所へ茶会の誘いの連絡がやってきます。

 

この時代では、「茶の湯」がとても流行しており、武将や裕福な商人たちは互いに茶会に招待し合っていました。秀吉時代には、当たり前のように行われていたであろう、招待のやり取りを再現したいと思います。

 

ここが特に新しい

 

今回、特に目新しい要素は言葉です。戦国時代の日本語はどのような様子だったのか、文献を調べながら再現することを試みています。映像作品の中で戦国時代の日本語を話すというのは今まで例がなく、初めての挑戦です。

 

同じ時代の資料を元に再現する

 

再現の方向性としては、言葉に関しては当時の文献を元に書き、服装・髪型に関しては当時の絵巻や屏風などを参考にデザインしました。豊臣秀吉時代あたりを再現する予定ですが、それと同じ時代に書かれた文献や絵画資料を参考にしています。

 

現在の”常識”は必ずしも正しくない

 

昔の人はこんな服を着ていたとか、こんな様子だった、という定説があります。しかし、実際「当時の資料」を調べてみるとそれが正しくないと分かる時もあります。

 

例えば今回、衣装の製作を進めている内に分かったことがあります。戦国時代の武士の服装で「肩衣(かたぎぬ)」というものがあります。肩衣は織田信長の肖像が着ている、肩の張った衣装です。

 

現在の「常識」では、肩衣には「衽(おくみ)」という部分はないとされています。衽とは、下の図に示した部分のことで、着物には衽があります。今の常識では、肩衣にはこの衽はないとされていますが、織田信長の肖像画などを見ると明らかに衽があるように見えます。

 

(左)【肩衣を着た織田信長】
(中央)【黄色で示した所が衽(おくみ)】
(右)【広島県の常国寺に伝わっている、足利義昭の肩衣】

※黄色で示したように、衽(おくみ)がある

 

これはどういう事なのか、と調べてみると、衽のある肩衣が実際に存在しました。室町幕府最後の将軍、足利義昭が着ていたと伝えられている肩衣です。足利義昭は織田信長と同じ時代の人です。

 

この現物によって、実際の戦国時代の肩衣には衽があると判明し、今の常識が誤りであることが分かりました。このように、現在言われていることが必ずしも正しくないので、当時の資料を基本に映像を作ることが重要です。

 

プロジェクトの費用・内訳

 

「戦国時代の様子を再現する」というプロジェクトですが、フルに実現するためには、約250万円の費用が必要となる予定です。今回、プロジェクトの第一目標として『まずは衣装作成にかかる67万円を目標金額とするところから始めたいと存じます。

 

・生地・素材代:7万円

・仕立て代:38万円

・READYFOR手数料

 

今回作成する衣装は、肩衣・袴を2人分、小袖を3人分です。肩衣・袴とは、戦国時代終わりごろのフォーマルウェアです。武士は仕事の際や人前に出る時は基本にこの格好をしています。小袖とは、今の着物の元になったものです。肩衣・袴の下はこの小袖を着ています。肩衣・袴がジャケット・パンツ、小袖がシャツと例えると分かりやすいかも知れません。

 

 

登場人物は武士が2人、片方の武士に仕えている人物1人の計3人です。武士2人は肩衣・袴を着ていて、小袖は全員が着ているという訳です。

 

実は肩衣・袴と、小袖は仕立ての発注先が異なります。肩衣・袴は装束店、小袖は着物の仕立て業者です。装束店は神社で用いる装束や、時代祭などの衣装を手掛けている所です。小袖は着物の前身なので、着物の仕立てができる所に注文します。どちらも日本の服飾ですが専門が違うわけです。

 

尚、これらの衣装は生地や素材から調達しています。今回の衣装は現代では作られていない型なので、当時の服装の雰囲気が出るよう寸法から考えて発注しています。

 

 

文献等を参考に、再現映像を制作・当時の日本語を再現しようという活動をしているクリエイターは他にいません。

 

類似した活動がない以上は、今回のようなチャレンジ自体、認識されにくいと思い、クラウドファンディングという形で支援をお願いして広く色々な方に「文献から映像で再現する」という活動を知って頂きたく思いました。

 

 

プロジェクトの展望・ビジョン

 

本プロジェクトをきっかけに、「昔の様子を映像でリアルに再現する」という活動をより多くの方々に知ってもらえることと思います。

 

こうした方向性の映像作品というのは、今まで似たようなものがほとんどなかったので、今後も認知度を高めるべく行動していく予定です。この活動に関して重要なのは、日本の伝統工芸が必ず関与してくるという点です。今回も、衣装の製作は京都の装束店に発注しています。

 

「再現」という方向で映像を作る以上、衣装や道具はなるべく本式に従って作らなければなりません。下の画像の装束は、京都の装束店が伝統技術をもって作成した本式のものです。本物』の重厚な雰囲気は、写真からでも十分伝わってくると思います。

 

【この装束は「狩衣(かりぎぬ)」といいます】

 

映像作品で用いるものは、道具のように少ししか映らない物に関しては「本物」を志向する必要がないと思われがちなものです。しかし、「神は細部に宿る」という言葉にあるように、細部にも手を抜かず制作することによって、説得力のある映像に仕上がると私は考えます。

 

そして私の活動の規模がより大きくなれば、より多様な伝統工芸が関与してきます。例えば染め物や蒔絵、金属工芸などです。

 

【桃山時代~江戸時代初期の蒔絵の椀】
※蒔絵とは、漆で模様を描いた上に金の粉をまいて装飾をつける技法のこと
この色合いや雰囲気は、本物にしか出せません

 

こうした伝統工芸というのは、ずっと昔から日本にありながら、その良さを実際に認識している人はまだまだ限られているように思います。

 

映像という拡散しやすいメディアに登場することで、従来では伝統工芸に触れることがなかった人にも知ってもらえる可能性が広がり、より多くの方々に認知してもらえる機会となるでしょう。

 

ゆくゆくは日本の伝統工芸が活性化するのに、微力でも手助けができるくらいに活動の規模が大きくなれば、と思っております。

 

着物、装束や蒔絵、金工などの伝統工芸は、需要がどんどん減っています。特に江戸時代が終わり、武士の時代でなくなった後は多くの技術が既に失われました。蒔絵の道具や、刀の金具を注文する武士層がもう存在しないからです。

 

しかし美術館などに行かれて、はるか昔の職人たちがいかに優れた仕事をしたのか、という事に感銘を受ける方も少なくないと思います。過去の文化の豊かさを実感される方は多いのではないでしょうか。

 

脈々と続いてきた伝統工芸の技術の中には、残っているものがまだまだあります。本来、時代劇などはそうした伝統工芸の技術が生かされるのに最適なチャンスのはずですが、実際そのような本式の道具や衣装が使われることは、現在はほとんどありません。

 

現在の状況のままでは、伝統工芸の技術が衰退し失われる方向に向かっています。これを一人一人の個人が止めることは困難だと思います。織物を一から注文して着物を作り、生活で使う道具を蒔絵で注文する、などのことをする人はほぼ皆無ではないでしょうか。現状を放置するだけでも、自ずとこうした文化は破壊されていってしまいます。

 

この状況で昔から続く文化を絶やさないために、多くの人が触れ、親しみある映像作品で本式のものを注文して用いるということに、非常に意義があると私は考えます。また、様々な情報にアクセスできる現在、過去の文化を学問的知識から正しく把握しようという知的アプローチを試みるのは、何より過去の人々やその人々が生み出した文化に対するリスペクトだと思います。

 

昔作られた品物を保存するだけでは、文化は残り伝わっていきません。文化を大切にし、これからも伝えてゆくためにも、今回のプロジェクトは大きな意味を持つと思っています。

 

この方向性に価値を感じて頂けたらぜひご支援をよろしくお願い申し上げます。

 

プロジェクト実行責任者:
Hiroaki(木村弘明)
プロジェクト実施完了日:
2022年12月31日

プロジェクト概要と集めた資金の使途

戦国時代の様子を再現するプロジェクトです。生地・素材代:7万円・仕立て代:38万円・READYFOR手数料などに充てさせていただきます。

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プロフィール

東京大学日本文学科卒。東映にて助監督を経験後、本格的に自身の映像制作を開始。 江戸時代以前の文化・風習をリアルに映像化する活動をしております。 昔の様子を映像化するため、文学、古語の勉強をするだけでなく、古文書、古美術、装束などの「実物」に触れてリアルな感覚をつかめるようにしています。 たまにNHK大河ドラマの蹴鞠の指導・出演をしています。

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プロフィール

東京大学日本文学科卒。東映にて助監督を経験後、本格的に自身の映像制作を開始。 江戸時代以前の文化・風習をリアルに映像化する活動をしております。 昔の様子を映像化するため、文学、古語の勉強をするだけでなく、古文書、古美術、装束などの「実物」に触れてリアルな感覚をつかめるようにしています。 たまにNHK大河ドラマの蹴鞠の指導・出演をしています。

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