僕はお酒が好きです。飲むこと、提供すること、知ること、お酒にまつわること全般が好きです。きかっけは飲食店でアルバイトを始めたことがだったように思います。お酒を提供するからには、ある程度は知識も身につけておかなければならないと考えた僕はちょっとずつ勉強を始めました。また、自分の提供したカクテルなどを飲んだお客さんに「美味しい」と言ってもらえる嬉しさも手伝ってお酒にはまっていきました。

 

なので、僕は大学のゼミ活動における研究テーマも「お酒」が関わるものが自分にとっては価値につながると考えました。専攻はイギリス文化でしたので「イギリス×お酒」で研究テーマを探しました。そこで、見つけたのが「パブリックハウス」でした。


 

「パブリックハウス」=「パブ」の特徴を簡単に説明すると、宿泊施設と飲食施設が一緒になった複合施設のようなものです。例えば、1階部分が居酒屋+共有スペース、2階部分が宿泊施設という構造です。個人的にはゲストハウスに近い施設であると思っています。「パブリックハウス」という言葉自体はイギリスで18世紀頃から使われ始めた言葉です。しかし、この複合施設の元となった施設はそれ以前から存在していました。下記がパブの原型となった施設です。

イン旅人に寝食を提供する施設で、巡礼客をもてなす修道院が原型)
タヴァンレストランのようなもの。ワインや食事を提供していた。寝床がある店もあった)
エールハウス自家製のビールを提供するお店。簡素なものが多かった。)

これら3つの施設は、7世紀から11世紀の間にはすでにイギリスに存在していました。

 

 

 

娯楽の乏しい(現代のようにテレビ、ネットがない)時代には、パブでは劇が開かれ、市(フリーマーケット)が開催され、スポーツや賭け事も行われていました。言うなれば、地域のレクリエーションセンターとしての役割を果たしており、地域の人々や宿泊客(観光客、旅人、巡礼者)が交流して娯楽を共有していました。また、情報が簡単に手に入らない時代には、出版物(新聞や雑誌など)が回し読みされていたり、識字ができない人に内容を伝えたりするなど情報の発信と共有を行える場所でもありました。さらに、パブの機能は多岐に渡っており、人と情報が集まる場所である特性を活かして「職業斡旋所」「選挙の投票所」「裁判所」(巡礼裁判が行われていた時代)としての機能していました。

僕は幾つかの文献などを読むうちに、人と人がお酒を通して交流していたというパブに憧れを抱くようになりました。そして、パブをこの目で見て肌で体感するために、語学留学を兼ねてイギリスへ留学へ行くことにしました。僕が行ったオックスフォードには、「The Eagle and Child」という、英国政府観光庁の「歴史あるパブ」にも選定されている有名なパブがありました。ここは「指輪物語」のJ・R・R・トールキンや「ナルニア国物語」のC・S・ルイスが利用していたとも言われる由緒あるパブです。

 

 

このお店のような昔からの雰囲気を残したパブがあったり、より”バー"に近い雰囲気を持つパブがあったり、形を変えながらも街のあちこちにパブが立ち並んでいました。一般的に現代のパブはよりレストランに近い、飲食のみを提供しているケースが多いように感じましたが、前述したように宿泊機能を兼ね備えているところもありました。そのような場所では、地域の方や観光客が入り交じってお酒を飲む光景がありました。もちろん、一人で飲むのにも居心地はいいのですが、お酒というツールで拙い英語を補い、お客さんと話すという経験は素晴らしいものでした。僕が海外留学でもっとも勉強になったのは、「場」「お酒」「音楽」などもコミュニケーションツールのひとつで、それらを通して交わる体験は言語によるそれよりも感動があるということでした

このような体験から、僕はパブという空間が作り出していることやものに憧れを懐いていくことになりました。

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