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成立

貧困・格差と闘う思想家ヤニス・バルファキスの名作を翻訳出版したい!

白崎一裕(那須里山舎)

白崎一裕(那須里山舎)

貧困・格差と闘う思想家ヤニス・バルファキスの名作を翻訳出版したい!

支援総額

1,706,000

目標金額 1,500,000円

支援者
172人
募集終了日
2021年2月22日
プロジェクトは成立しました!
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2021年02月06日 20:05

『牛魔人』ポール・メイソン序文の一部紹介

ここで、本プロジェクトの『世界牛魔人――グローバルミノタウロス』(早川健治訳)の序文のほんの一部を、ここに公開します(まだ、校正段階ですが)。

この序文を書いているのは、日本でも翻訳のある『ポストキャピタリズムーー資本主義以後の世界』(東洋経済新報社)などの鋭い社会分析で定評のあるイギリスのジャーナリスト兼ブロードキャスターの ポール・メイソンです。

 

以下です。

―――――――――――――――――

 

(前略)

私はバルファキスの仕事をもう何年も追っている。初めて本人に会ったのは二〇一五年一月二五日の選挙日のわずか三日前のことだった。そのときバルファキスは流れるような語り口で自身の展望を私に話してくれた。ギリシアは事実上財政破綻しているが、その現実から欧州北部の諸銀行を護るために欧州は三二〇〇億ユーロという救済金を投じた。財政黒字や財政赤字を効果的に再循環させるための装置―死蔵貯蓄を(特に資金を必要としている分野への)生産的投資に変換するための装置―をユーロ圏に設立しない限り、「制度は二年以内に破綻する」。

 

「善きユーロ」は達成可能であると、バルファキスは急進左派連合の経済学者たちと共に信じてもいた。吉兆もあった。マリオ・ドラギは量的緩和策(一兆六〇〇〇億ドルの刺激策)を発表し、緊縮策の緩和も呼びかけていた。ジャン=クロード・ユンケルも苦しむユーロ圏に三〇〇〇億ユーロの投資を呼び込む目的で基金を立ち上げた。ギリシアには政治の追い風が吹いていた。当選日から二月二〇日までの間で、バルファキスは欧州左派を代表してある教訓を学んだ。欧州を統べているのは政治家ではなく牛魔人である、と。

 

改訂版が印刷される頃には、バルファキスが二月二〇日に勝ち取った「執行猶予」はどうなるのだろうか。常態化や継続がされるのか、はたまた中止となるのか。誰にもそれはわからないが、一つだけ確かなことがある。新鮮なアイデアがもたらす活力である。バルファキスの単刀直入な言動は、欧州統率部の機能の仕方(モードゥス・オペランディ)を(おそらく永久に)変えてしまった。統率部の強硬政治や圧力のかけ方のイロハを暴露せんと奮起するバルファキスは、まさにこうした体制の擁護から利益を傍受してきた記者団にとって脅威の存在だった。ギリシア国民、ギリシアの債務者たち、そして欧州の労働者や若者たち―すべてがこの三者に向けて発せられた。

 

債務者たちの頭を特に悩ませたのは、バルファキスが債務者の一人としての所作・言動の作法を体現していたという事実である。欧州西部の伝統に根ざす本流の経済学者として、バルファキスは同世代の学者たちが右傾化する中あくまで左派思想を追究した。新自由主義世界の仕組みを熟知していたがために、その世界との衝突の一幕一幕が痛切に感じられた。ほとんどの場合、政治家は理論家にはなれない。そもそも思想ができないことが多く、政治家の過酷な日常には大きな理念に費やせるような時間的余裕もない。何よりも、理論家には間違いを認める態度が必要とされる。「知識の暫定性」である。理論上の難題は巧みな弁舌では解決されない。

 

本書でバルファキスは世界経済の問題の本質を浮き彫りにした。新たな枠組み、新たなパラダイム、そして民衆の合意形成の新たな舞台を打ち立てる主体の不在という問題である。中国が準備不足であり、欧州中心地が民衆の支持を得られておらず、米国も荒廃しきっているのだとすると、一体誰がこの主体の役割を担えばよいのだろうか―バルファキスはこう問いかける。ギリシアの政治の中心地が無能と拝金に侵蝕され、ギリシアの人々が憤激する現状で出た答えは「急進左派」である。

 

欧州諸機関との戦いでの勝敗を超えて、急進左派連合は「理論の力」を見事に証明してみせた。バルファキスはギリシアの宴を待ち受ける破滅的な終焉、借入投機(レジ)型金融の持続不可能性、そしてユーロ圏の分裂を予言した。『ウォール・ストリート・ジャーナル』や『フィナンシャル・タイムズ』に受け入れられるような理論の逆を行ったのだ。当初からバルファキスは「最後の一瞬まで」欧州との合意は結ばれないだろうと身辺の顧問に言い聞かせていた。つまり、危機から偶然派生しうる事態までをも理論的に把握していたのだ。

 

本書の力と趣の源泉はここにある。急進左派連合とユーロ圏の戦いのゆくえは誰にもわからないが、終結には何らかの妥協が伴うだろう。政治家は妥協の世界に生きている。理論家はそうではない。終局を迎える頃には、急進左派は旧式資本主義からの抵抗勢力を正面から迎え撃ちつつ、より公正な新型資本主義のために戦う術を体得することになるだろう。

 

二〇一五年三月二八日  ポール・メイソン

訳者より、感謝の気持ちを込めて 早川健治(翻訳家)作家ブレイディみかこさん、バルファキスさん著書書評
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リターン

3,000

純粋応援コース

純粋応援コース

那須里山舎と『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』翻訳出版プロジェクトを応援してくださる方に、㈱那須里山舎より心を込めて感謝のお手紙をお送りいたします。

支援者
21人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2021年6月

5,000

完成書籍先取りコース

完成書籍先取りコース

出版プロジェクトを応援しつつ『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』を本棚に置きたいという方へ。那須里山舎から本書を一冊、発売日前にお送りします。あわせて、感謝のお手紙も同封いたします。

支援者
107人
在庫数
189
発送完了予定月
2021年6月

10,000

先行出版記念イベントコース

先行出版記念イベントコース

がっつりと応援しつつ制作チームと共に出版を祝いたいという方へ。那須里山舎より以下の三点セットをお送りいたします。
1、ご賛同者様限定先行出版記念イベントの招待状(オンライン開催を予定しておりますが、開催日程については調整中です)
2、『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』翻訳本一冊(発売日前)
3、那須里山舎より感謝のお手紙

支援者
23人
在庫数
22
発送完了予定月
2021年6月

30,000

マックス応援コース

マックス応援コース

最大限の応援をしていただける方に、すべてのリターンに加えて、翻訳本の巻末にお名前を掲載させていただきます。以下のセットとなります。
1、ご賛同者様のお名前を翻訳書巻末に掲載
2、ご賛同者様限定先行出版記念イベントへの招待状
3、『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』完成本一冊(発売日前)
4、那須里山舎より感謝のお手紙
 <*注意事項:このリターンに関する条件の詳細については、リンク先
(https://readyfor.jp/terms_of_service#appendix)の「リターンに関するご留意事項」をご確認ください。>

支援者
24人
在庫数
25
発送完了予定月
2021年6月
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