2013年の扇子の使用者は全体の4割で半数を切っていました。そのうち約3割はその年に自分で購入しており、1年間に自分で涼を取るために扇子を買う人は11.6%でした。つまり、毎年日本では1割くらいの人だけしか涼を取るための扇子を買わない、ということになります。

 

それでは引き続き生活者に焦点を当てて、扇子を買う人の購入場所や購入単価などを見ていきましょう。下記は、扇子購入者227名のデータをグラフに表したものです。

 

 

予想通り…かもしれませんが、大変な結果が出てしまいました。

 

1位:100円均一ショップ37%)⇒女性が6割超、平均110円、最大400円

2位:百貨店25%男性が5割超、平均3,289円、最大15,000円

3位:バラエティショップ15%女性が6割弱、平均1,353円、最大3,000円

4位:扇子専門店11%男性が7割強、平均4,843円、最大20,000円

5位:スーパーマーケット7%男女半々、平均1,367円、最大3,000円

 

今や扇子は、100円均一ショップで買うもののようです。

 

100円均一ショップで購入できる海外生産の安価な扇子を受け入れているのは女性で、更にデータを詳しく見ると、主に20~30代の若い層でした。作りが簡単な安価で手軽に手に入る扇子は、恐らく使い捨てられる運命にあります。使い捨てに抵抗感を伴わない商品が大量に供給されている市場環境の中では「扇子は壊れたら買いなおせばよい」と捉える生活者心理が生まれるのは無理のないことで、前回データで見た平均購入本数1.6本には、そんな心理や行動が現れているのかもしれません。

 

いかがでしたでしょうか?2回にわたって調査データの解説をお送りしてきましたが、おそらく多くの方が肌感覚で認識されている、昨今の扇子事情を裏付けるデータとなっていたのではないでしょうか?このような動きが主流となっているのだとすれば、残念ながら国産扇子の需要が益々先細っていくことは避けられないのかもしれません。

 

それでは、何故こんな事態に陥ってしまったのでしょうか?

 

扇子産業に携わる方々のお話では、1990年代以降、扇子産業は安価な扇子を大量に供給するために、海外生産にシフトするようになります。本来、扇子は何百年にもわたって複数の職人達から成る分業体制で継承してきた特殊な技術によって作られてきましたが、そのような技術を用いない簡便な製造方法によって海外工場で大量に生産できるように、当時の扇子産業は中国の工場に生産技術を移転しながら供給体制を作っていったと聞きます。


扇子の生産技術や商品化のノウハウを蓄積した中国の工場は様々なニーズに応えられるようになり、やがて扇子産業以外からの仕事も受注できるようになります。そして、日本国内の各地の100円均一ショップでも安価な扇子が大量に流通し始め、これまでに存在しなかった国内の市場環境が形成されたと言います。

 

こうして市場は飽和し、国内生産の扇子を圧迫することになってしまいました。「海外生産の常態化と生活者の低価格扇子の受容」はこれからも続く、大きな課題と言えるでしょう。

 

数十年前から続く大きな構造の変化の様なものが見えてきたところで、先程の調査データのもう一つの側面に目を向けてみましょう。100円均一ショップで扇子を購入する大きなうねりが見られる中で、百貨店や扇子専門店で高単価の扇子を購入しているのが男性です。しかも詳しく見ると若い男性のようです。これはあくまで推測でしかありませんが、彼らの一部は扇子は身に着ける特別な道具であり、少しでも良いものを持ちたいと考えているのかもしれません。最近の若者は、高価な自動車に興味はなくても、身近な小物にはこだわりをもったり、少し贅沢な気分を味わいたいと考えている可能性もありますね。

 

扇子産業の生活者向け施策としては、手軽に手に入る安価な扇子に流れる女性に対する歯止めの策を検討すると共に、若い男性をしっかりつなぎとめる策を講じていくことが、この大きな動きに抗うための一つの枠組みになるのではないかと思われます。

 

私たちは、グローバリズムの荒波にもまれ、翻弄されている伝統産業にもっと目を向け、もっと知り、何ができるか考えて行動する時期に来ているかもしれません。国産扇子の危機の本質とは?日本の伝統産業の未来とは?まだまだ続きます。

 

(つづく)

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