翌日はマイエットと共に帰宅します。彼女は一見、裕福な家庭で気ままに育ったお嬢様のように見えます。 しかしそんなマイエットの家も、やはりスラムの一角にありました。

 

初老のご両親が迎えて下さり、30代の子連れのお姉さんがいるようです。マイエットがまだ17歳なので、ずいぶん年の離れた姉妹だなと思っていました。と、次から次へと、マイエットの「お姉さん」や「お兄さん」が帰ってくるんです。 「え、この人もお姉さん?あなた、何人兄弟がいるの?」 と聞いた私にマイエットは、 「えっとね、何て言うか…、実は彼らは私の本当の家族では無いの」と答えます。

 

マイエットは、3人兄弟の末っ子として、フィリピン人の父親とレバノン人の母親の間に生まれました。上の2人は健常者だったのですが、3番目に視覚障害者が生まれた時、父親は家族を捨てて逃げ、その後行方が分からないようです。 生活が苦しくなった母親は、子どもたちを親戚に預けて、レバノンへ帰ったのでした。 上2人の兄弟は別の親戚が引き取り、この家族が、マイエットを引き取りました。

 

2012年、大學3年生を終えた私が1年間フィリピンに留学した時、私は彼らと再会しました。アレックス22歳、マイエット19歳です。 「卒業後は?これからどうするの?」 と聞く私に、2人は「大学に行きたいな」と答えていました。

 

でも、私たちみんな分かってるんです、彼らの家庭からは、けっして大学になんて進学できないことを。そしてこの地方では、障害者に就職先など無いことを。

 

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