コロナ禍で家族と会えない終末期医療の現場にテレビ電話面会を

コロナ禍で家族と会えない終末期医療の現場にテレビ電話面会を

支援総額

16,315,000

目標金額 3,000,000円

支援者
1,626人
募集終了日
2020年6月30日

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2020年06月24日 17:48

テレビ電話面会だから繋がった親子

代表の廣橋です。日々、緩和ケア病棟にて面会ができない患者さんとご家族を繋ぐテレビ電話面会を行なっています。今日はそのような患者さんとの関わりの中で、普段の面会では難しかった関わりが、テレビ電話面会だから繋ぐことができた患者さんとの経過をご紹介したいと思います(個人情報保護の観点から、内容の一部は創作・変更されていることをご了解ください)。

 

その患者さん(Fさんと呼びます)は高齢の女性であり、別の病院にて直腸癌に対して手術を行い、その後の再発に対して抗がん剤治療を続けてこられていました。しかし、効果も乏しくなり、また副作用もつらいことから、抗がん剤治療を終了した後のことも視野に、私の勤務する病院の緩和ケア外来に紹介されてきたのです。

 

Fさんが緩和ケア外来をはじめて受診されたとき、彼女はハッキリと抗がん剤治療はつらいから続けたくない。嫌なことはしないで、自分のできるだけ好きなように生きたい、ということをお話になりました。また、家族は誰もおらず、独り身だから、無理な延命などは希望せず、最期までつらくなくお世話してもらえるようなところにいずれ入りたいとおっしゃられていました。

 

それからFさんは定期的に外来通院されながら、必要に応じて痛み止めの治療などを行っていきました。やがて、体力が弱ってきたことから1人で通うことが大変になってきたので、外来通院のかわりに私が訪問診療(往診)を行うことにして、自宅での生活を支援するために訪問の看護師さんやヘルパーさんに来てもらうようにしました。

 

もともと1人で生きて来た人だったので、急にいろいろな人が家にやってくるようになり、最初は戸惑っていたようでしたが、次第に慣れて来て、困ったことはすぐ相談するなど、訪問してくれる人のことを頼りにしていました。

 

それでも弱っていく身体を目の当たりにして、Fさんは「そろそろ施設に入れてもらった方がいいかな」と弱気を吐くようになりました。自宅に訪問してくれる看護師さんやヘルパーさんも懸命に支えてきましたが、ある日のこと腹痛と吐き気が悪化し、救急車で来院されました。検査の結果、病気がだいぶ大きくなり、腸閉塞を起こしていたのです。

 

入院の上で、点滴などを用いた治療を行い、幸いにも症状はだいぶ和らぎました。少量であれば食事も召し上がれるようになりました。しかし、足はだいぶ弱って、自分では一切歩けなくなってしまいました。入院後、身の上話をしている中で、実はかなり前に絶縁している息子がいるというお話を聞きました。連絡を取らなくていいのか聞いたところ、少し迷うように、やっぱり今さら話しても仕方ないからいいわ、とおっしゃられました。

 

その頃、新型コロナウイルスの院内感染が拡大し、FさんのPCR検査は陰性であったため早めに退院するかどうか、これからの過ごし方についてFさんと相談しました。すると、自宅で過ごすのはつらいから、退院せず緩和ケア病棟で療養したいとご希望されました。Fさんは緩和ケア病棟で過ごされる中、痛みや吐き気も落ち着いて穏やかな時間が続きました。

 

その中で、絶縁されている息子さんについての話題が再度あり、本当に連絡しなくて良いのか、病気についてお話しておいた方が良いのではないないかとお話したところ、「先生から連絡してみて、もし息子が話しても良いというなら…」とやはり気になっていたようなお答えをされました。

 

私から息子さんに電話して、お母さんの病状についてお話しました。癌の末期で自宅への退院が難しいこと、残されている時間は短いこと。コロナの感染対策で面会はできないけれど、テレビ電話での面会ならできること。

 

息子さんとはかつて大喧嘩してから絶縁状態であったとのことで、今さら会うことはできないけれど、テレビ電話で少し顔を見るくらいならお願いしますとご希望されました。そのままFさんの病室へ行き、画面越しで数年ぶりの再会を果たしました。

 

お互い、最初は気まずい空気もあり、私が会話をサポートする形で近況報告されました。やがて、顔を見られて良かったこと、元気でやっている様子で安心したことなど、お互いを気遣うような発言がみられるようになりました。Fさんは息子さんに、入院後ほったらかしになっている自宅のことが気になるから見に行って欲しいと依頼され、定期的にテレビ電話での面会を希望されました。

 

あとでFさんは私に「もう死ぬまで息子と関わることはないと覚悟していたけれど、まさかこんなことで話すことになるとは思っていませんでした。息子のことうまく育てられなかったけど、それでも私にとっては大切な息子だから本当によかった。ありがとうございました。」と感謝してくださいました。

 

それから、頻繁ではありませんでしたが、Fさんは息子さんとテレビ電話で面会されました。直接会うことは難しい2人の関係でしたが、テレビ電話という手段が2人をちょうど良い距離感で繋いだのです。

 

その後、だいぶ弱ってこられてきたFさんの様子をみた息子さんは「だいぶ悪くなっているのが分かります。どうか最期まで宜しくお願いします。ずっと診てくださって、そして私と繋いでいただいて感謝しています。亡くなっても迎えには行けないけど、私と同じお墓に入れるようにしたいと思っています」と私にお話されました。

 

さらに眠る時間が増えていったFさん、その様子を息子さんに見てもらうことはありましたが、会話をすることは難しくなりました。会話ができないならと、それ以上の面会は希望されませんでした。そのままFさんは痛みの治療を続けながら、最期まで穏やかに過ごされました。

 

最期まで直接会うことはない親子でしたが、私はテレビ電話面会という手段があったからこそ、切れていた親子関係が絶妙のバランスで繋がった、そんな想いでFさんのことをお見送りさせていただきました。これがベストなケアであったかは分かりません。ですが、このコロナ禍において、少しでもやれることを続ける。そんな毎日を今も過ごしています。

 

引き続きクラウドファンディングへのご支援を、どうぞ宜しくお願いいたします。

リターン

10,000


<リターン不要な方向け>会えないつらさをサポート

<リターン不要な方向け>会えないつらさをサポート

活動内容の報告をメールにて行います

※このコースは、リターン費用がかからない分、いただいたご支援金はサービス手数料を除いたすべてを活動内容に充当させていただきます。
※税制上の優遇対象ではありません。

申込数
445
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2020年8月

3,000


活動内容の報告メール

活動内容の報告メール

活動内容の報告をメールにて行います

申込数
845
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2020年8月

10,000


<リターン不要な方向け>会えないつらさをサポート

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活動内容の報告をメールにて行います

※このコースは、リターン費用がかからない分、いただいたご支援金はサービス手数料を除いたすべてを活動内容に充当させていただきます。
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2020年8月

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活動内容の報告メール

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