今回は、弓神楽から少し話が逸れますが、それは本質的な部分で密接に関係していることでもあります。

 私は元来、戦争の現場に入っていき、そこで撮影する写真家です。そして、そういった現場で見てきたことで、心を痛めたこと、ことの重大さに心臓が止まるほどの衝撃を受けたのは、多くの人の命が失われているということと、その地域の歴史や文化が失われていることです。

 現在、イラクやシリアでの戦争は、長い間続き、この先もいつ終わるのか展望が見えないほどです。両国では、数十万人とも言われる人々が亡くなり、さらに数百万の人々が故郷を追われています。そして、無数の文化遺産が破壊され、幾多の伝統文化が喪失しています。

 人が失われ、文化が失われてしまうと、もうその共同体の再生は極めて難しいことになり、かつてのような繁栄は望むべくもありません。

 何故こんな事を書いているかといいますと、戦争による喪失とは少し違うかもしれませんが、今日本が置かれている状況も、戦争に匹敵する危機にあると思うからです。

 日本各地で、人口の減少や、とくに若年層の減少などにより、伝統文化が失われつつあります。数百年、場合によっては千年の昔から続いてきた歴史や伝統が失われるということは、国や民族、あるいは地域共同体にとっては大きな損失です。そして、伝統や文化が喪失してしまえば、その地域は再生しません。つまり、町や村が再生し、活性化する、あるいは人々が移住してきて、町がにぎわいを取り戻す。それらには、伝統文化の存在が欠かせません。経済面にばかり目が行きがちですが、そもそも伝統文化が維持されているということは、人間が生きていく上で一番大事なこと。地域の人々の繋がりや信頼関係などが維持されているということであり、そういうところがこれからの日本では長く新しい歴史を紡いでいくところだと思うのです。

 そういう地域の中のひとつに、私が今回取りあげた広島県の小さな町、上下町もありますし、そこで残されている「弓神楽」は、伝統文化である以上に、人間の生きていくうえで大切なこと、家族の繋がりや地域の繋がり、繁栄、そして誰もが幸せに生きていくことを願う心。そういったことが内包されています。だからこそ、私はこの希有な伝統文化を残したいし、そのために少しでも貢献したいのです。

 そのために、ぜひとも皆さんの支援をお願いしたいと思います。

あらためて、宜しくお願いします。

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