ジョン万次郎の資料調査・保存プロジェクト終了のご報告
「ジョン万次郎の資料調査・保存プロジェクト|日米交流の原点を後世へ」を応援いただきましてありがとうございます。
皆さまからのご支援と応援メッセージが私たちの支えとなり、プロジェクトの終了を迎えました。振り返りながら、プロジェクトの活動をご報告申し上げます。
<はじめに>
中濱万次郎の誕生200年の節目となる2027年に、私たちは万次郎に関する資料を集めた特別展の実施を検討しています。万次郎から彼の玄孫まで、中濱家の人々が五世代にわたって集めてきた資料の数々は、彼らの著作のなかで、あるいは内外の博物館特別展などで紹介されてきました。ただし資料群の全容は明らかになっているとはいえず、また大切に受け継がれてきたとはいえ、必ずしも長期保存に適した環境下で管理されてきたわけではありません。
そこで私たちは、万次郎五代目子孫である中濱京さんを交えて協議を重ね、資料を安全に管理し、有効に活用するために必要な中濱コレクションのデータベース構築を目指して、500点を超える資料のほとんどを一転ごとに撮影し、名称と固有の番号を付与しながら、文化財保存に適したアーカイバル容器に収納しました。
また、高校生ボランティアの協力を得て、600冊ある書籍の目録も達成することができました。
<クラウドファンディングに挑戦~目標達成>
調査活動や資料の保存に必要な費用を確保するためにもクラウドファンディングに挑戦してこの活動を大きく進めたいとして立ち上がりました。
私たちは資金調達をしたこともないメンバー熊谷・櫻井・茶川・中濱の4人でクラウドファンディングに初めて挑戦しました。
2023年8月7日からREADYFORクラウドファンディングの募集が始まりましたが、同日にREADYFORにて某博物館の大型の募集が始まり、アクセス集中によってサイトにアクセスできない初日を迎えるという洗礼を受けることになりました。
READYFORサイト募集に並行してチラシ配布による募集も行いました。
家族や知人、団体に働きかけたり、様々な店舗にチラシを設置していただいたり、新聞・ラジオで取り上げていただいたりと、右往左往しながらも支援をお願いし、募集期日の間際まで不安でいっぱいでした。皆様には最終日まで応援していただきご心配もおかけいたしましたが、支援総額3,153,000円となり目標300万円を達成することができましたことに感謝申し上げます。
<プロジェクトの活動について>
かつてニューベッドフォード捕鯨博物館で勤務し、20年以上にわたって中濱コレクションと関わりがある櫻井学芸員の監修のもと、資料群の内容と状態のおおまかな把握を目指し、中濱コレクションの資料を一点ずつ確認しました。
資料情報を記録しながら、状態が悪い資料については悪影響を与えている要因を可能な限り取り除き、文化財を安全に長期保存するために開発された封筒や箱などを用いて、サイズ、材質、計上に応じて仕分けながら梱包し保管しました。
経年劣化が特に憂慮されるガラス乾板は、まず現状で保持されている情報を高精細デジタルデータとして獲得するため、非接触型スキャナーを持つ企業に委託してスキャンし、それから専用バインダーに包んだ上でケースに収納しました。
資料整理に際しては、これまで中濱家の人々が大切に保存してきた資料の原形を保存することを原則とし、袋や束のまとまり、梱包、折り畳み状態などにも留意して、処置前の状態を記録するよう努めました。東京大学附属博物館の研究員を現地に招き、資料を確認しながらアドバイスをいただいたり、東京芸術大学に油彩画を持ち込んで、文化財保存学の専門家に科学的調査を実施していただく機会も得ることができました。
500点以上にのぼる資料のほとんどを大まかに整理することはできましたが、例えば内外で発行された新聞切り抜きなどは後回しになっています。それぞれの資料の分析もこれから進めていかなければなりません。
私たちの作業期間中に、米国在住のホイットフィールド船長六代目のスコットさんが、息子のワイアットさんを連れて初めて中濱家を訪問しました。船長と万次郎の数奇な出会い以来、長きにわたって交流してきた両家は、それぞれの家に伝わった資料の調査、管理において協力することでこのたび改めて合意し、今後私たちはそのお手伝いもしていくことになります。特に万次郎が船長に宛てて書いた手紙の一部は状態が悪化しており、優先的に対処していくことを考えています。
中濱家における延べ作業日数は28日間になりました。私たちは、現地作業の有無にかかわらず、この一年間はほぼ週一回のオンライン会議を重ねて、各自でも作業を進めてきました。まだやるべき作業は残っていますが、クラウドファンディングの事業計画にしたがって、本年9月30日にひとまず作業を終えました。
<ご支援の活用について>
ご支援いただきました資金は、調査旅費、調査機材購入費、資料保存のための容器や資材の購入費、調査報告書(小冊子)の作成費、返礼品の調達や送料などに全額充てさせていただきました。中濱コレクションの安全な保管と有効な活用にむけて、皆様からのご支援によって作業は大きく前進しました。重ねて御礼申し上げます。
<ご支援いただいた皆様へのお礼・返礼品について>
ご支援いただいた皆様へのオンライン報告は10月12日を予定しておりますので対象の方にはお知らせいたしました。返礼品は10月下旬に順次発送を予定しております。
ご支援いただいた皆様によって私たちのプロジェクト活動を実施することができましたことお礼申し上げます。
主要な資料群の作業は今回のクラウドファンディング・プロジェクト活動によって終えましたが、次のステップに向けて私たちの準備活動は継続します。
引き続き応援していただけましたら幸いです。
2024年10月7日 万次郎資料調査団