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今日は、元野犬のメイと預かりスタッフの奮闘記 最終話をご紹介いたします。

昨年、那須で保護した野犬の子たち。

生まれ持ったDNAなのか？まだ１歳とはいえ、なかなか手強いタイプも…

“人が怖い、外が怖い、初めての場所や初めての事も怖い、お散歩なんてとんでもない！”

という、そんな性格の子もいます。

でも、その分とても賢く感受性が強いのです。

“お散歩が怖いメイ”のその後は…

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野犬の仔を育てる　その三

「メイ、初めての散歩」　　久保田慎子

昨年の八月末に保護団体から委託されて、野犬の仔犬メイを預かることになった。

だが、野犬の仔は思っていた以上に飼うのが難しかった。入っているケージから出られるようになったのは三週間後だった。

そして我が家に来て二か月。

首にリードを付けて、部屋の中を歩かせてみる。

とたんに暴れて脱糞だ。

いつもアドバイスを受けているＩさんから、

電話で散歩のやり方を指導されるも、まったくわからない。

『間違ったやり方でやって、良くない結果になったらどうしよう』

不安のほうが先立ってしまう。

まずは抱っこして外の様子を見せるところから始めることにした。一日に何度か外に出るが、重たくてとても長時間立っていられない。しかたがなく、キスリング（子どもの抱っこ布）を購入し、それに入れて外を歩く。これはなかなかいい。近くのドッグランにも行って他のワンコが遊んでいる様子を見せる。でも、毎日となると腰が痛くなってしまう。次は犬用のカートを借りて乗せてみる。これなら先住犬の梓も一緒にお散歩ができる。

メイはキョロキョロ常に周りを見ながらも、ご機嫌よく乗っている。こうして車の音、子どもの声などに慣れさせる。

梓は一緒に歩きながら、ときどきメイの様子を気にかけているようだ。

いよいよ散歩のトレーニングを開始。

Ｉさんに来てもらって、フェンスで囲まれている空き地までカートに乗せて行く。

カートに乗っているメイの首とハーネスにリードを付けてカートからそっと降ろす。メイは固まって動かず、ぶるぶる震えている。

まず、私がやってみる。家で練習をした時と同じく、ちょっとリードを引いただけで暴れて逃げようとしたり、カートの下にもぐりこんだりしてどうしようもない。Ｉさんから「メイの体の横方向にリードを引いて」と指示が飛ぶが言われたようにできない。お手上げ状態でＩさんに代わってもらうが、やっぱり暴れてしまう。それでも淡々とメイが逃げようとする方向をそらし、リードを持って歩く。メイは少し動くとへたり込んだり嫌がって首輪を外そうともがく。格闘すること数十分。だんだんリードに従うようになってくる。どうやら、自分の自由にはならないと観念したようだ。

これでもう大丈夫となったころ私に代わりリードを持っても、ちゃんと後をついて歩いてくる。あんなに暴れていたのが噓のようだ。

まるで魔法にかかったみたい。

来るときに乗っていたカートはもう必要ない。

ようやく野犬の仔から家庭犬へ変身だ。

今ではすっかりドッグランのムードメーカーとなって、みんなを引き連れて走り回っている。誰とでも仲良くできる、とってもいい子になった。

本当の家族に出逢える日まで一緒に待っていよう。

2024.8.17