プロジェクト概要

緒方洪庵が、大阪に開いた適塾。そこには、多くの門下生が集い、日本の近代化を支える人々が巣立っていきました。開塾180年を迎えるにあたり、洪庵や門下生の事績や人柄、そして適塾の歴史的価値を、後世に伝えていくために。最新の研究成果を盛り込み、幕末~明治という時代の転換点を生きた洪庵や門下生たちから学びとる、そんな図録を作成します。

 

 

適塾開塾、180年。

その歴史的役割を、今改めて伝えたい。

 

ページをご覧いただき、ありがとうございます。大阪大学 適塾記念センターの松永和浩と申します。

 

適塾(適々斎塾、適々塾)は、幕末の蘭学者・緒方洪庵(1810-63)が、今からちょうど180年前の天保9年(1838)に大阪に開いた蘭学塾です。

 

蘭医学研究の第一人者であり、教育者としても優れていた洪庵のもとには、西洋の学問・知識を学ぼうとする若者たちが、全国各地から集まりました。年齢や身分に関わりない自由闊達な雰囲気のなかで、塾生たちは学問に没頭しました。

 

そこから、福沢諭吉・大村益次郎・橋本左内・大鳥圭介・長与専斎・佐野常民・高松凌雲といった、日本の近代化を牽引する人々が巣立っていきました。

 

彼らが学んだ適塾の建物は、昭和17年(1942)に大阪帝国大学(現・大阪大学)に寄贈され、昭和39年(1964)には、現存唯一の蘭学塾遺構として国の重要文化財に指定されています。

 

大阪大学は現在まで、この貴重な建物の維持・管理に努めてきました。さらには適塾および適塾関係者に関する調査・研究を行い、その成果を社会に発信し続けています。この活動は、市民共通の貴重な歴史的遺産としての適塾を預かる大阪大学の社会的責務と自任しております。
 

A17c9aaa61e80a1bf71d0d850af4e5baa9800bbd
蘭学者/医者 緒方洪庵。適塾という名は、適々斎という洪庵の号から取られています。

近代医学の祖 緒方洪庵

 

洪庵が、医師としての倫理観を示した「扶氏医戒之略」(1857年)には、「医の世に生活するは人の為なり」「名利を顧みず、ただ己を捨てて人を救わんことを希うべし」「貴賤貧富を顧みることなかれ」とあり、富や名声のためではなく人を救うことを医者の本分とし、それを実践したことが記録として残されています。

 

また、嘉永2年(1849)に除痘館を開き、天然痘の予防法である種痘(ワクチン治療の原点)の普及と痘苗(ワクチン)の維持、医者の養成、を目的として利益を度外視して勤めました。1858年にコレラが大流行した際には、複数の蘭書を参照して治療法をまとめた『虎狼痢治準』をわずか5、6日で書き上げ、周辺の医者に無償で提供しました。

 

手紙にもしばしば「道のため」「人のため」と書き記し、「道(医業)」の発展に尽くして「人(社会)」に貢献することを自身の責務と常々考えていたようです。

 

A17c9aaa61e80a1bf71d0d850af4e5baa9800bbd
現代にも通用する、医師としての倫理観を示した緒方洪庵自筆の「扶氏医戒之略」(1857年)。朱書きや行間の文字は洪庵の推敲のあと。緒方家に伝来したものだが、2015年に大阪大学適塾記念センターに寄贈された。

 

A17c9aaa61e80a1bf71d0d850af4e5baa9800bbd
佐野常民、橋本左内、福沢諭吉
長与専斎、大村益次郎、大鳥圭介
(国立国会図書館「近代日本人の肖像」より)

文化財としても貴重な適塾

 

適塾が所在する淀屋橋・北浜は、現在はオフィス街になっており、ビルに囲まれる中、江戸時代の建物がひっそりと佇んでいるという光景が広がっています。

 

大塩の乱や大阪大空襲のため、かつての大坂市中には江戸時代の町屋建築(町人の店舗兼住宅)は、適塾を除きほとんど残っていません。そうした点で、適塾は貴重な文化財であり、歴史的役割を考えても大阪が誇るものの一つとなっています。適塾は、昭和55年(1980)解体修復工事(昭和の大改修)後、一般公開されています。

 

大阪でも意外に知らない人は多く、存在は知っていても中に入ったことはないという人も多いようですが、年間約2万人の方に参観にお越しいただいており、医学・医療関係者の方々をはじめとして、適塾生の子孫や、適塾の門下生に興味を持ち、そこから適塾に行き着いた歴史好きな方々、テレビドラマ等で幕末に興味を持った方など、歴史に関心のある方に関心を寄せていただいています。

 

また、大阪大学や慶應大学の関係者や出身者、大阪に長く暮らす方々も、大阪の文化に大きな影響を与えた地域の誇りとして、訪れていただいています。 

 

淀屋橋・北浜のオフィス街に佇む歴史的建造物の適塾

 

適塾内部の様子

地道な調査研究の成果を、社会に還元する

 

大阪大学適塾記念センターは、大学創立80周年を迎えた2011年に設立されました。適塾記念センターでは、これまで大阪大学および適塾記念会が担ってきた、

 

①現存唯一の蘭学塾遺構として、国史跡・重要文化財に指定されている適塾建物の維持管理

②適塾・緒方洪庵・門下生の調査研究・顕彰事業を発展的に継承

③適塾に縁の深い大阪とオランダに関する学術研究

 

を行っています。

 

A17c9aaa61e80a1bf71d0d850af4e5baa9800bbd
大阪大学適塾記念センターが所蔵・管理する緒方洪庵や門下生による著作物

 

設立以来進めてきた、適塾関係資料の本格的な調査・研究の成果は『大阪大学適塾記念センター所蔵 適塾関係資料目録』(2015年)、「大阪大学適塾記念センター所蔵 適塾関係資料画像データベース」(2018年)として公表しました。


これまでの成果は基礎的で、どちらかというと専門家向けの内容でしたが、開塾180年を迎えるにあたり、今年度は一般向けに研究成果を還元することとしました。

 

一般向けの刊行物としては、1980年に図録『緒方洪庵と適塾』(適塾記念会編集・発行)が刊行されています。しかし、刊行から間もなく40年、改訂からも25年が経過し、研究水準やモノクロの体裁などが時代に合わなくなってきています。

 

図録『緒方洪庵と適塾』(左1980年版・右1993年改訂版)

適塾・緒方洪庵を網羅できる1冊を

 

本プロジェクトで刊行を計画している図録『新版 緒方洪庵と適塾』を読めば、適塾・緒方洪庵に関する基本的なことは、おおよそ把握できるようにしたいと考えています。また、最新の研究成果を豊富なビジュアルとともに盛り込むことで、一定の研究水準と親しみやすさの双方を追求します。


最新の研究成果・情報として、例えば次が挙げられます。

 

■2015年に洪庵嫡系の緒方家から寄贈された史料(「扶氏医戒之略」「除痘館記録」)
■緒方洪庵が使用した現存する薬箱の分析から判明した、洪庵の治療法の特質
■新たに発見された洪庵夫人・八重の自筆書状の読解から見出された、「良妻賢母」で語られてきた八重の新たな側面
■2013-14年に施工された耐震改修工事の概要と、2018年6月の大阪府北部地震の被災状況

 

これまで薬箱の内容物に関する本格的な分析はなかったのですが、適塾記念センター兼任教員の髙橋京子ゼミが詳細な調査を行いました。その結果、57種の生薬のうち、30種(52.6%)が蘭方由来であり、洪庵は蘭方・漢方薬併用の治療を実践していたことが示唆されました。これは漢方から西洋医学への過渡的状況を示しています[高橋ほか2013]。

 

緒方洪庵の像(頭部は玄孫のCTスキャンデータから復元されました)

 

また、「緒方洪庵和歌短冊貼交屏風(二曲一隻)」の下張り文書として、100点を超す、夫人・八重の自筆書状が、2014-16年の調査・整理によって発見されました。そのうち、上野で見た新しい商売を、大阪でやれば儲かると娘夫婦に勧めたり、借金問題を抱えた息子を激しく罵倒する書状がありました。これらによって八重の人物像に、人間味が加えられ、身近に感じられるようになりました。

 

緒方八重 肖像画

 

さらに、耐震改修工事では、国宝・重要文化財では初採用となった複合鋼板耐震壁を土壁に埋め込みました。最大震度6弱を記録した大阪府北部地震では、灯籠の転倒や土壁の剥離などの被害が出たましたが、建物の躯体そのものには影響がなかったとみられ、耐震改修工事の効果が発揮されたと考えられます。

 

適塾内の様子

【目次】(予定)
第1部 緒方洪庵の生涯
洪庵の生い立ちと学問形成/洪庵、適塾を開く/洪庵の学問/医師としての洪庵/洪庵の薬箱/洪庵の種痘事業/洪庵のコレラ対策/文化人としての洪庵/洪庵の家族/晩年の洪庵―幕府奥医師・西洋医学所頭取として―
第2部 適塾と塾生たち
適塾における教育/塾生たちの生活/洪庵と塾生たち/各界で活躍した元塾生たち
第3部 その後の適塾と文化財としての適塾
明治維新期大阪の医学行政/その後の適塾/適塾の史跡指定と大阪大学への移管/文化財としての適塾とその保存

 

【規格】

B5判・80頁 1500部

 

【執筆者】
木下 タロウ(大阪大学 寄附研究部門 教授)

島田 昌一(大阪大学大学院 医学系研究科 教授)

髙浦 佳代子(大阪大学 総合学術博物館 特任助教)

髙橋 京子(大阪大学 共創機構社学共創本部 准教授)

橋本 孝成(大阪大学 適塾記念センター 招へい研究員)

廣川 和花(専修大学 文学部 准教授)

松永 和浩(大阪大学 共創機構社学共創本部 准教授)

村田 路人(大阪大学大学院 文学研究科 教授)

 

市民共有の財産を守るために

 

大阪大学 共創機構社学共創本部では、これまでの「社学連携」活動からさらに一歩進めて、社会と共に創造していく「社学共創」に取り組んでいきたいと考えております。

 

社学共創本部を構成する適塾記念センターでは、適塾関連グッズの開発を、市民と共に行うことを計画していて、今回の図録刊行は、適塾記念センターにおける「社学共創」活動の第1弾に位置づけています。このように、市民共有の歴史文化遺産としての適塾を、社会とともに保存し、活用していきたいと思います。

 

適塾開塾180年という節目に、こうした取り組みを開始しようと考えましたが、刊行にかかる資金獲得が難しいのが現状です。

 

国立大学の予算(運営費交付金)は小泉改革以来、減少の一途をたどっています。大阪大学では、法人化された平成16年(2004)度には、約529億円あった運営費交付金が、平成28年(2016)度には約441億円と、約93億円が削減され、外部資金の獲得が、大学運営を左右する状況に至っています。大阪大学としては、精神的源流と位置づけ、市民共有の財産であり社会における認知度も高い適塾を皮切りに、市民の方々に寄附という形でこの取り組みに参画いただければと思います。

 

皆さまから頂いた寄附金は、『新版 緒方洪庵と適塾』の編集・出版にかかる費用として使わせていただきます。

 

緒方洪庵の書斎の様子

適塾に学び、現代に活かす

 

『新版 緒方洪庵と適塾』によって、改めて多くの方々に、適塾と緒方洪庵のことを知ってもらう機会が増えることを期待しております。

 

すでに適塾のことをよく知っている方には、最新の研究成果を含めてさらに知識を深めていただき、あまり知らない方にはこの1冊で基礎的かつ最新の知見を網羅していただくことができます。

 

『新版 緒方洪庵と適塾』を通じて、適塾および適塾関係者の歴史的役割、貴重な歴史的建造物である適塾建物を、次世代に継承する大阪大学適塾記念センターの活動の裾野が広がっていくことを願っています。

 

また幕末・維新期という時代の転換点にあって、洪庵が「世のため」「人のため」に行ってきた医療/社会事業/研究・執筆活動、福沢諭吉の啓蒙活動やジャーナリズム、高松凌雲・佐野常民の赤十字精神の実践、長与専斎の医療制度や衛生行政の整備などから、私たち現代人は多くのことを学ぶことができるはずです。

 

本書を入り口にして、彼らの業績をさらに深く知ることもできます。様々な困難が押し寄せる現代社会だからこそ、何らかのヒントを得られる一書となると信じております。

 

どうぞ、皆さまからのご寄附・応援をよろしくお願いいたします。

 

緒方洪庵 肖像画

 

特定寄附金による税制優遇について

 

大阪大学へのご寄附については、税制上の優遇措置が受けられます。

 

- 個人の皆様-

■所得税の軽減

大阪大学への寄附金は、所得税法上の寄附金控除の対象となる特定寄附金(所得税法第78条第2項第2号)として 財務大臣から指定されています。具体的には、寄附金の額(当該年分の総所得金額等の40%を限度とする。)から2,000円を除いた額を所得から控除することができます。

 

■住民税の軽減

大阪大学への寄附金を個人住民税の控除対象としている都道府県・市区町村にお住まいの皆様は寄附金税額控除の適用を受けることができます。具体的には、寄附金の額(当該年分の総所得金額等の30%を限度とする。)から2,000円を除いた額に4%(都道府県民税)・6%(市区町村民税)を乗じた額が、翌年の個人住民税額から控除されます。

 

大阪大学への寄附金は、例えば以下の都道府県・市区町村の個人住民税控除対象となっております。

 

・都道府県:大阪府

・市区町村:大阪市・吹田市・豊中市・茨木市・箕面市

 

【具体例】

大阪市・吹田市・豊中市・茨木市・箕面市にお住まいの方は、寄附金の額(当該年分の総所得金額等の30%を限度とする。)から2,000円を除いた額に10%(都道府県民税4%・市区町村民税6%)を乗じた額が、翌年の個人住民税から控除されます。

 

大阪府(個人住民税控除対象外の市町村)にお住まいの方は、寄附金の額(当該年分の総所得金額等の30%を限度とする。)から2,000円を除いた額に4%(都道府県民税)を乗じた額が、翌年の個人住民税から控除されます。

 

- 法人様-

大阪大学への寄附金は、法人税法上の指定寄附金(法人税法第37条第3項第2号)として財務大臣から指定されています。

具体的には、寄附金の全額を、一般の寄附金の損金算入限度額と別枠で、損金算入することができます。

 

団体/グループでのご寄附について

 

複数名様からのご寄附を一括して、団体/グループとしてご寄附いただく場合、目標額達成時にお送りいたしますギフト内容(感謝状・寄附受領書含む)は、ご寄附いただきました個人ごとに発送をさせていただくことが可能です。


例:10名の団体で、5,000円×10名=50,000円を一括してご寄附いただく場合
Readyforサイト上では、

アカウント名:〜〜会
と団体名にてご登録いただき、寄附時に入力が必要なご連絡先は、代表者さまのものをご入力ください。目標額達成後、大阪大学担当者よりご登録いただいた連絡先へご連絡差し上げます。個人ごとのギフト発送をご希望の場合、代表者さま以外の方々の個人情報リストをお送りいただきましたら、対応させていただきます。


※寄附時、ギフトは複数口の選択が可能です。上記例の場合、5,000円ギフト×10口、にてご寄附いただけます。個人ごとのギフト発送をご希望の場合、大学事務局側での確認作業の関係上、複数口でのご寄附を選択いただきますようお願いいたします。

 

 


最新の新着情報

このプロジェクトに寄附する
(※ログインが必要です)